出典:写真AC
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タチウオを釣るにはいろいろなスタイルがある。
最近はジグヘッドのワインドやメタルジグを使ったジギングなどルアーでねらうことも多いが、堤防ならウキ釣りも盛んだ。タチウオの接岸する波止だと夕暮れ時から水面に電気ウキの灯りが並ぶ。昔ながらの秋の風物詩といえよう。
そんなタチウオのエサ釣りだが、仕掛そのものは実は進化している。今回はハヤブサのタチウオ仕掛がリニューアルされたとのこと。早速ご紹介しよう。
食わせに自信あり
タチウオ用ウキ釣り仕掛解説!
その前に、堤防でのタチウオのウキ釣りをかんたんに説明しておこう。
タチウオのウキ釣りは、夕暮れから岸近くによってくるタチウオをキビナゴやドジョウ、魚の切り身などのエサで釣る釣り方で、電気ウキの下にオモリを通しケミホタルをウキとオモリの間にセット。その下に仕掛をぶら下げる。ウキに反応が出ても慌てて掛けず、掛かるタイミングをじっくり見極める。そんな駆け引きが魅力の釣りだ。
昔から釣り人に親しまれており、さほど仕掛も変わらない気がするタチウオ釣りだが、リニューアルされた仕掛の内容はどういったものなのか? 新しくなったタチウオ仕掛「一刀両断」シリーズについて、商品開発課・中川氏に聞いてみた。
中川さん:「今回の商品をかんたんに分けると、ナイロンハリス、ワイヤー、そしてワイヤーとナイロンを組み合わせたものといった3種類に分類できます。そのなかでも1本バリ、水平の2本バリという感じで分かれています。まずはナイロンのタイプから説明しましょう」
タチウオ仕掛 その1
食わせのナイロンタイプ
「『太刀魚 ナイロン 牙ガード1本鈎3セット』これが基本の仕掛になります。シングルフックにイラストのようにエサを付けてもらう。そして『太刀魚 ナイロン水平ダブル 牙ガード2本鈎2セット』は、一つの仕掛にハリが2本付いていまして、エサの頭側と尻尾側にハリを付けることで、エサを平行にした状態にできます。こちらのほうが食いがいいといわれていて、こちらも今や定番です」
では、従来品と何が違うのだろうか?
「ナイロンタイプは特長として、どちらも牙ガードという超長軸のハリを採用してます。
牙ガードはナロー(フトコロが狭い)で軸の長いハリですが、ただのロングシャンクのストレートではなくヒネリが入っているので掛かりがいい。さらにダブルのケン付きでエサがズレにくいんです」
通常はチヌバリなど丸形の短めのハリを使われることが多いとのことだが、歯の鋭いタチウオに対して短いハリでは糸(ハリス)が切れやすくなってしまう。チモト(糸が結んである部分)がエサやハリ先から近いと、鋭い歯が結び目やハリスに当たってしまうのだ。
そこで、結び目をエサから遠ざけた軸の長いハリの方が切られにくいということになる。牙ガードはエサ止めと、掛かりのよさ、ハリスを守るという要素を兼ね備えたハリということなのだ。
「エサ止めケイムラパイプですが、チモト部分に被せてハリスを守るためのものです。
ですが『太刀魚 ナイロン 牙ガード1本鈎3セット』に関しては1本バリにエサを真っすぐに付けるタイプなので、エサのズレを止める役割もあります。
チモト以上にエサがズレるとナイロンハリスの部分が噛まれますので、ここでエサを止めてもらう仕組みです」
ちなみに、『太刀魚 ナイロン水平ダブル 牙ガード2本鈎2セット』に関してはエサの付け方が違うのでエサ止めにはならないが、ハリスの結び目を守るという意味では共通している。
タチウオ仕掛 その2
切られないワイヤータイプ
「次はワイヤータイプで『太刀魚 ワイヤー 速掛1本鈎2セット』と『太刀魚 ワイヤー水平ダブル 速掛2本鈎2セット』ですね。これも、基本の1本バリタイプと、エサを水平にして食わせ要素の強いダブルのタイプのラインナップです。
今回はナイロンコーテッドワイヤー採用ということで、ワイヤーに柔らかいナイロンをコーティングしています。ワイヤーだと食いが悪いことがありますので表面に柔らかさを持たせています。より違和感を与えにくいワイヤーになっています」
単純に切られたくない場合、確実に獲りたい場合にこれを選んでいただく。
どっちが食わせやすいかというとナイロンなのだそうだが、その日の状況によってタチウオに切られやすいような場合もある。そこで選択肢としてワイヤーが必要になるのだが、ナイロンのコーティングでワイヤーの表面の硬さを和らげることで、むき出しのワイヤーよりも違和感を与えにくくしてあるのだ。
あと、フックは先程の牙ガードとは違うようだが、なぜワイヤータイプはハリが変えてあるのだろうか?
