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「釣った魚を美味しく食べる」ことは、釣り人の特権でもあります。ときには魚屋さんでも見かけない珍しい魚や高級魚が釣れることも。せっかく新鮮な魚が釣れたのなら、美味しく食べてあげることも大切です。
今回は、最低限これをやれば大丈夫! といった魚の処理と保存方法を、釣り人目線で紹介させていただきます。カンタンにできることばかりなので、ぜひ試してみてください!
1.とにかく潮氷でキンキンに冷やしましょう!
魚の締め方といえば、代表されるのは「血抜き」や「神経締め」。もちろんどちらも大切な処理であり、とくに血抜きは美味しく魚を食べるためにひじょうに重要なポイントでもあります。
しかし、今回ご紹介したいのはズバリ、「魚を潮氷(冷海水)で冷やす」こと!
それだけ?? と思われるかもしれませんが、本当にそれだけなのです。
(1)まずは知っておきたい!
釣った魚の処理方法3ステップ
①魚が暴れないように脳天を締める
水から出した魚は激しく暴れます。暴れると内出血を起こして身が悪くなったり、私たちがけがをする原因にもなりますので、まずは「脳締め」をして魚の動きを止めましょう。
魚の脳の場所は目の後ろ、エラブタの線の延長上の近くにあります。ナイフを使うと締めやすいです。
②動脈を切って血抜きをする(神経締めをするならこのタイミングで)
脳締めで動きを止めたあとは「血抜き」をします。
血を抜くにはエラの付け根にある動脈に傷をつけるだけでOK.。ナイフで軽く切るだけでかなりの血が出てきますが、水汲みバケツに魚を入れて振ってあげると素早く血が抜けるほか、地面や船を汚しにくいのでオススメです。
また、神経締めをするならこのときにやっておきましょう。
③いよいよ潮氷で冷やす
脳締め、血抜きのあとは「潮水ですぐに魚を冷却」します。今回お伝えしたい本題です。
氷の上において冷やすだけではなく、冷えた海水の中に入れるということが大切です。空気中より水中のほうがムラなく魚全体を冷やしてくれるので、手間ではありますが締める作業の前に潮氷を準備しておきましょう。
写真のように大きな魚だと血の量も多いため、美味しく食べるには血抜きが重要になってきます。
しかし、サビキで釣る小アジやイワシなどは魚体が小さく釣れる数も多いので、1尾ずつ血抜きするとひじょうに手間であり、時間もかかります。そんなときは血抜きをせずに、釣ってすぐに潮氷で冷やすだけでも大丈夫です。
(2)なぜ魚を冷やさないといけないのか?
なぜ釣った魚は冷やさないといけないのでしょう? それは、魚は死後に体温が上昇してしまうからです。
体温が上昇することで、身が傷んだり魚臭さの原因になってしまうのです。放置してしまうと腐敗が進み、魚が持つ旨味成分も失われてしまいます。
せっかく釣り場で血抜きや神経締めを行っても、持ち帰るときにクーラーボックスでしっかりと冷やさないと、食べたときに臭みがあったり、身が傷んでいるといったことになりかねません。
ここで少し釣りから外れますが漁業の話を…。
多くの魚をとる定置網漁などでは魚を船に引き上げた時点で死んでしまっていることが多く、血抜きや神経締めはできません。しかし、船に大量の潮氷を作っておき、水揚げ後すぐに潮氷に入れることでしっかりと冷やされます。また、市場や魚屋さんに持ち込まれたあとも氷や冷蔵庫で冷やされ続けます。
水揚げから調理される直前まで常に冷やすことで鮮度の低下が抑えられるため、血抜きや神経締めがされていないのに美味しいお魚がお店で買えるというワケなのです。
冷蔵では運べない距離である場合や、長時間保存したい場合には冷凍する、といった具合です。
2.どうやって魚を冷やせばいいの?【現場編】
では、釣った魚をどうやって冷やせばいいのか…? 答えは超カンタン。
クーラーボックスに氷を多めに入れて海水を入れる! だけです。
それだけでキンキンに冷えた海水ができあがります。あとはそこに血抜きなどの処理をした魚を入れればOKです。
しかしここで注意したいのは「冷やした海水であること」。真水ではいけません。(アユやニジマスなど淡水魚の場合は淡水でOKです)
