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釣りに出かけようと思えば、竿やリール、糸、エサ、ルアーなどなど、何かとお金がかかるイメージはぬぐえません…。しかし「釣りは遊びだっ!」と、子どものころのメダカやザリガニ釣り(獲り)を思い出して、大の大人ができるだけお金を掛けずに1日遊んでみる。そんな原点回帰的な企画にトライ!
真夏のターゲット「マダコ」を、身の回りのもので工夫して、ゆる~く、でも意外に真剣に!? ねらってみましたよ! 結果も大事ですが、楽しみながらトライ&エラーを繰り返すそのプロセスも大切。夏休みの宿題を思い出しての挑戦です!!
今回のお題は「お家にあるモノを使って0円を目指す」タコ釣り!
今回の企画、「できるか!? 0円フィッシング!」というお題で以前トライしたことのある企画。お金を出せば、かんたんに優れた釣り道具を手にできるなかで、あえて0円にこだわってみると意外に面白かったというもの。とはいえ、アイデアがないとなかなか「0円フィッシング~~」とはいかないわけで…。
お金を掛けずにと考えると、自ずと身のまわりに既にあるものの再利用や、家庭にある廃材を上手く活用するしかない。同時に、0円で釣れそうなターゲットを見つけるのも実は難しいのです。なにせ、魚とわれわれを結ぶ接点である「釣りバリ」に代わるものは、なかなか見つからないから(前回も苦労したポイント)。そんなわけで紆余曲折ありながら時間はかかったのですが、結局、ある方の「夏が旬のマダコなら釣れるのでは?」というアイデアからスタートすることにしました。
季節は夏。ちょうど夏休みの宿題をこなす少年ように、工作しながらあくせくするのも一興と、今回のターゲットはマダコに決定です。
協力してくれたのはイノォさん!
そして舞台は真夏の淡路島
「ある方」とは、当HEATでもお馴染みのイノォさんこと井上隆史さん。実は、いろいろとネタに困っていた私編集スタッフDの相談に、日頃から乗ってくれていたのです。
「0円フィッシング」に関しても、イノォさんは前回ご協力いただいた心強い助っ人。「タコ釣りなら身の回りのものでテンヤが作れるのでは?」とアイデアをくれたのです。確かにタコテンヤのエサを取り付ける箇所は、平たくて細長い板のようだし、鋭いながらも大きなハリは単なる針金のよう。細かく繊細な作り込みを比較的必要としないような見た目から、「なんだか作れるのでは…?」と自信が湧いてきました。
それに、夏のこの時期であれば、タコは遠投をせずとも足下で釣れることが多いので、竿も必要ありません。手釣りでいけそうです。
というわけで、すぐさま日取りを確保。そして、場所はタコがイージーに釣れそうで且つ、夏のロケーションを考慮して淡路島に決定しました。
もちろん、釣行日までお互いに工夫してテンヤをDIYする約束をして…。
冷蔵庫も食器棚も…
ゴミ箱まであさって材料の確保!
エサを取り付ける箇所は「角材? 空き缶? かまぼこ板? ペットボトル…?」、ハリは「ハンガー(針金)? 割りばし? BBQの串? フォーク…?」。家の中を見渡しながら頭をひねります。2人の話で決まっていたものといえば、釣り糸はタコ糸、オモリは石、エサは冷蔵庫のあまりものといったことくらい。(最悪オモリは船釣りで使っているナス型オモリを流用しても、「あるモノ」の利用なのでイイか…なんて。それよりも実験的な釣行なので、釣りができることを優先しようと言い訳にしていました(汗))
できるだけ加工することなくカンタンに作ろうと思うと、なかなか難しいものです。とくに、ハリにあたる部分は、針金をとがらせようと思うとグラインダーか何か工具で激しく削る必要があります。せいぜい割りばしを鉛筆削りで削るくらいにとどめないと、手軽な0円フィッシングの面白さが損なわれてしまいそうです…。
ない頭をひねり、「あ~でもない、こ~でもない」と進み具合をお互いに確認しながら、なんとか当日までにDIYテンヤを準備したのでした。
さて釣りましょう!
しかし暑すぎてタコいるの?
釣行当日。サービスエリアで合流し、実験現場となる漁港へと向かいます。高速道路から見える大阪湾の景色は雄大で、遠くの空には夏らしい入道雲も見えました。
ところが目的の漁港に着くと、残念ながら「立入禁止」の文字が…。そうなんです。観光地として人気のある淡路島は、当然ながら島の外から多くの釣り人や観光客が訪れるため、コロナ禍のこの時期、軒並み立ち入りを規制されていたのでした。(1日も早い終息を願うばかりです)
仕方なく、釣りをさせてもらえそうな漁港を探して、南へ転々と移動を繰り返しました。夏の暑さと混雑する道路に阻まれながらゆっくりと南下。ようやく釣りができそうな漁港にたどり着いたのは、もうすでにお昼前でした…。
頭上から照りつける太陽は暑く、「こんなに日が昇った真っ昼間に釣れるの?」と半分釣果は諦めモードでスタート。イノォさんと私は、まずはお互いに準備してきた手作りテンヤを披露し合います。
「かまぼこ板にフォークをビス止めしたもの」「割りばしをゴム鉄砲のごとく組んだもの」「ただフォークを曲げただけのもの」など、お世辞にも美しいとは呼べないそれぞれの作品を眺めながら、「まっ、道具のお試しということで…」と笑わずにはいられませんでした。
あまりにも真っ昼間すぎて暑いうえ、しかも苦心の作の不細工さから釣れる気は0%でしたが、いざ楽しみながら釣り開始です!
