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マイクロプラスチックやレジ袋などが原因といわれる、海洋汚染が問題とされるようになって久しい。そして、海はわれわれ釣り人が楽しむ場所としてはなくてはならない聖域であり、常にキレイであってほしいと誰もが願っているはずだ。
しかし、その一方で魚とのファイト中のラインブレイクや根掛かりにより、意図せずとも結果としてわれわれ釣り人自身が海洋汚染の片棒を担いでしまっているというのも否定できない。ならば、仮にそういったトラブルが起きたとしても、可能な限り海洋汚染につながらない努力をすべきだというのは、釣り人なら理解できるはずだ。
そこで今回紹介したいのが、既存のプラスチック素材を使用せずに環境に優しい代替素材を採用して“減プラスチック”にチャレンジした、ハヤブサの「海にやさしいサビキカゴ」だ。詳しい解説はハヤブサ商品開発課の田中氏にお願いした。
海洋生分解プラスチック製だから完全に自然に還る
今回発売された「海にやさしいサビキカゴ」はパッケージなしで商品単体を見る限り、釣具量販店に普通に売られているプラスチック製のサビキカゴと大差はない。しかし、パッケージ(というか、紙の台紙。これも環境への配慮か?)には商品名とともに「海洋生分解プラスチック『FORZEAS™』採用」「鉛ではなく『鉄オモリ』使用」とある。この「FORZEAS™」というモノがキモなのだろうか?
「はい、その通りです。FORZEAS™(フォゼアス™)※とは三菱ケミカルグループが開発した生分解性かつ植物由来原料ベースの「BioPBS™」を使用したコンパウンド樹脂のことで、その海洋性分解グレードを使用しているこのサビキカゴは、万が一根掛かりして海中に残ってしまったとしても海水中で細かくなるだけでなく、自然界の微生物のチカラで水と炭酸ガスに分解されるようになっています」と、田中さん。
※PBSA(ポリプチレンサクシネートアジペート)を主原料として使用
鉄は環境にやさしい。だからオモリも鉄製に
なるほど、時間が経てばカゴとしての形は崩れて細かくなり、その細かくなったモノをさらに微生物たちの力を借りて、自然界に当たり前で存在する水と炭酸ガスへと変えてくれるというわけか。では「鉄オモリ」に関してはどうだろうか? 田中さんが答えてくれた。
「鉛は環境に悪影響を及ぼすといわれていることもあり、代替素材として環境に比較的優しい鉄を採用することにしました。確かに比重は鉛が約11.4、鉄が約7.8と鉛の方が重いので、同じ重さを実現するにはより多くの鉄を使用する必要がありますが、環境への配慮を考えれば鉄を選ぶべきという結論に至りました」とのこと。
バスフィッシングではだいぶ前からシンカーの素材を鉛からタングステンに替える動きがあるし、海の釣りでもみんなで本気で考えなければならない時期が来ているということか。
しっかりメンテナンスすれば長く使い続けられる
環境に対する影響を考えて新たな素材にチャレンジするのは、とても素晴らしいことだ。しかし、大前提として『釣具』である。根掛かりが原因でロストしたりせずとも使用中は海水に浸かっているため、海洋生分解が進んで使っているうちにモロくなり、かんたんに壊れたりしてしまうのではないだろうか?
「使い終わったあとに水道水で水洗いをしたら水分をしっかりと拭き取り、高温多湿な環境と直射日光を避けて保存していただければ、問題なく使い続けられるだけの強度を保つテストデータは出ています。なので、安心してお使いください」ということだ。ただ、最後に大事なお願いも込めて、田中さんは締めくくってくれた。
海中にゴミを残さないように努力しながら釣りを楽しもう!
「環境に優しいから根掛かりで海中に残してもOK、ということではありません。海中に残ってしまうのは『やむを得ない判断』の結果だと思っていただけるとうれしいです。少なくとも根掛かりしたら外そうとする努力はしていただきたいですし、先述のようにしっかりメンテナンスすれば長持ちする商品なので、大事に使ってエコなサビキ釣りを楽しんでください」。
サビキカゴは釣具のなかでも海中に残りやすいアイテムらしいので、環境保全を考慮しつつ釣りをいつまでも楽しみたいのならば、これを機に「海にやさしいサビキカゴ」にチェンジしてみるのはいかがだろうか?