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タイラバという、オモリとラバーを組み合わせたルアーでねらうマダイ釣りのスタイルは、ルアー釣りのなかでも人気のジャンルとして確立した。だが、タイラバの人気はただ高級魚が釣れるからということだけではない。マダイという魚の反応は刻々と変わるので、ヘッドはもちろん、ネクタイやスカートといったラバーパーツの組み合わせをどんどんチェンジして、その時々の魚に合わせる必要がある。状況を加味し、一番反応がいいパターンを探すのがタイラバの醍醐味なのだ。そのためには、よりスピーディーにネクタイを交換できるということが重要になる。
今回は、いち早く遊動式タイラバを確立したハヤブサの「フリースライド(旧・無双真鯛フリースライド)」シリーズに、便利なカスタムパーツがお目見えしたということで、早速紹介しよう。
タイラバ便利グッズの大本命
サクッとスライドとヘッドストッパー
フリースライドは業界のなかでもいち早く遊動式のタイラバ「潮斬鯛玉」を市場に投入し、タイラバの釣りを牽引してきたシリーズだ。そんなシリーズに満を持して登場したカスタムパーツ。従来品との違いやメリット、コダワリがきっとあるに違いない。
そこで商品開発課・市橋氏に聞いてみた。
ネクタイをサクッと交換!
サクッとスライド
まずタイラバについて説明すると、タイラバのヘッドにリーダーを通してハリがついた組糸に結ぶ際、その間にセットして組糸のストッパー的役割をする筒状のパーツがある。この筒状のパーツを通してハリを結ぶことで、ラバーパーツがヘッドから離れる動き(=遊動)が可能となるのだが、通常このパーツにネクタイやスカートが付けてある。
従来、ネクタイの交換はこのパーツごと交換する必要があり、そのためにはリーダーを切って交換し結びなおす必要があった。さらに、その場ですぐネクタイやスカートを増やしたり減らしたりといった調整ができなかった。そこで登場したのが今回のサクッとスライドということだ。
市橋さん: 「以前のモデルに比べ、リーダーを切らなくてもネクタイやスカートの交換が可能です。ネクタイの交換についても各社いろいろと方法があると思うんですけど、サクッとスライドと組糸の間にネクタイを挟むという単純な方法です」
確かに、ネクタイを組糸のループの間や狭い穴を通したりすることなくカンタンに交換できる。
組糸とパーツの間に挟める量であればスカートやネクタイを多めに挟むこともできるし、タイプの異なるスカートやネクタイでも使い回すことが可能だ。
また許容量もあるので、ちょっとボリュームのあるワームでもセットできる。とにかく、カンタンに手早くボリューム少なめから多めまで幅広く調整できるのだ。
市橋さん曰く、「さまざまあるなかで、ネクタイの交換は一番カンタンかなと思います」とのこと。
ハリの位置を調整できる!?
ヘッドストッパー
「遊動式のタイラバは落とし込むときはヘッドとハリが離れて落ちていくんですが、巻き上げ時はヘッドの重さや水の抵抗で結び目のコブがストッパーの位置で止まります。つまり、巻き上げのときはヘッドからハリの距離を調整することは基本的にはできません」
従来、ヘッドからハリの距離を長くしたい場合は、組糸を作る時点で長めに組むしかない。しかも現場では、リーダーを切ってあらかじめ用意した長めの組糸と交換するということになる。
「そこで、このヘッドストッパーがあれば調整が可能になります。
サクッとスライドから結びコブの間にヘッドストッパーを入れてスライド幅を制限すれば、その距離を少し遠ざけることができます」
「アタッてはくるもののハリ掛かりしにくいというか、食いが浅いなと感じるときに、ヘッドストッパーでハリスの垂らしの部分を長めにすれば、ラバーやネクタイの後ろの方にハリ先をもっていくことができるんです」
タイラバは巻いていると、後ろから魚がネクタイの先をついばんでくるようなアタリがあり、追ってくるのにハリに掛からないことが多い。ちょっとハリの位置を後ろにズラすことができれば、そんなショートバイトをフッキングにもっていけるというのだ。
その調整幅は(ヘッドの大きさにもよるが)組糸の長さの範囲でだいたい4cmぐらいの幅。しかも、従来のフックセットを使って長さを調節できるというのは大きなメリットだ。
【使い方】
さらに嬉しいことに使い捨てではない。ヘッドストッパー付属のニードルを組糸に引っ掛けてスライドさせて戻せばまた使うことができるので、穴が広がったりしなければ何度も使うことができる。(単に取り外すだけの場合は引き抜くだけでOK.。再利用の場合に、ニードルに戻しておくと次の使用が楽になる)
この商品もサクッとスライド同様、「ちょっとだけこうしたい」を手間なく手早く実現できる便利なアイテムといえる。
「これ、まだこういう商品がないからか、かなり好評いただいてまして…。
長さ違いのフックセットを何パターンも作って交換していたのが、ヘッドストッパーがあればすぐ調整できるんで、船から落とすたびに長さを変えて試せるんですよ」
派手過ぎない微波動がいい?
