台風もひと段落して気持ちの良い秋晴れのとある日。盟友ともいうべき男、ショータジェンキンスから久々の連絡が入った。
「マッツ元気?あのさ~・・・・・・」という感じでお互い近況を報告しあったあと、唐突にタチウオを釣りに行く予定はあるか聞かれる。内容をよくよく聞いてみると”アーバンフィッシング的なもの”だとか”仕事帰りとかそういう感じのヤツ”を求めているらしい。随分とザックリしていたけれど、要するにいつもの感じで良さそうなので早速週末に出かけることにしたのだ。
アーバンサイドと風物詩
夏の終わりから冬にかけての関西の波止では夕暮れとともにタチウオ狙いの電気浮きが揺れ、集魚灯が彗星のように海面に飛んでいく光景が風物詩となっている。タチウオとはそれぐらい人気のターゲットで、この時期だけ釣りをするという関西人は少なくないし、人気ポイントは混雑するので早くからポイントに入って釣座を確保しなければならない場合もあるのだが、そこは渡船を利用すれば船長さんに状況を聞いて釣り人が少なく釣果も見込めるポイントへ渡してもらえるわけだ。
神戸の中心地から程近い渡船屋さんに時間を確認したところ、ポイントには日暮れ前にのんびりと入ることができそうだ。せっかく休日に神戸に行くのだから渡船の時間までは美味しいものを食べたり、コーヒーを飲んだりなんやかんやと釣り以外も楽しみたいのである。出船時間が決まっているのだから早く出かければそれだけ時間があるわけなので、友人たちと街でショッピングをしたり、カフェやB級グルメを楽しんだ後に沖堤へ、というのがいつものパターンなのだが、もはや7:3で街ブラしている時間が多いこともままあって、もはやどちらがついでなのかわからなくなる日もある。まぁ今回はあくまでアーバンなタチウオがお題なのだからもし仮にそうなったとしてもおおむね問題ないだろうという浅はかな考えもあった(笑)。
せっかくだからノープランのほうが楽しい!?
さて、オシャレの街、神戸をブラついた後の釣りなので小型のバックパック1個にロッドもパックロッドオンリーの身軽な感じで神戸元町に到着した。元町の駅前広場にはコベリンというレンタサイクルサービスもあって、便利そうなので利用するか迷ったのだが今日は個人的にのんびりしたいので歩いて回ることにする。
まずは小腹を満たしに中華街へと足を向けると、休日ということもあり観光客もいつにも増して多く活気がある通りには露店が軒を連ねている。食べ歩きにぴったりなタピオカドリンクや、北京ダックなんかを売っているなかでも、角煮バーガーとか角煮まんとかいわれているトンポーローをゲットし頬張りながら散策をすることに。
ガッツリした肉の食感を楽しみつつ神戸市立美術館で何か展示でもやってないかと思ったのだがあいにく改装工事中だったので、大通りに面したスタバのオープンテラスでとりあえず詰め込んできたタックルを確認しつつ、今回のメインになるであろうワーム類をセッティングする。
タチウオといえばいわゆるワインドのイメージが強く、実際に有効な場面が多いメソッドなのでやり通すのもテなのだが、活性のON/OFFで魚の遊泳姿勢自体が変わったり、バイトの射程距離が変わったりとミスバイトも多い印象の魚。なので個人的には魚が意識しているレンジにきっちり合わせてやることに重点を置いたタダ巻きやストップ&ゴーでアプローチすることが多く、ゆっくり足元まで引けてレンジキープしやすいものを好んで使うことが多い。延べ竿で釣れる位の足元でヒットすることも多いので飛距離よりも水面からレンジを刻みやすい比較的軽めのジグヘッドと、低活性時にルアーの腹側を噛み付いて終わりということも多いのでアシストフックも忘れずに準備しておいた。
安近短!! アフター5にもおススメのファストフィッシング!!
時間になり六甲山を眼前に望む出船場所からものの数分で釣り場に着いてしまうのだから渡船屋さんを使わない手はないと思う。神戸が特別というわけでもなく全国的にも駅から歩いていける場所も多いのでオススメである。
肝心の釣りのほうはというと、釣り場に着いてまだ明るいので足元のバースの影をダート系ワームで狙ってみると早速何かが当たるがフッキングまでには至らない。
本当はシーバスを狙っていたのでセイゴが結構な数入っているだろうと都合の良い解釈をしていたのだが、食べごろなアジがハリに掛かり正体が判明したところで程なく夕マズメ、本命タチウオの時間となった。
紫色の空と輝きを増していく街の灯りがまさにアーバンな景色の中でキャストを繰り返すのだが自分はもちろん周りの釣り人もどうやら芳しくない様子。その上この日はかなり風が強く、なんなら冬を思わせる寒さでお手軽感がどんどん薄れていく(笑)。そんななかでも軽めのジグヘッドで足元までゆっくりきっちりアプローチを心がけていると待望のヒット。時折首を振りながらバックをする独特のファイトで上がってきた銀ピカの本命は六甲山から吹き降ろす強風に長い魚体をたなびかせるのだった。
一日の中で気温変化も大きくなる秋は服装の選択も難しくなるものの、その分釣りモノも多く魚のコンディションも良くなる時期でもある。都市の中心部から近く短時間で楽しめる場所は意外に多いし、コンパクトにまとまるタックルも多く、時間や持ち込めるタックルに制限があるなかでの釣りは特有の楽しさがあると思う。仕事帰り、遊びの後にショートタイムフィッシングを楽しんでみてはいかがだろうか?
レポーターREPORTOR
1984年生まれ、香川県出身。シーバスやロックフィッシュを中心にソルトウォーターの釣りに精通しながら、パックロッドを中心としたフィッシングライフスタイルブランド「Huerco(フエルコ)」のロッド開発を手がける。テストや営業と称して、全国の海辺を釣り歩くアングラーでありギタリスト。