海水魚は海水の塩分に適応している生き物です。真水に触れると浸透圧の関係で体に水分が入ってしまい、水っぽくなってしまったり傷みの原因になります。なので潮氷が重要になってくるというワケです。もちろん真水に塩を入れて塩水にしてもOKですが、その場合は塩分が濃くなりすぎないように注意しましょう。
また、もう一つ重要なのが「クーラーボックスに入れる氷」。
ベストなのは保冷剤、ペットボトル氷、板氷(ビニール袋で包装されているもの)です。氷が溶けて海水に水が混ざってしまうと、海水に含まれる塩の濃度が下がり真水に近くなってしまいます。バラ氷の場合はビニール袋に分けておいて潮氷の中に溶け出さないようにしておくとよいでしょう。
もっとも、釣場ではそんなことに気を配る余裕がなかったりするので、クーラーにバラ氷を敷き詰め、海水を入れて手っ取り早く冷却するだけでも全然OKです。(私もよくやります…)
ただ、この場合注意しておきたいのは、前述したように氷が溶けて潮氷の塩分が下がってしまうこと。せっかく釣った魚が真水で傷んでしまうのはもったいないので定期的に海水を交換するか、しっかり冷やしこめるようであれば、魚を袋に分けるなどして潮氷に直接触れないようにしておきましょう。(だいたい20~30分ぐらいで魚の芯まで冷えます)。
3.持ち帰ったあとの保存方法について【自宅編】
美味しく魚をいただくには自宅に持ち帰ってからの処理も重要です。今回はなるべく鮮度を保ちつつ、長く保存できる方法をご紹介します。
大切なのは内臓やウロコなどを処理したあとにどうするかということ。
ポイントは主に2つあります。
①とくに血などの水分を徹底的にふき取ること
ウロコや内臓を取ったあとに魚を洗った水、お腹の血ワタもできる限りキッチンペーパーなどでふき取ります。
血と真水は魚を腐敗させる原因になってしまうので、保存する前にキレイにふき取っておくことが大切です。ヒレを切っておくとふき取りやすいので、差し支えなければハサミで切っておいて大丈夫です。
②できるだけ空気に触れさせずに保存する
しっかり水分をふき取ったら、お腹にキッチンペーパーを詰め、ラップでぐるぐる巻きにします。こうすることで魚ができるだけ空気に触れないようにします。
そのあとは大きな保冷バッグに入れて空気を抜いたり、ビニール袋に入れて冷蔵庫に入れておくだけでOK。(できれば低温のチルド室がよいです)
あとは好きなときに食べるだけ!
キレイに保存できれば釣ってから4~5日以上経っても魚をよい状態で保つことができます。
寝かせた魚は歯ごたえこそ落ちてしまいますが、寝かせることでより旨味が増し、モチモチとした食感で美味しいですよ~。
ヒラメや根魚といった白身魚なら1週間ぐらい寝かせても大丈夫なんですが、逆に青物など血の多い回遊魚はしっかりと処理しても腐敗しやすいことは変わらないので、あまり寝かせずにすぐ食べましょう。
また、とくにクエのような大型のハタ類は血が少ない白身のため、3週間ぐらい寝かせることもできます。たまにペーパーやラップを巻き変えたりと、少し難易度は高いですが、上手くいけばとっても美味しい刺身が食べられるので、機会があればぜひチャレンジしてみてください。
※魚の鮮度は魚の種類(=身の種類)や保存状況にもよって変わります。必ずしも上記の通りとは限りませんので、寝かせる場合は状態を確認しながら、自己責任でお願い致します
魚を美味しく食べるための一番のポイントは「冷やす」こと。そこに血抜きや神経締めが加わるとより美味しく食べられるというワケなんです。
しっかりと冷やしこまれた魚は抜群の美味しさです。クーラーボックスが海水で重くなってしまうのが欠点ですが、とくに大きな手間がかかるということもありません。
釣った魚を美味しく食べたい! という釣り人のみなさん、ぜひトライしてみてはいかがでしょうか?
レポーターREPORTER
大阪出身、2020年度入社のハヤブサスタッフ。(現・九州営業所)
ライトゲームと船釣りをメインに、バス釣り、エリアトラウト、はたまた磯釣りまで、「美味しく食べるまでが釣り!」をモットーにエサ・ルアー問わずなんでも楽しむマルチアングラー。近畿大学水産学科で海の勉強をしながら釣具屋でアルバイトしていた経験や、持ち前のフットワークと気合を活かし、営業として全国を飛び回り釣行を重ねる…予定。
釣りのほかにも筋トレ、バスケ、スノボが大好きなスポーツマン。