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全国にある多くの釣り場で解禁を迎えた渓流釣り。一般的に渓流釣りというと、南西諸島の熱帯渓流を除いてトラウトフィッシング=鱒(ます)釣りを意味すると思いますが、自然の池や街中を流れる川、釣り堀、足場のよい堤防と違って、渓流釣りは山道を長時間歩いたり足場が悪く岩や倒木の多い渓流を遡行(そこう)する必要があります。それは、単に川を釣り歩くといっても、それなりの装備や準備が必要になってくるのです。
実は釣り方などよりも、実際に何を使っているかなどのギアに関する質問が多かったりするので、今回はかんたんではありますが僕なりに渓流釣りで使用されるウェーダーとゲーターについてお話したいと思います。
ウェーダースタイルとゲータースタイル?
渓流釣りのスタイルを大きく分けるとウェーダースタイルとゲータースタイルの2つがあります。胸、または腰から下を水が入らないようにウェーダーを履くウェーダースタイルに対し、ゲータースタイルは濡れてもいい乾きやすいタイツやインナー、ショートパンツなどを合わせるライトなスタイル。その特徴や使い分けから説明していきましょう。
ウェーダースタイル
まだ気温も水温も低い解禁直後や秋が深まる禁漁間際、北海道のようにシーズンを問わず釣りをする場所やあまりに虫が多いフィールドでは、その名の通りウェーダーを着用するウェーダースタイルをオススメします。それに対しゲータースタイルはウェットスタイルやライトスタイルとも呼ばれていて、これも基本はゲーター(ウェットゲーター)を着用し、その下にはラッシュガードやタイツなどを履く動きやすいスタイルです。暑い季節やテント泊などで荷物をなるべく軽くしたいときなどに助かります。
ウェーダーにもいくつか種類があり、まずは素材。一般的にナイロンかクロロプレン(いわゆるネオプレン。ネオプレンはデュポン社の登録商標)に分かれ、予算とも相談になると思いますが基本的には一番よく使用する季節に合わせて選ぶのがよいと思います。僕は冬の北海道以外ではクロロプレンは着用せず、インナーを使い分けて重ね着しながらシーズンを通してほぼナイロンウェーダーです。
夏場はほぼゲータースタイルですが、以前北海道でアブの猛攻に遭って以来、北海道だけは暑くてもウェーダーです。ハーフパンツとゲーターの間でタイツの露出した膝周りにアブがぎっしりとまっていたのを思い出すと、今でもゾクっとします(苦笑)。
ブーツタイプとソックスタイプ
ブーツタイプとソックスタイプは、ウェーダーの種類の名前です。長靴がそのままウェーダーに繋がっているデザイン、まさに”胴長”と呼ばれるタイプがブーツタイプ。ウェーダーとブーツが別々になっているものがソックスタイプです。
ソックスタイプに比べるとブーツタイプの方がリーズナブルなものが多いですが、僕個人的にオススメなのはソックスタイプ。靴が一体型のブーツタイプに比べると履き心地がよく靴擦れもしづらいのと、ブーツを選べるのが最大の理由です。
ブーツを選ぶというのはソールのタイプを選べるということに繋がり、それぞれのフィールドに適したものを選ぶことでストレスを軽減し釣りに集中できるからです。透湿性能の高い素材を用いたもののほとんどがソックスタイプなのと、デザインのチョイスも広がるのでカッコイイお気に入りを選びやすいのも理由の一つ。
ゲータースタイル
ゲーターにもいくつか種類がありますが、一番多く見かけるのはソックスタイプでクロロプレン素材のウェットゲーターだと思います。ウェットゲーターはウェーダーと違い、基本的にゲーターの内側にも水が入り濡れた状態で着用するため、その下に履く靴下も防寒用などではなく沢歩き用などの濡れることを前提とした靴下を選ぶ必要があります。
僕は通常のゲーターと、Patagoniaが販売しているグラベルガード付きのウェーディングソックスの両方を使っています。後者は靴下を履かずに着用し、ウェットスーツと同じ原理でソックスと肌の間に入った水が体温で温められて水の冷たさもそんなに気になりません。コンパクトで便利な反面、脛(すね)や膝を覆うタイプのウェットゲーターと比べると草木で足を怪我するリスクもあるので、初めての渓流や藪漕ぎをともなうときには通常のウェットゲーターを選んでいます。これもよく行くフィールドや手持ちのギアとの相性で選ぶとよいと思います。
ウェーディングブーツ選び
ウェーディングブーツは、ウェーダーでもウェットゲータースタイルでも着用するブーツは同じウェーディングブーツなので、二役をこなすものとして選んでください。前項でブーツタイプのウェーダーの方がリーズナブルなものが多いと書きましたが、ゲータースタイルも楽しみたいという方にとってはどちらにしても単体でブーツ(あるいは沢歩き用のブーツなど)が必要になるので、それもウェーダーを選ぶ際頭に入れておくといいかもしれません。
