鈎の夏期講習と題し、それぞれの鈎の特長やそうなった理由などを改めて聞いてみようという企画の後編。前編に続き、講師は開発担当の市橋さんにお願いした。
市橋さん(以下市橋):前回はセイゴ、チヌ、伊勢尼といった基本中の基本とも言える鈎を解説しました。あくまで、ここでご紹介出来る鈎は、たくさんの鈎の中のほんの一部ですが、今回は基本形から、少し特殊な形までご紹介したいと思います。
基本形
アジ鈎
市橋:形はセイゴ鈎に近いタイプの鈎で、餌を水ごと丸呑みする様な魚に向いている形です。こちらから掛けていくと言うよりは、餌が飲み込まれ吐き出すときに掛かる様なイメージで、掛かった後に口切れしにくいようにこの形状になったと言われています。ここにハゲ皮やサバ皮などの魚皮をつけたものがサビキとなり、その名の通りアジやサバ、イワシなどを釣るのに多く使われています。
袖鈎
市橋:もともとはフナなど川の小物釣りで多く使われている鈎で、メバル、サヨリ、アジ、ハゼ釣りの仕掛にも使われています。
きっと誰しもが目にしたことのある鈎のひとつではないかと思いますが、その掛かりは抜群。太軸ではなく、掛かりが良い反面、大型の魚には不向きで、全体的に小型の魚を狙うのに向いている鈎になります。
流線
市橋:キスやカレイなどを投げ釣りで狙う時の基本となっているのがこの形になります。軸が非常に長く、こちらからアワセて掛けていく釣りではないので、鈎を飲み込まれても外しやすいといったメリットがあります。
イソメなどの餌がズレにくい”ケン”付きというタイプもあります。ケンとは軸の部分にあるカエシの様なトゲトゲの部分ですね。根掛かりした時に仕掛を回収出来る様に鈎が伸びる様に設計されていたり、まさに投げ釣り専用の鈎です。
特殊形
HEAT:なるほどですね。ここまで聞いただけでも自分で仕掛を作ってみたくなりました。市販されている仕掛でも、それぞれその鈎を選んだ理由があるんですね。開発という目線から、きっとこれまで本当にたくさんの鈎を見られていると思いますが、何か特長のある面白い鈎だったり、市橋さん的なフェイバリットはあったりするんでしょうか?
市橋:ひいて挙げるとすれば、、、ムツ鈎でしょうか?
ムツ鈎
市橋:ムツ鈎は稀にサビキなどにも使われたりしますが、これまで紹介した鈎に比べると、広く様々な仕掛に使われているという鈎ではないと思いますので、少しマニアックな鈎かもしれません。その特長としては、鈎先が「ネムっている」部分です。ネムリ鈎と呼ばれるタイプの鈎となり、鈎先が内側に曲がっているため、一見刺さりにくい様に感じますが、一度鈎先が乗れば、えぐる様に刺さっていきます。そして一度刺さると魚がバレにくく、根掛かりしにくいといったメリットがあります。そこを追及していくうちにこの形にたどり着いたんだと思います。
関東では船からの天秤仕掛で狙うアジ釣りに使われたり、根掛かりしにくいという部分を活かして、鬼カサゴなどの深場に住む根魚の釣りに使われたりもします。
ウナギ鈎
市橋:形が特長的なものと言えばウナギ鈎も挙げられますね。その名の通りウナギやアナゴなどの「長モノ」釣りに多く使われる鈎で、ミミズやイソメといった餌を付けやすく、バレない様にしっかりと飲み込ませる様な形をしています。ウナギやアナゴは掛かった後や、釣り上げた後もぐねぐねと暴れまわりますので、口に鈎が掛かっているだけでは簡単に外れてしまうことから、この様な形になったのだと思います。
もっともっと聞いてみたい鈎や仕掛の話もたくさんあったのだが、今回は時間の都合上ここまでとなった。
今すぐに釣果アップに繋がる話かと言えばそうではないかもれない。しかしこれまで何気なく使っていた鈎について、少しでも詳しく知る事で、釣りにもっとこだわりが生まれ、釣りがより楽しくなるんじゃないかと思わせてくれるインタビューとなった。鈎、やはり奥が深い。