現在ゲームフィッシングとしても幅広い年齢層に認知され、ここ数年の鯛ラバの釣りの盛り上がりは目を見張るものがある。そのラインナップも各メーカーから様々なタイプがリリースされ、まさに鯛ラバの群雄割拠の時代だと言えるだろう。鯛ラバは元々長崎県や徳島県の漁師が使っていた漁業がその起源とされていて、鉛玉からハリスを伸ばし、そこにエビなどの真鯛が好む餌を付けて鯛を釣っていた、伝統的な漁法から始まったと言われる。
しかし鯛ラバという釣りのスタイルが確立されていると聞かれればそうではなく、むしろこの釣りは未だ進化の過程にあり、おそらくは日本人が一番好きな魚とも呼べる真鯛を狙った鯛ラバの市場は、今後もっと盛り上がると予想される。
そこで今回は鯛ラバの釣りに精通するHayabusaフィールドスタッフのひとり、川畑 篤孝さんに今後の鯛ラバについて聞いてみようと思う。
まだまだ進化形、ゲームとしての鯛ラバ
HEAT:確かに様々なタイプの鯛ラバが登場していると思いますが、川畑さんは具体的にどんなところに注目し、これからの鯛ラバをイメージしているんでしょうか?
川畑:鯛ラバの、その形自体がまず変わってきていますよね。鉛玉にラバーやネクタイが付いていただけでシンプルだったものが、ヘッド(鉛玉)の形状が変わって、「固定式」から「遊動式」へ。さらに素材も鉛だけでなくタングステンが使われて、ラバーやネクタイの素材の進化だけでなく、ルアーで言うところのトレーラー的な役割を持ったワームも使われる様になってきました。そしてフックの小型化など、自分なりの工夫やカスタマイズの自由度が上がり、鯛ラバの楽しみ方も広がりましたね。
しかもバラシが多いのが当たり前とされてきた部分もかなり改善されてきていると思います。
最初はいわゆる「仕掛」だった鯛ラバが、よりルアーらしくなってきたと言えますよね。確実に鯛ラバというゲームフィッシングとしてのカテゴリーが出来上がってきています。
こちらから掛けにいく「攻め」の釣り、醍醐味は「フッキング」
HEAT:確かに見た目もルアーにより近づいた様に感じますね。一昔前は仕掛のイメージが強かったですが、今では多くのルアーメーカーが真鯛に注目している。そこにはやはり理由があるんでしょうか?
川畑:はい。やっぱりルアーフィッシングの醍醐味はフッキング。それがルアーフィッシングの一番気持ちの良い瞬間だと思うんです。しかしこれまで鯛ラバはアタリがあったら違和感なく真鯛に喰わせて、焦らず向こうアワセで釣るための、先の柔らかいソリッドティップの竿が主流でした。そこで最近私はライトジギングの竿を使った鯛ラバの釣りを試してみたりしています。なぜならこちらから「掛けにいく」事が出来るから。向こうアワセでなくこちらから掛けにいきたいんですよね。目指すのはよりゲーム性の高い鯛ラバなんです。ここが大きく変わってきていますね。
HEAT:なるほど。しかしそうなると、タックル面だけでなく、そのアタリの見極めなど、テクニック面でも色々と違いが出てくるのではないでしょうか?そこがまた面白くもあり、難しくもあり、どこか新しい鯛ラバの魅力になっていくような。
川畑:そうですね、私自身今勉強中です。基本的に真鯛のアタリはガツガツだったりゴンゴンだったり、素人でも分かるぐらい明確なんです。そしてバイトからファイトまで、どこかずっと叩かれている様な感じで、それが魅力でもあります。
例えばそれがラバーやネクタイを引っ張っているような場合は、どこかヌメっとしたアタリだったりします。モタっと、海藻を引っ掛けたり、イカに引っ張られた様に感じたりもします。すごく幼稚な表現かもしれませんが、小さい鯛はコンコンコンという風なアタリが多く、その場合はすぐにフッキングを決めます。大型なら魚の自重を使って向こうアワセでも掛かることがありますが、あまり大きくない鯛ならなおさらコレ(=フッキング)が重要なんですよ。一方大型はもっとゴンゴンというか何というか、うまく表現出来ないんですが少し違います。しかし私も未だ勉強中なこともあって、デカイ!と確信すると、逆にフッキングを決める勇気が持てないこともあります(笑)「ココ一番これは獲りたい!」という時は、魚の自重もあって掛かりやすいので、どこか慎重になってしまうんですよね。なのでその確信のパターンを探している段階でもあります。
新しいスタイルの確立と新しいタックル
HEAT:なるほど。しかしその様に釣り人の意識のレベルだったり、釣り方が変わってくればタックルも変わっていくのは自然ですよね。それが先ほど仰っていたジギングロッドを試験的に使用している部分にもつながっていくと思うのですが、やはりこれからは「掛けにいく」タックルが主流になっていくのでしょうか?
川畑:そうですね、まだまだ工夫・開発の可能性がある分野だと思います。フッキングはやはりある程度の硬さが必要だと思うんです。竿先の入る竿だと、どうしても掛けるというよりかは、乗せた鈎が徐々に掛かっていくという様な感じです。フッキングにトライしている釣り人も周りに多いですが、これまで通りのタックルだと、見ていても竿が全て吸収してしまっていますね。なのでそういった部分から変えていきたいなと。
流れる様な動作が鯛ラバの理想形
川畑:それと今の時期、初夏から秋口にかけてはですね、私のよく行く瀬戸内海エリアは水温が高くなってきまして、シャローエリアに真鯛が入って来るんですよ。シャローエリアに入ってくるということは、キャスティングが出来るじゃないですか?水深10mぐらいから大鯛を狙えるんですよ、本当にシーバスゲームみたいな感じです。むしろキャスティングが有利な状況ですね。
しかもそんな風にキャスティングをして、横方向に鯛ラバが動いている時っていうのは、即フッキングで掛けやすいんですね。単純に縦の釣りでは距離もあるのかもしれませんが、どうやら捕食の仕方も違う様なんです。横向きに引っ張っている時は大抵一気に食べてきますので、先ずは鯛ラバのキャスティングゲームからのフッキング練習などもしています。
HEAT:面白そうです!すると、よりゲーム性の高い鯛ラバの釣りのスタイルを新しく確率していくのも今後のテーマだったりするんですね。そのチャレンジの中で、既に導き出したものなどがあれば是非お聞きしたいですね。
川畑:では最後にひとつお伝えしたいのがですね、今後はキャスティングのタックルにベイトタックルが良いと思います。
これまでもキャスティング向けのタックルはあるんですが、皆スピニングなんですよ。しかし今後は絶対ベイトタックルが良い。その理由としてはベイトタックルの性能も格段に上がり、バックラッシュ等も少なくなっていますし、スピニングタックルと違ってベールを起こすなどの作業がないため、一連の動作に無駄がなくスムーズなんですよ。そうすることで、鯛ラバが止まってしまっている時間がありませんし、フォール中のアタリにもしっかり反応して掛けにいけるというメリットもあるんです。
スピニングだとどうしても動きにロスが出てしまう。流れる様な一連のアクションが鯛ラバの理想形ですね。