「ハリは速掛太刀魚というタイプで、以前からずっと使ってきているハリです。ひじょうによく掛かると定評があったものなので、今回のリニューアルでも変わらず採用しています。
通常よりヒネリが強く掛かりしろが大きい。瞬発的に掛けられるハリです」
ワイヤーの場合、歯が当たって切られることはない。そこで、従来から使用されている実績と信頼のあるハリがそのまま採用されたということなのだ。
タチウオ仕掛 その3
いいとこ取りハイブリッドタイプ
「最後は『太刀魚 ワイヤー+ナイロン 速掛2段鈎2セット』というタイプです。特殊な仕掛で、エサを付けるところはワイヤー、その上がナイロンという形です。
ワイヤーは切られないのが利点ですが違和感を与えてしまうので、やはりナイロンが一番いいんですけど、それを組み合わせた仕掛です」
ナイロン部分は45cm、その下にナイロンコーテッドワイヤーが15cm。ワイヤースリーブで連結してる。ハリはワイヤーと連結してあるので速掛太刀魚が採用されている。
「こちらの仕掛は水平ダブルのようなタイプはないんですけど移動式縦2段鈎。
ハリがエサ(キビナゴなど)の頭とお腹の2箇所にあることで、タチウオの口への掛かりがいいんです。しかもハリの間隔をスライドできるので、エサが長かった場合に調整できますよ」
伝統の釣りに一工夫
開発のポイントは?
ところで、今回の商品を開発するうえでのポイントはどういったところだったのだろうか。引き続き聞いてみた。
「今回の開発で一番大きなところは牙ガードの採用ですかね。
タチウオは歯が鋭くて仕掛を切られやすい。とくにナイロンだと切られることが多いので、ハリで工夫して糸切れを防止したところがポイントですね」
釣りバリの形において魚の掛かりやすさばかり考えてしまいがちだが、エサ止めやハリスを守るというところまで考えられている。
「そして、もう一つのポイントは牙ガードと速掛太刀魚共通していることなんですが、フッ素コーティングを施したこと。今まではブラックニッケルでしたが、さらに刺さりがよくなり掛かりやすくなりました。表面の滑りがよいだけでなく、牙ガードの場合ケン付きでエサのズレを防いでますし、速掛太刀魚は角がある形状ですからエサがズレにくい。刺さりやすさだけでなくエサ持ちも考えていますよ。
今回の商品、ハリの形状はどちらも攻めてる形状で、堤防タチウオ釣りのニーズに応える選択肢とスペックになっています。ですので、ぱっと見は代わり映えしないですけど一度お使いいただくとよさがわかっていただけるんじゃないでしょうか」
近年、釣りバリにはフッ素コーティングが採用されるようになり、表面の摩擦が減って刺さりはひじょうによくなった。タチウオのハリにも進化の波が押し寄せている。
今回のリニューアルでタチウオ釣りはさらなる進化を遂げることだろう。
最後に中川さんはこう語ってくれた。
「新商品としては、全く新しい商品というよりリニューアルというところなので、従来品との違いをだすというのがなかなか難しかったですね。基本が固まっているうえで、お客さんにもっと釣っていただくために、商品をよくするために、何ができるのか…」
実際のところ、速掛太刀魚というハリはもともとが掛かりのいいハリ。また、牙ガードもストレート形状であるため同様にハリ掛かりがよい。フッ素コーティングを施しても、さほど大きく変わったと実感しにくいところではあるとのこと。しかしハリだけでなく素材も含め、仕掛としては以前のものより確実に進化しているのは間違いない。
今回の商品は、従来品のリニューアルということで、大きく目立たないところではある。だが、中川さんは気付かないところでしっかりと釣り人のサポートをしてくれているのだ。