スリムタイプのシリコンネクタイ
次に、新作のカスタムシリコンネクタイについて聞いてみよう。
【カラーバリエーション】 ※両ネクタイ共通
「どちらもスリムってあるように、ノーマルのタイプに比べ細いんですよ。幅的にノーマルに比べ2/3ぐらいでしょうか。どちらも強いアピールはしません」
では、なぜ弱い波動やナチュラルなタイプが必要なのだろうか?
ノーマルタイプに加えてスリムが必要になる理由や使い分けを聞いてみた。
「どの状況に対して使い分けるという感覚ではないんです。ネクタイを増やしたり減らしたり色や形を変えたりと、アピールや波動のタイプをどんどん変えることで、その時々に反応のいい組み合わせを探すという感じになります。
そのネクタイやスカートをどんどん変えて探っていく行程が楽しいんですけど、ちょっと変えただけで反応が変わることがよくあって、そういった状況でこのスリムタイプのネクタイが効いてきます」
近年、ネクタイの交換が手軽にできるように発展してきたタイラバだが、それゆえに細かくアピールを変えることの重要性がわかってきた。ストレートスリムの微波動やスパイラルカーリースリムの派手すぎない撹拌(かくはん)が選択肢として浮かび上がってきたのだ。
「特に今回のネクタイは、魚が強いアピールを嫌うときにノーマルタイプより一段アピール力を落とす調整ができます。また、スリムのネクタイを1本2本と増やしていって、ちょっとずつアピールを増やしていくような調整もできますね」と市橋さん。
ちなみに今回のカスタムパーツには単体だけでなく以下のようなセットも用意されている。
必要に応じて選択して欲しい。
カンタンを実現する単純ゆえの苦悩
今回のカスタムパーツは「カンタンに細かい調整ができる」という共通点がある。構造は単純だが、実用性が高く便利な商品といえよう。シンプルな造りはカンタンそうに見えるが、実際はそこに至るまでにどのような苦労があったのだろうか? 市橋さんにこの商品に対する思いの丈を伺ってみた。
「各社いろいろなタイラバが出ているなかで、今はリーダーを切らなくてもネクタイ交換ができるというのがスタンダードになっています。そういった現在のスタンダードに対して、「フリースライド」シリーズはどうしたらよいのか? というところからスタートしたんです。
『リーダーを切らずカンタンに交換』と一言でいうと容易いのですが、それを形にしていくことを考えたときには、ひじょうに難解なテーマでした」
確かにできあがった商品を見ると単純な構造だ。しかも後から発売する以上、既に市場にある商品よりも明確なメリットが必要となる。
「いろいろ試行錯誤しながらいくつか試していったものの、自分では問題なく感じても人から見ると煩わしさがあったり、構造を複雑にすればできることも大きさが現実的なサイズにまとまらなかったり…。一つ一つの課題を、いかにしてクリアしていくかいろいろ考えましたね。でも一つクリアしたらまた一つ課題が出てくるみたいな」
サイズ、強度、素材、構造、コストにしても、市橋さんはそれぞれの課題と向き合うこととなる。そして苦心の上に辿り着いたのがこのサクッとスライドなのだ。
「これと違う構造でもう一回考えてくれって言われたら、またかなり悩むと思います。いろんな条件、事情を考慮ししながらやっと辿り着いたので」と市橋さん。
そして、ヘッドストッパーについては「そもそも、最初は結びコブからハリの間を引っ張ったら任意の長さに伸びるような構造を考えていたんです。でもそれでは任意の場所でしっかり固定するのが難しくて。釣ってるときにズレるようではフッキングパワーのロスにもなりますし…。
そこで考えたのが、組糸側を動かすのではなく、ヘッド側を遠ざけて止めることができれば同じことかなと。ハリの部分、組糸の部分はそのままで、このストッパーがあれば楽にヘッドを止められるんですね。あとから考えればカンタンなことですが、とんでもなく遠回りしてしまいました」と、笑いながら語ってくれた。
「商品開発はいい物を思いついたときや、できたときの気持ちよさはありますね」と楽しそうに語ってくれる市橋さんだが、追いつめられたり苦しいこともあるという。アイデアは常に考えていないと出てこないそうで、全然関係ないところ(普段の日常生活のなかなど)で思いつくこともあるのだそうだ。
最後に市橋さんはこう付け加える。
「タイラバは釣れるカラーやネクタイのパターンを見つけると釣れ続くタイプの釣りなので、釣れてる人のタイラバのネクタイの色や形をマネすると、わりと釣れます。1人では正解に辿り着くのに時間が掛かりますが、釣れてる人がいたらどんどんマネして交換するといいですよ。そこで、今回の商品が生きてきます」
市橋さんの苦悩の上に進化を遂げたフリースライド。
ぜひ、みなさんにも使っていただきたい。