仕掛屋さんのプチ知識 No.4 仕掛担当が教えてくれた
知っておきたい「ハリ交換」の目安と寿命

text-photo_岳原雅浩

釣り道具において「仕掛」は、ロッドやリール、ルアーほど脚光を浴びるわけではないが、魚に直接触れるアイテムとして、また、仕掛の良し悪しによって釣果が左右されるなど重要なアイテムだ。そんな仕掛を扱うメーカーならではのプチ知識を、開発担当者に聞いてみる当企画。「これ知ってたらお得」「釣果アップにつながる」「釣りが快適になる」…といったアイデアを紹介しよう。

01_ 中川くん

今回「ハリの交換目安と寿命」について教えてくれたのは、長年仕掛開発に携わる中川さんだ。

【ハリは消耗品】魚をのがす前に交換しよう!

仕掛のなかでも、魚に直接触れるパーツとしてとくに重要な「ハリ」。ハリはサイズや重量、色や形、太さ、強度に至るまでさまざまなバリエーションがあり、その要素一つが変わるだけでも釣果に影響を与えるという代物。魚と釣り人の接点となるだけに、魚を掛けたあともひじょうに重要なアイテムだ。

02_ ハリイメージ

そんなハリは当然、使用とともに劣化が進む消耗品。中川さんいわく、「魚を掛けたり、海底や岩に触れることで、尖っているハリ先もわずかずつですがナマッていきます(丸くなります)。鋭さを失ったハリは刺さりが悪くなり、釣果にも影響してきますね。使っているうちに仕掛のラインやサルカンが傷んでくるのと同様です」とのこと。
また、一度曲がってしまったり、繰り返し使ってサビてしまったハリは極端に強度も落ちているので、そのまま使えば「折れる」「刺さらない」といった不具合が発生。釣果ダウンにつながるのは間違いない。決して安くないアイテムではあるが、適度に交換が必要だ。

ちなみに、釣りモノでハリがとくに傷みやすいのは「投げ釣り」とのこと。
投げ釣りは遠投して海底(砂地)を引きずってくるので、ハリが擦れて傷ついたり、軽くハリ先が引っ掛かってナマリやすいと、中川さんが教えてくれた。ナルホド!

03_ 投げ仕掛

【交換の目安】ナマリや曲がりを要チェック!

では、その「交換の目安」はどんなものか?

まず、「ハリ先のナマリ」については、目視でハリ先が曲がっている、丸くなっているものはアウト。使用前や使用途中に気になったら都度確認しよう。最初からナマッているハリ先はもちろん不良だが、使用途中に知らずのうちにナマッていたら、釣れるチャンスを逃しているかもしれない…。
そして、「ハリそのものの曲がり」については、魚とのやり取りや根掛かりなどで、ハリが曲がる(伸びる)ことがある。ほんのわずか…多少であれば戻して使えるが、極端に曲がったものはやはりアウト。ハリが伸びたまま使えば刺さりづらくバレやすいし、大きく形状を戻しても強度が弱くなり折れやすい…。
どちらも程度モノなので、アングラーの感覚や経験、嗜好によるところではあるそうだが…。

交換の目安同様、ユーザーさんからよく聞かれるのが「ハリの寿命」。仕掛メーカーとして実は答えづらい内容だそうだが、中川さんは次のように教えてくれた。

「ハリの寿命は先の2点(ハリ先のナマリとハリの曲がり)に加え、『サビ』も影響します。刺さりという観点からいえば、正直、釣行ごとに新品のハリを使っていただきたいのですが、モノを大切にする気持ちだとか、お財布事情から繰り返し使うこともありますよね。そんな際に、ハリ先やカエシ部分は一度使うととくにサビやすいので要注意です。サビているものは寿命と思って諦めてください(笑)」。
また、ハリの保管に関しては「湿気がない状態で新品のハリを保管すれば、もちろん長く使っていただけますが、湿気が多い場所だったり、一度使用したものはサビやすく寿命は短くなります」と付け加えてくれた。

06_ ハリ先のサビ

【チェックポイント】ハリの状態を確認する具体例

実際にハリやハリ先の状態を確認する方法として、中川さんは「よく知られている方法で、特別ではないのでちょっと恥ずかしいですが…」と謙遜しながら、以下の方法を教えてくれた。
ポイントは使用前(釣る直前)と使用中(または使用後)にそれぞれ確認することだ。

使用前に確認

まず釣りの前にハリ先の鋭さをチェック。ハリ先を自分の爪(親指の爪など)に軽くあてて、引っ掛かるかどうかを確認する。鋭いハリ先であれば、引っ掛かりを感じ、少しハリ先を滑らせれば爪に傷がつくはずだ。
そしてこのとき、ハリの形状も確認しておこう。同種・同サイズのほかのハリと比べて、著しく形が異なっていないかがチェックのポイントだ。

07_ 爪にハリ先をあてる
ハリ先を自分の爪に軽くあてて、引っ掛かるかどうかをチェック! 鋭いハリ先であれば軽い力でも十分に引っ掛かる
※ハリ先確認の際は、指先に十分注意してケガをしないようにゆっくりと行うこと
08_ 仕掛のハリ寄り
仕掛であれば、使用前のパッケージに掛かっている状態でハリの形状を確認すれば分かりやすいかも。事前に確認しておこう!

使用中(後)に確認

魚を数尾釣ったあと、大物を掛けたあと、根掛かりを外したあと…など、気づいたときに都度、ハリを確認しよう。
爪に軽くあてて引っ掛からなかったり、引っ掛かりが使用前と比べて甘いようであれば交換の目安。また、ハリの形状を目視でチェックし、曲がりの具合に変化がないか確認しよう。いずれにしても、使用前に確認しておくことで使用中や使用後にその変化に気付きやすい。

09_ ハリ(伊勢尼)単体

といったわけで今回はココまで。
ちなみに、一度使用したハリをもし持ち帰って次の釣行で使うなら……、「しっかりと丁寧に水洗いするのが大事ですね。海水であれば塩抜きが必要ですから、水道水(真水)に10分程度浸けて、すすぐのがオススメです。そのあと、新聞紙などの水分を吸ってくれる紙の上に広げて、天日干しで十分乾かせば、サビの心配が少なくなりますよ」と中川さんは教えてくれた。

※使用状況、保管状況により「サビない」わけではないので悪しからず

釣りに詳しいエキスパートなら「な~んだ」な知識かもしれないが、釣りを快適に、スムーズに楽しむための知識としてお役に立てれば幸いだ。
仕掛のスペシャリストとして日々開発に携わるなかで、きっとアングラーのタメになるアイデアがいろいろとあるはず! そんな目から鱗なプチ知識を発掘し、引き続きお届けしていこう。