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「釣果アップの勘所」第9回のテーマはチョイ投げで最高に嬉しいターゲットであるキスを数釣るコツ。本格的な投げ釣り、それも競技会にエントリーするような名手のみなさんのテクニックには遠く及ばないが、断片的にでも、そのノウハウから学ぶべき点はたくさんあるはず。ということで、かつての取材経験からチョイ投げでも役立つに違いない! というツボを思い出しつつまとめてみた。
パールピンクに輝く良型キスが
チョイ投げでかんたんに釣れた時代
いきなり個人的な話で恐縮だが。僕が小学生のころ兵庫県は播磨灘に突き出した防波堤の先端でパールピンクに輝く美しいキスが、あり合わせのチョイ投げタックルで何尾も釣れたことがあった。エサは……たぶんコガネムシ(ウチワゴカイ)だったような気がする。アオイソメもイシゴカイもエサ店にはなかった? ように記憶しているからだ。
15号ぐらいのジェット天秤の先の仕掛は……? 現在ように便利なチョイ投げ仕掛セットなど釣具店には並んでいなかった時代なので、おそらくハリス付きの流線バリかキツネバリを直接結びつけていたのかもしれない。
竿もカーボンなどない時代、安価で全長2mもないグラスロッド(ボート用?)だった。当然、道糸はナイロン。号数? これも不明。力糸(投げ釣りでフルキャストするときに細いラインが切れないよう、ラインとテンビンオモリの間につなぐ太い糸。現在のルアーフィッシングでいうリーダーだ)を利用する知識など持ち合わせていなかったから、3~4号ぐらいで太めの道糸だったのかもしれない。
こんな感じで防波堤先端からチョイッと投げて、竿を足元に置いてアタリを待つだけ。すると竿先がクククッと震え、すかさず巻き上げると20cmぐらいのキスが食い付いていた。似たようなサイズのキュウセンも多かったが、とにかくその魚たちの美しさは鮮明に思い出すことができる。
キスがたくさん釣れた!
それが引き釣りとの出会い
本格的な投げ釣りを目の当たりにしたのは、大人になり釣り雑誌社に勤務するようになってから。あるとき淡路島は洲本の浜で。半日で40~50尾釣ったように記憶している。
このときに学んだのが、いわゆる「引き釣り」だ。投げ込んだ仕掛をそのままにせず、寝かせた竿をゆっくりと扇状に動かし仕掛を引いたら、道糸を巻きながら竿を元の位置に戻して、を繰り返す。
このとき竿先にブルブルっとアタリが出ても、すぐには巻き上げず。しばらく引きの動作を継続し、数本あるハリに複数のキスが掛かるのを待ってから仕掛を回収。これで仕掛に2尾、3尾、4尾と複数のキスが掛かったのだった。
仕掛を引いて動かすのは、回遊するキスの群れを探すためと、その動きでキスを誘って、どんどん食い付かせるためだ。キスの群れを見つけたら、次からはその距離を重点的に探ればよい。ただし、そのポイントに直接オモリを投入するのはよくない。オモリの着水音で群れが散るので、群れの位置より遠方に投げ入れるのが絶対だ。
道糸がナイロン全盛の時代
「仕掛は竿で引け」が鉄則だった
当時、リールを巻かず竿で引くのが基本と教えられた。現在のように竿もリールも高感度、高性能でなく、ラインも伸びがあるナイロンで低感度。リールを巻いて仕掛を引くと、リール自体の振動も加わって、小さいアタリがひじょうに取りにくかったからだ。
ということでみなさんがチョイ投げの際、ルアーフィッシングで使用している高感度のロッドに伸びのないPEラインの使用なら、この限りではなく、ゆっくりリールを巻いて仕掛を引いても問題ない。アタリは鮮明に手元に伝わるはずだ。もし「そんなタックル持ってない」というなら、ぜひとも竿で仕掛を引くことをオススメする。
アタリがあっても引き続ける!
複数のハリに多くのキスを掛けるコツ
先にも書いたが、ハリが複数ある仕掛に多くのキスを掛けるには、最初のアタリがあっても、そのまま引き続けるのが基本。ハリ3本の仕掛ならアタリが3回出るまで引き続けてから回収するべし。それでも複数掛からないこともあるが、連(複数のハリに複数の魚が掛かること)の確率はうんとアップするはずだ。
ただし極端に食いが渋い日は1回のアタリで、すかさず仕掛を回収した方が結果的に釣果がのびることもある。こんな日は食いも浅いので次のアタリが出る前に最初の魚がハリから外れてしまうことも多いものだ。
仕掛を引く速度は?
目安は人間が歩くスピード
さて問題は仕掛を引くスピードだ。昔からキスの引き釣りでの最適速度は人間が歩く程度といわれてる。竿を動かして引く際は、竿先の動きで何となくイメージできると思う。リールを巻いて引くならオモリを陸上で移動動させてみよう。同行者にオモリの横で一緒に歩いてもらえば間違いなし!
ただ、これはあくまで基本で、常時その速度が最適とは限らない。アタリがない、アタリがあってもあとが続かない、アタリがあってもハリに掛からない……場合は、仕掛を引く速度をいろいろ試してほしい。その日、その時の条件にマッチした速度があるはずだから。
現在はめっきり少なくなってしまったが、その昔。キス釣り最大のゲストだったガッチョ(ネズミゴチなどネズッポ科の魚の関西での総称、関東ではメゴチ)ばかりが食ってくるときは「仕掛を引く速度が遅い」といわれ、仕掛を引く速度の目安といわれていた。
極端にアタリが少ないときは
動くエサで置き竿がベター
キスの引き釣で使用するエサはイソゴカイかアオイソメ。基本は短くカットしハリいっぱいのサイズにする。長くハリ先から垂らしても食い逃げされるだけだ。
ただし仕掛を引いても引いてもアタリが出ない場合は置き竿にし、仕掛を動かさずアタリを待つ方がよい場合もある。こういうときはエサを1匹丸ごと、長いままハリにセットすれば、エサが自らクネクネ動いてキスを誘ってくれる。
夜間に置き竿で大型キスをねらう場合は、ほぼ100%この方法。アオイソメの動きも効果的だが、マムシ(イワムシ)やイチヨセ(袋虫とも呼ばれる。標準和名でスゴカイイソメ)など動きよりもニオイが強いエサの威力はそれに勝ることも覚えておこう。
※次回は大阪湾口、船の鬼アジ釣りについて解説する予定です