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HEATでは魚釣りを末永く楽しむために、また、魚釣りの社会的地位をより盤石にするため、「釣りのルールとマナー」に関して、日ごろから協力してくれているライターさんに向けてアンケートを実施。その結果と貴重な意見をまとめ、今後の釣り人への指針となるようお伝えしていこうという当企画。
今回は番外編ということで、当企画の執筆に当たってきたスタッフF自身が経験、遭遇した出来事を列記し赤裸々にお伝えすることにしよう。釣りのマナー、安全対策について改めて考えていただきたい。
無造作に並べた竿を踏まれ、折られて学んだこと
小学生のころだ。地元の小さな防波堤に父と釣りに行ったとき、狭い防波堤の上に無造作に並べた竿を通行人に踏まれ、折られたことがある。

無造作に竿を置いていたほうが悪い?
まず竿を踏んだ人が「あなたが、こんなところに竿を置いていたのが悪い」という信じられない第一声。それに父は「確かに竿を放置していたのは私の責任だが、それでもまず謝罪はあるべきだ」と冷静に返した。
その人も我に返ったのだろう。初めて謝罪の言葉を口にし、父も改めて「竿を放置して私も悪かった」と反省の意を表して手打ちとなったのを覚えている。
おらくその人は釣り人ではなく、たまたま散歩で通りかかっただけなので、防波堤に並べられた釣り竿に対する注意が足りなかったものと思われる。
人に迷惑をかけていないか?
釣り人の最低限のマナー
実際に混雑する防波堤や釣り公園内を移動する際、無造作に並べられた釣り竿や仕掛、荷物などを邪魔に感じることも多い。十分気を付けて歩いたつもりでも、誤って足で踏んだり引っ掛けたりしてしまうこともあるだろう。そんなときはまず謝罪するのが人として当然であり、最低限のマナーだ。
しかし、ここで自分の荷物の置き方や釣り竿の並べ方にも問題がなかったか考え直してみるべきだ。「荷物を必要以上に店開きしていないか?」「並べた釣り竿で通路をふさいでいないか?」「ハリの付いた仕掛を放置していないか?」など、釣り人としてのマナーも必要だ。
緊急事態に備え、いつでも撤収できるように
釣り場での荷物の整理整頓は「安全」「自分の命を守る」という点からも大切だ。子どものころ、こんなこともあった。
とある沖堤に渡船利用で釣りをしていた日、予定の回収時間がまだ先なのに急遽撤収となった。

緊急回収は荷物が片付いた人から始まった
荷物が少なかったわれわれは、ワケが分からないまま急いで渡船に乗り込めたが、大変混雑してたため一度に船に乗り込める人数は限られ、当然釣具の片付けに手間どった人たちは最初の船には乗り遅れた。
そこで船長は港には帰らず、沖堤内側で安全な至近距離の護岸に一旦、われわれを下ろし再び沖堤へ。何度かのピストン輸送で全員が沖堤を離れたころ、みるみる波がその防波堤を越えだし命拾いした経験がある。
荷物の整理整頓が生死を分けることもある!
幸いこの日、死人やケガ人は出なかったが、荷物を流された人はいたかもしれない。思い出せば恐ろしい体験だったが、ここで学んだことがその後、磯釣りを始めた自分の行動規範になっている。
不測の事態に備え、いつでも撤収できるよう荷物は必要以上に店開きしないこと。最悪の場合は荷物を捨てる覚悟が必要だが、許せる範囲で大切な釣具を失わないためにも、釣り場での荷物の整理整頓を心がけてほしい。もちろん、もっとも大切なのは命であることを肝に銘じて……。

危うく事故……渡船の乗降時の苦い思い出
ある年の年末、近隣のとある磯にヒラマサ釣りに出掛けた。年明けの離島遠征を控えていたので、新調したスパイクシューズ(磯靴)は遠征先の宿に送り込んでおり、この日は使い古しでスパイクがかなりすり減った磯靴を着用したのが間違いだった。
一歩も進めない……海藻べったりの岩肌
渡船が磯に到着し大きな荷物を抱え磯に降り立ったまではよかったが、斜めの岩肌には海苔がべっとり生え、その場からどうしても一歩踏み出せない。すり減ったスパイクではまったく役に立たず、渡船の舳先(へさき)のすぐ前で立往生してしまったのだ。渡船客も多くとくに人気の磯だったので、私の後ろでは何人もの釣り人が「早く上がってくれ!」とイライラしているのが伝わってくる。
後ろには釣り人の列もできているので引き返すわけにもいかず、「どうしたものか?」と悩んだあげく、すぐ横の潮間帯にフジツボやカラス貝が付着したゾーンを見つけた。そこで「やばいかも?」と思いながらも、「ここならすり減ったスパイクでも滑らないだろう?」と荷物を抱えたまま横移動。これで何とか磯へ上陸できたのだが、このときの「焦燥感」はいまも鮮明に覚えている。
スパイクシューズだけでなくライフジャケットなどの安全装備は、ある程度の期間使ったら性能を確認し、早め早めの買い替えが大切だと実感した体験だった。

岩のくぼみにブーツがはさまり身動き取れず……
これはまた別の磯での体験談。この磯は先ほど書いた磯とは違い、渡船から降り立つ足場はフラット。しかし意外な“落とし穴”があった…。
暗くてよく見えなかったせいもあるのだが、下った場所に岩のくぼみがあり水たまりができていて、そこにスパイクブーツの片足がすっぽりはまり込んでしまったのだ。
抜け出そうとしてもまったく脚は動かず、渡船のホースヘッドが迫って来る。「これはヤバい!」と感じて、とっさにとった行動が、ブーツを脱ぎ捨てて退避することだった。ためらっていたら渡船と磯に足(脚)を挟まれて骨折していたかもしれない。
おかげで足はびしょびしょになったが、大ケガをするより何100倍、いや何1000倍もいい。かつて、実際に渡船に足を挟まれて骨折した同僚をしっていただけに、マジでヒヤッとした体験だった。

夜討ち朝駆け!睡魔!そして落水!
これも若いころの話だ。おそらく20歳代後半だったと思う…。
夜討ち朝駆けで南紀の磯でグレ釣りを堪能。お昼過ぎまで釣ってから国道を2時間ほど北上し、紀北の小磯でメバルねらいの夜釣り。前夜から一睡もしておらず限界だったのだろう。見下ろした海面に漂う電気ウキを見つめていた次の瞬間、その海面が自分の頭上に広がったのだ。
実感したライフジャケットの必要性
そう、突然の睡魔に襲われ意識を失い、磯の上から滑り落ちて落水。ライフジャケットを付けていたので、すぐに浮上でき同僚が差し出したメバル竿につかまり、ヘッドライトで照らされた海面をゆっくり泳いだのち、なだらかな磯の裏側で上陸することができた。幸い身体にケガはなく事なきを得たが、季節は12月、ひじょうに寒かった。濡れた衣服を脱ぎ、素肌の上に雨具を着こんで迎えの渡船を待ったことを覚えている。

決して無理をせず節度ある行動を!
この事例では落ちたところが切り立った磯で、水深があったので助かった。もし岩肌の途中に大岩が出っ張っていたり、落下地点が岩だったり、海面であってもひじょうに浅い場所だったら……と考えると運がよかったとしか言いようがない。もし骨折、さらに頭を強打していたら……と想像すると恐ろしい。

本当に運がよかった……というより、睡眠不足、悪天候時の強行など、無理な釣行を控えるのが釣り人としての節度ある最低限のルールでありマナーだと、改めて思うところだ…(猛省)。