春夏秋冬!釣果アップの勘所 No.11 岸壁クロダイゲーム”ガンクロ”のツボ教えます!
「落下物なら消しゴムでも食ってしまう!」という話

「釣果アップの勘所」第11回のテーマは数年前に大阪湾岸の沖堤などでブームになった岸壁クロダイゲーム、略して「ガンクロ」について。古くから盛んな日中にチヌをねらう「落とし込み釣り」のエサとタックルをルアーフィッシングに置き換えたもので、エサを準備する手間もなくシーバスタックルなどを流用できることからルアーファンの間で話題になた。今回はそんな「ガンクロ」の基本と意外な”ルアー”について解説しよう。

エサを壁際に落とし込む
ヘチ釣りから発展して…

関西に限った話をすると、その昔、大阪湾など関西の防波堤でチヌは夜に釣るものだと相場は決まっていた。警戒心が強いチヌなので日中にエサを食わせるのが難しかったからだ。

しかし、東京湾や伊勢湾などではヘチ釣り、ボタ釣りと呼ばれ日中に「クロダイ」を釣るスタイルが確立されていた。それが関西に伝わったのが40年ほど前で、「落とし込み釣り」という名前で一般的になったのだ。

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大阪湾岸の波止で日中にチヌをねらう落とし込み釣りがメジャーになったのは40年ほど前

なぜ「落とし込み釣り」だと、それまで夜間しか釣れないとされたチヌが釣れるようなったのかというと、それは防波堤際などで上層から落下してくるもの(貝やカニなど)に異常に反応するチヌの習性を利用したものだったからだ。

防波堤や岸壁際にはイガイやフジツボなど貝類が付着し、その隙間にはカニや虫類がいて、チヌはこれらが何かの拍子に落下するタイミングをねらって捕食する。壁に付着した貝類をガリガリかじることがあるのだが、そのときにも、いろいろな生物が飛び出し落下する。とにかくチヌは壁面の落下物に目がないのである。

エサの確保が面倒な落とし込み釣りから
手間がないルアーフィッシングへ

ということで理にかなった日中の落とし込み釣りは一気に人気上昇、条件次第ですさまじい釣果が出たが、問題はエサの確保にあった。
大阪湾での落とし込み釣り黎明期、そのエサの主流はエサ店で購入するクモガニだったが、徐々に岩ガニ、イガイ、フジツボ、ヘラヘラとバラエティーに富むようになる。

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岸壁に付着したイガイは落とし込みチヌの定番エサ
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密集したイガイの間から採取できるヘラヘラという軟体動物もチヌの大好物

同時にエサは現場もしくは前もって自分で調達するスタイルも多くなった。しかし専用の道具も必要だし実に面倒な作業なのである。

そこで登場したのが落とし込み釣りのエサを擬似餌に置き換えたルアーフィッシング。それが「ガンクロ」なのである。

フジツボそっくり!? 白い消しゴム
リアクションバイト誘発

壁面を落下するエサを食うチヌのバイトスタイルは、ほぼリアクションバイトといっていいだろう。とにかくチヌは落ちてくるものを一旦口にし「これは食えないな」と感じたら吐き出せばよいのだ。これを利用しない手はない。まったくのルアーフィッシングだ。

そこである人は考えた。「とにかく壁際で目立つものをハリにセットすればいい!」ということで使い出したのが白いプラスチック消しゴム。これを角切りにしジグヘッドのフックに刺すだけ。とくに白っぽいフジツボをチヌが好んで食べる時期に威力がある。

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落とし込みで使用される白いフジツボ。消しゴムとそっくり!?

その後、チニングという名前で一般的になったチヌのルアーゲーム用のカニなどを模したソフトルアーも使われるようになり、これらにはフレーバーも配合されているものが多く、「ガンクロ」は、より確実な釣りになったといえるだろう。

投入点から少し離れた潮上に立ち
リグの沈下に合わせゆっくり前進

ちなみにオススメタックルはソリッドティップのシーバスロッドで長さは9ftぐらい(足場の高さに合わせるのが基本。あまり短いものはティップと海面までの間でラインが風の影響を受けやすく釣りにくい)がいいだろう。リールはスピニングでもベイトでもかまわない。

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ガンクロはシーバスタックルを流用。長めでティップがソリッドならいうことなし

ラインはPE0.8~1.5号。あまり細いものは浮力がなくリグが速く落ちてしまうのでよくない。リーダーはフロロ8lbを1.5ヒロ。フックはチヌバリで軸には潮の速さに合わせガン玉B~3Bを打つ。同等のジグヘッドでもよい。エサをセットしたリグがゆっくり落ちるぐらい……と表現するのは難しいが、エサの落とし込みの人がいれば、その釣りを観察し参考にしてほしい。

大切なのは、このリグを打つのは壁面ギリギリということ。30cmも離れると極端にアタリが出なくなるので注意。立ち位置はリグ投入点より少し離した潮上。ポイントの真上に立つとチヌに警戒されてしまう。というのもアタリが出るのはほとんどリーダー分までの浅ダナのことが多いからだ。

リグを打ち込んだら沈下速度に合わせ自分も前進。これを繰り返し防波堤上をランガンするのが「ガンクロ」の基本スタイルだ。

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護岸や防波堤の潮上から潮下に向かって歩きながら壁面ギリギリにリグを落とす(写真の神戸第7防波堤は現在上陸できません)

アタリはラインの走りや、その動きで取る。すっとラインが走ったり、リグの沈下が止まりラインの動きも止まったとき。すかさずアワセを入れよう。沈下中のリグが突然視界から消えた瞬間もアワセ時。

チヌの活性が高いときはロッドまで引き込むアタリが手元に伝わることも。このとき硬く張りが強いチューブラーティップだと、チヌが違和感を覚え消しゴムなどのリグを吐き出してしまうことがある。軟らかいソリッドティップをすすめるのはそのためだ。

夏から秋(お盆のころは食いが一服するが)はチヌの落とし込みシーズン、各防波堤の釣り情報(落とし込みの釣果)を頼りに釣行しよう。

※次回は「夏磯でねらうフエダイの夜釣り」について解説する予定です