これまでの二回に渡り、ワームフックの代表格である「オフセットフック」に、近年見直され始めた「ストレートフック」を合わせた2つについて紹介しました。最終回の今回は、ワームフックを作るための素材や、一筋縄ではいかない技術について紹介をしたいと思います。インタビューは引き続き、開発担当の芝氏です。モノ作りは生き物だと、改めてワームフックについて考えさせられる内容です。
HEAT:しかし前回伺ったF・P・Pオフセットなどの「即掛け」に限らず、どんな鈎でも鈎先の鋭さは非常に大事ですよね?
担当 芝さん(以下芝):そうですね。鈎先の鋭さを表す表現としてテーパーという言葉が良く使用されます。徐々に細くなっていく円錐をイメージしてみてください。
HEAT:なるほど。細ければ鋭く、細すぎれば強度が落ちる。
芝:そうです。刺さり重視の場合はロングテーパー、耐久性重視の場合は松葉先など、そのテーパーの度合いが刺さりに影響してきます。
HEAT:素材も変わって来るのですか?
芝:素材も重要ですが「焼き方」で硬さなどが変わっていきます。素材は単に硬いだけではなく、耐久性のある素材ですね。形状にも大きく左右されますが、伸びても折れにくいフックを作ること基本としています。
HEAT:それと何度か耳にしているフッ素コーティングとは何なのでしょう?
芝:フッ素コーティングとは一般的に、フライパンの底などに焦げ付き防止などで施されているコーティングと同じものだと思って下さい。
HEAT:焦げ付かず、卵焼きがするすると滑るアレですね?
芝:はい。これにより、同加工がなされていない同じ鈎と比較すると、平均で20%と驚異的な摩擦抵抗の軽減に成功し、それにより貫通力もアップしています。
HEAT:フッ素コーティングはまるで魔法の様な技術ですね!
芝:確かに素晴らしい技術です。しかし、実は全ての鈎に向いているという訳ではないんです。例えばチョン掛けやワッキー挿しの鈎にこの仕様を施すと、ワームボディの中で鈎が滑り過ぎるため、繊細なアクションが伝わりにくかったり、ワームが千切れやすいといった一面もあるんですよ。
HEAT:なるほど。一概に滑りが良いからフッキングの決まる良い鈎とはいかないのですね。
芝:そこでFINAでは、この技術を適材適所で採用しすることで、それぞれのフックの持ち味を殺さない様にしています。また、コーティングが剥がれるのでは?とのご質問もございますが、塗装のコーティングではなく、フッ素樹脂を配合した特殊メッキなので、通常の使用で剥がれる事はありません。
HEAT:その通常の使用に関する質問なのですが、鈎の錆などを防ぐための、オススメの管理や保存方法はありますか?
芝:水分をしっかりと乾かし、ライン用のコート剤などをふり掛ける。使用したフックと、未使用のフックを一緒に保存しない等ですね。実はプロのバスアングラー達は、試合などでは1度使用したフックを再度使うことはありません。試合では、1匹釣ってフックが痛んだと感じれば、その都度交換するぐらいです。ただ趣味やプライベートなどでバス釣りを楽しむ際に毎回フックを交換するのは大変なので、先程の保存方法を試してみてください。常に鈎先が鋭いか、曲がったり錆びていないかをチェックしてくださいね。
HEAT:今度からもっとワームフック1本1本を大切に扱いたいと思いました。鈎の形から素材、硬さに至まで、相当なこだわりがあるんだなぁと。
芝:日本の鈎は完成度が高いので、昔から「メイドインジャパン」のフックは世界でも注目されてきました。それは全てオートメーション化する事が出来ず、職人達により最終的な品質チェックをしているという点も大きいかもしれません。
HEAT:なるほど。昔に比べて、フックに使用する素材や技術に飛躍的な変化はあったんでしょうか?
芝:FINAは10年後でも遜色の無い性能を発揮できる10年スタンダードでの開発を信念としています。鈎先圧縮成型の「エアロポイント」や、「艶消しメッキ加工」。最近では、「フッ素コーティング」や「ループストッパー」など、新しいアイデアでより良い製品を作り出してきましたが、素材や技術は基本的には大きく変わっていません。どちらかと言うと伝統を守り続けていると言えますね。たとえばうどんを打つ時は、季節や気温、湿度などで材料を配分を調節する様に、鈎を作る時も、職人達が素材を見極め、品質を管理しているんです。繊細さが何より武器の「メイドインジャパン」、釣り人と魚を繋ぐ一番最初の部分だけに、手を抜く訳にはいかないんです。
HEAT:非常に納得です。貴重なお時間をありがとうございました!