海外釣り旅 モンゴル編 旅の半分は出会いと優しさでできている

「試される大地」モンゴルで出会った、ちょっと頼りないけど心優しい運転手の話。行ったことのない場所へ行くのはトラブルとこんな出会いの連続であり、釣りよりも印象に残ることが多いのだ。

大当たりのタクシードライバー

モンゴルの首都ウランバートルまで車でわずか30分程度のところにあるチンギスハーン国際空港は、成田や羽田に比べるとかなり「アットホーム」な規模である。あっという間に入国審査を終えて荷物をピックアップし、タクシードライバーたちでごった返す空港のエントランスに立ったとき、思っていたほどは涼しくなかったが、乾燥した空気はとても心地がよかった。メンバー全員が初めての国に来ることはあまり多くはないので、久しぶりに一種の焦燥感に駆られながら始まったゼロからの旅。2018年6月にモンゴルを訪れて、同年9月にまた舞い戻ってきてしまうとは、このときはまだ考えてもみなかった…。

 

直感と決断力には自信がある。いや、逆の言い方をするとそれしかないと言っていい。
営業をかけてくるタクシードライバーたちを数人「面接」し、ミニバンを所有して長期間旅ができるドライバーの紹介まで漕ぎつける。ウランバートルから片道でざっと1000km近くは走る予定のため、しっかりした車で安全かつ安心してコミュニケーションの取れるドライバーでないと、一緒に長旅をするのは辛い。経験上中途半端に日本語を話せる外国人よりも、片言の英語で通せる人ぐらいの方がその後の交渉がうまく進みやすかったりする。しかし今回は人柄がよさそうだったのと、すぐに壊れると現地で噂されていた韓国製のSUVではなく、見慣れた旧型のデリカに乗っていたという理由で旅の相棒はトギさんに決まった。

かなり昔、モンゴル人の友達がビザがなくなり不法滞在しながら日本で農家をやっていたという話を聞いただけで大当たりな気がした(笑)。だってそんなの面白いに決まっている。ちなみに空港に着いてからものの数時間で人里離れた釣り場で魚を触れる国を、僕は日本以外にあまり知らない。

牛

いくつもの奇跡の上を泳ぐ初めての1匹

2時間も走ると道の周りはだだっ広い荒野になり、牛や羊の群れに向かってクラクションを鳴らしながら、ただひたすらに真っ直ぐな道を進む。これでも10年前などに比べたら随分と舗装された道路が伸びているらしい。トギさんが「チョットお尻痛いね」と笑いながら、後半はガタガタと岩交じりの道を砂煙を立てながら走った。昔はそんな道ばかりだったのだろう。
途中でゲルに泊まり、翌日も朝から車に揺られる。やっと釣りをする水辺にたどり着いたのはウランバートルを出てから丸1日半、明るいうちにテントを張り気付けばもう夕方だった。

ペスカトーレ中西さんタイメン釣果
モンゴル1本目の魚は旅の相棒であるペスカトーレ中西の釣り上げたメーターオーバーのタイメン。開始15分ぐらい、ペスの姿が見えなくなったのでこれ釣ってるな? と思って下流に歩いて行くと、大きな川の音の中に僕を呼ぶ叫び声が混じっていた

 

夜になるとお昼までの炎天下が嘘のように涼しくなる。携帯の電波はなく、轟々と響く川の音の向こうにときどき遠くで動物の鳴き声が聞こえる。日本でスマホの画面と睨めっこしている時間があまりにも長いせいか、手持ち無沙汰になってしまいそうなわれわれ。しかしそんなことは全く知らないトギさんはどんどん話しかけてきて、どんどんウィスキーをすすめてくる。途中のスーパーで、現地で会ってお世話になる人もいるかもしれないと買い込んでいたウィスキーの1本がすでに空になり、焚き火に照らされてキラキラとしていた。

幸運にも初日から魚の顔を見ることはできたが、その1匹はどんな奇跡の上に出会えた魚なんだろうと考えさせられる。焚き火で豆を焙煎し、挽きたて淹れたてのコーヒーを渡すと、トギさんは何度も美味しいと呟きながら飲んでいたが、気付けば酔いつぶれていびきをかいている。残された釣り人達は明日からの計画を話し合う。僕たちはすっかりトギさんを好きになり、深い感謝を感じていた。

 

翌朝、「チョットごめんなさい」と言いながら、トギさんが気まずそうな顔で寝床である車から降りてきた。二日酔いで頭が痛いので運転したくないということをやんわりと告げられ、何か薬を持ってないかと尋ねられた。初日からこれでは旅の先が少し思いやられる…。

しかしゼロから川へと辿り着き、何もない乾いた大地にポツンと立っていることに比べると、そんなことは全くもってどうでもいいことに思えた。そもそもこの場所にまだまだ釣りたいポイントもあったし、すぐに移動する気もなかったので全然大丈夫だよと伝える。安心して笑顔を見せるトギさんに日本から持ってきていた頭痛薬を手渡すと「昨日飲んだアノオイシイ珈琲アリマスカ?」

今回も楽しい旅になりそうである(笑)。

トギ

 

レポーターREPORTOR

ショータ・ジェンキンス
プロフィール:ショータ・ジェンキンス
パックロッドを中心に、ライフスタイルとしての釣りを提案するメーカーHuerco(フエルコ)に所属しながら、世界各地を釣り食べ歩く国際派。厳しい釣りを強いられても、持ち前のハッタリと語学力で切り抜ける「適当さ」が武器。BIGFISH1983ジャパンアンバサダー、Rマジック・TONEDTROUTプロスタッフ、Patagoniaプロセールスプログラム。
インスタグラム:
@shota_jenkins_konno (URL: https://www.instagram.com/shota_jenkins_konno/)