港にはベイトがいっぱい!!
タコ糸の先に自作テンヤをぶら下げ、足下に落とし込んでいきます。
タコは雑食で好奇心旺盛といわれています。普段はカニやエビといった甲殻類や貝類、そしてもちろん魚などを食べているようですが、テンヤ釣りではトリの脂身なんかも使われます。当日のエサはイノォさんが自宅の冷蔵庫から、あまりものの脂身や牛脂、カマボコにチクワなど、いろいろと持ってきてくれました。それらを自作テンヤの中心に輪ゴムや細い針金(番線)でくくりつけ、色やニオイで誘うのです。エサについては全く問題ないはずなので、タコがいればきっと食らいついてきてくれるはずです。
漁港のタコは、漁協で水揚げのあと捨てられる魚のアラなどを食べているそうです。そのため漁港内の堤防のキワや隙間、または底に沈んだブロックや海藻の陰などに潜んでいるといわれます。極力足下の堤防ギリギリのところにテンヤを落とし、「一歩、また一歩」と少しずつ横に移動する形で丁寧に探っていきました。
丁寧に探りながら(上から)沈むテンヤを観察していると、分かってきたことがありました。オモリとなる石を付けて沈ませる際に、オモリ位置によっては頭から沈んだり、お尻から沈んだりするのです。姿勢が悪いと着底の際に横や逆さにこけてしまいます。また、お尻側に重心があるテンヤは、着底に成功しても、タコ糸を引っ張ってチョンチョンとアクションさせた際に上手く動いてくれません…。微妙にオモリの位置を2人で何度か調整しました。当たり前のことですが、現場で試してみないと実際のところは分からないと気づかされたわけです。なんせ軽いノリでトライしておりましたので、造りがいい加減で……(笑)。
それにしても、足下からふと目線を上げて漁港内を見渡すと、真っ昼間だというのに帯びたただいいベイトの群れが。サバにアジにイワシ、メバルにスズメダイと豊富な魚影に驚かされました! 「なんで今日に限ってサビキ釣りの道具を持ってきていないでしょうね~」なんて話しながら、指をくわえて眺めるのみ。いやいや、きっと魚影が濃いということはマダコもいるはず。そう信じてジットリとかいた汗を我慢しつつ、ゆっくりと一歩ずつ探り続けたのでした。
夕刻を迎えたそのときにっ!
アタリがないまま数時間。徐々に日も西に傾き始めました…。
漁港をうろつく野良猫に、もう使いそうにないエサを与えたりして時間をつなぎつつ、タコ糸を持つ手を時折り動かして、タコのアタリを今か今かと待ち続けました。傍から見ると、ほぼ平日に仕事をサボっているサラリーマン2人のような風景。怪しく片手に持つタコ糸を上下に動かしながら、しゃべっている不審者のようだったでしょう(笑)。
お喋りをしながら、ほぼほぼ諦めモードの2人。しかし、突如何の前触れもなく何だか「モヤ」っとした根掛かりのような感触が。タコ糸のテンションを張り様子を伺うも、生命反応のような海藻やゴミが引っ掛かっただけのような…、そんな反応だったようです。とりあえず「エイっ!」とアワセると、なんとまさかのタコ反応!! 「マジで~」と言いながら引っこ抜いた先には、立派な、ホントに立派なマダコが付いていました!!! しかも使っていた自作テンヤは、フォークをただ曲げただけのもの。当初、「フォークの先っぽじゃ、フッキングできないですかね~?」なんて話していたのですが、しっかりとフッキングしていたのでビックリです!
驚きの番狂わせの結果に大喜びのオジサン2人。完全に殺気の抜けたタコ糸とテンヤ、それがよかったのかもしれません。
その後、興奮冷めやらぬイノォさんと私は、何とか“2匹目のドジョウ“を釣り上げるため、ようやく真剣な目つきに(遅い?)。しつこく日暮れまで探り続けましたが、残念ながら2杯目のタコは現れることなく終了を迎えたのでした。
気の抜けたタイミングでの1杯、ねらって釣ったわけではない1杯でしたが、それでも結果を出すことができたのは何より。試行錯誤しながら素人なりにDIYしたテンヤが、見事通用することが実証できました。なんせ、フォークでちゃんとフッキングできたわけですから。
ただ、実験してみてわかったことですが、既成の釣り具(タコテンヤを含む仕掛)のありがたさを身をもって感じることができました。「釣りやすい道具」「釣れる道具」を追い求めてきた、漁師さんや釣具メーカーの長年の創意工夫には脱帽ですね。
でも、われわれ2人は、テンヤを自作した時間も、夏空のもと釣りをした時間も、大人の夏休みっぽい感じで十分に楽しめましたよ!! 今後も定期的に2人で、さらにオモシロイ「0円フィッシング!」にチャレンジしていきたいと思います。
※釣行は漁業権侵害のない場所を選んでさせていただいております。
淡路島は漁業権の設定されているエリアが多くありますので、釣行の際には事前の確認とご注意をお願いいたします。