さて、ブーツを選ぶときのポイントといえるのがソールのタイプです。あまりに釣りに行く場所と相性の悪いソールを選んでしまうとストレスで、と言うよりは恐怖で釣りにならないと言っていいぐらい大切で奥が深いところでもあり、自分なりのカスタムを施す人も多いソール。ひとまずメジャーなソールのタイプをご紹介します。
フェルトソール
一番一般的なのがフェルトソールで、滑りやすいヌルっとした岩が多い場所や滑りやすい地質に適したソールです。一般的である理由としてはやはり日本のフィールドと相性がよいのと、ソールの張り替えがそんなに難しくないので自分でやることができるのもポイント。しかし海外ではフェルトの染み込んだ水分に含まれる雑菌や寄生虫の拡散に繋がることを危惧し着用を禁止している国もあります。
ラジアルソール(ラバーソール)
次に通常の革靴などのようにラバーソールやラジアルソールと呼ばれるもの。基本的にグリップ力と耐久性が高く、擦り減るのが早いフェルトに比べると長持ちするイメージ。ヌルヌルとした足場には弱い面を除けば万能なソールだと思います。雪の残る道も歩きやすいし、渓流釣りではあまり多くありませんが護岸されたコンクリートや砂利道でも滑りにくいです。とくにビブラム社が製造するビブラムソールは定評があります。
スパイクソール
スパイクソールとはその名の通りスパイクが打ってあることでグリップ力を上げたソールの種類です。ラバー素材のソールにもともとスパイクがついているものや、あとから自分で別売りのスパイクを打つこともできるため、自分の好きなソールタイプをスパイクソール化することができます。
僕が使っているのはスパイクの代わりにアルミバーと呼ばれる金属のパーツを装着するタイプですが、大きく分けると同じ種類になるかと思います。磯場や溶岩のような表面をした川、ひじょうに滑りやすい標高の低い川などで活躍するタイプです。その反面移動でボートに乗るときなどにガリガリと甲板を傷つけてしまうなどのデメリットがあります。
僕の場合のソール選び
思っていたよりソールに種類もあり、ウェーダーもタイプや素材がさまざまなので意外とややこしいでしょう(笑)? 「じゃあ結局どれが一番いいんですか?」と思われるかもしれませんので、あくまでここ数年僕が使用している実例を紹介します。
僕はラバーソールとラバーにアルミバーをつけた2足のブーツを履き回していて、今のところそれで釣りができないような大きな問題には直面していません。前述した通り海外遠征を視野に入れた場合、国によってはフェルトが使用禁止の場合があるので、その辺も踏まえて僕はラバーソールを選択しています。
それに加え、釣行回数が多いので擦り減るのが早いフェルトだと毎シーズン自分で張り替えることになるため、それが面倒なのも理由の一つ。交換する古いソールを剥がすのは結構骨が折れるのです…。
しかし、正直ラバーソールが日本の渓流にベストな選択かと問われると一概にそうではなく、ヤマメなどが好む標高の低めの渓流は茶色いヌルっとした苔が多いためラバーソールではかなり気をつけて歩くこともしばしば…。その点フェルトソールはそういった川でも滑りにくい(滑らないわけではないけれど)ので国産のブーツの多くがフェルトソールなのも頷けます。
いかがでしたでしょうか? 最後にアドバイスしたいのが、なかなかお近くによい店がない方もいるかもしれませんが、できるだけブーツやウェーダーは手にとって、そしてショップのスタッフさんに相談して選ぶことをオススメします。
ネットで調べられる情報はあくまでネットの情報で、実際の体験をもとにした中身のある記事や情報(そう、この記事のように)はそう多くない気がします。そんな情報を頼りに通販でお買い物をするのはひじょうに気軽でスピーディーですが、フィールドに精通したスタッフのいるお店で実際に履いたり話を聞いて選ぶ方がやはり失敗が少ないのかなと思います。
レポーターREPORTER
栃木県在住。国内のトラウトフィッシングから海外の釣りまで、人生を豊かにするライフスタイルとしての釣りを日々模索し発信しているフィッシングピーターパン。PIKE STREET MARKETディレクター。ひと×コト×Sakana栃木PRアンバサダー。
サポートメーカー:Huerco、BIGFISH1983、Rマジックテスター。VARIVASフィールドモニター、Patagoniaプロセールスプログラム。
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