どーもっ! Connie(コニー)こと小西栄里子です!
唐突ですが「私とフライフィッシング」の関係は、誰かに語れるような特別な理由があったわけでもなく、ただ父の趣味のひとつだったフライフィッシングが、いつの間にか私だけでなく家族全員の趣味になったことから。おかげで、今ではフライメーカー様のもとでその普及活動に微力ながら携わせてもらうまでに至っているわけですが、間違いなく今の私の原動力となっているのは、高校生のころに釣った尺イワナとの出会いがあったからです。
あれから10年以上…。時が経つのは早いものですが、ついにまた尺イワナと出会えるチャンスが…。そんな5泊6日の夏キャンプを振り返りたいと思います。
フライフィッシングで尺イワナを釣りたい
冒頭でも触れましたが、私がフライフィッシングでいわゆる尺(約30.3㎝)を超えるイワナを釣ったのは高校生のころ。中学生くらいからマイロッドを持たせてもらい、父と一緒に入渓していました。まだそのころはキャスティングもままならず、管理釣り場とは違うネイティブの釣りに悪戦苦闘していました。魚のサイズは“運”ともいいますが、毎度のように数だけでなくサイズでも父との釣果に差が出るという結果は実力の差としかいえず、私もいつか「尺オーバーを釣って認められたい」という思いがひそかにありました。
いつも渓流釣りをするのは岐阜県飛騨高山地方の某水系。京都から遠征していたこともあり、そうかんたんに通える場所でもなかったので、毎年夏休みに訪れる数日が貴重なチャンスでした。
私たちがメインフィールドにしているところは、ひじょうに自然豊かな場所で、本流に流れ込む支流がいくつもあります。「今日はどの川に入ろうか」、まずはそこから作戦会議が始まります。そして、数ある川のなかで「ここに入れば大物が釣れる」という、釣り仲間の間でも有名な川があり、そこへ出向いて行ったときのことです。
(残念ながら現在は土砂崩れのため入渓できなくなってしまいました)
いわゆるイブニングの釣り。夕方、草木をかき分け川へ入り、そこから大きな堰堤(えんてい)のある場所まで釣り上がっていく予定です。イワナはとくに警戒心が強い魚のため、一度こちらの存在に気付かれ逃げてしまうと、その魚はもちろん、その付近にいる魚たちも釣れなくなってしまいます。ですので、川に下り立った瞬間から細心の注意が求められます。
まずは大きな岩の下にえぐれのあるポイントからスタート。明るいうちは岩のギリギリをねらわなければ魚は出てきてはくれません。先行者が釣ってしまったのか、ここは反応なし。しかし、引き続き小さい溜まりや岩陰のポイントも丁寧に撃っていくと、まずは1尾目をキャッチ。魚籠(ビク)の中に無事に魚が入って「よかった、今日はボウズじゃない」とホッとしたのでした。そして、陽が落ちる時間帯に差し掛かり、いよいよ堰堤下の大きな溜まり(プールのように深みのあるポイント)に到着です。
ここにいる魚は「掛かればデカい」と父に言われていたので念には念を。ティペット(先端の細いライン)がザラザラになっていないか、フライ(毛バリ)はちゃんと浮く状態かなど、入念にチェックしておきます。セッティングが終わるやいなや、待ってましたとばかりにライズが始まりました。虫がいつ飛び出すのかは、その日の天候や温度といった状況によって変わるので、当日にならなければ分からない現象。ラッキーなことに運よくライズのある日に当たりました。
すかさずねらってみると、数投目の流しでズシッ! 今までとは明らかに違う重みのある引きに緊張が走ります。ランディングはハラハラ、横で釣っていた父も焦って興奮気味です(笑)。大きい魚だとラインが切られてしまうこともあるので最後まで気が抜けません。バラさないよう慎重にやりとりをして、ようやくネットイン。暗くてその場では分かりませんでしたが、あとから測ってみると32cmの立派な尺上イワナでした。
「ついに尺オーバーが釣れた!」そのことはもちろん嬉しかったのですが、実はそれよりも、「ようやったな!」と父に褒められ、なんとなく釣り仲間の一員として認められたような気がしたことの方が嬉しく、そしてちょっと気恥しく感じたのを今でも覚えています。
当時は「釣りガール」なんてワードも流行っておらず、中高生だったということもあり、周りに釣りをする友達もいませんでした。そのうえ、なんとなく『人には言えない趣味』みたいな感覚もあり、正直渋々通っていた年もありました。だからもし、あのとき釣れていなかったら今もフライフィッシングを続けていたかどうか…。あの出会いがあったからこそ、改めてフライフィッシングの魅力に気付くことができ、「またいつかフライで尺イワナを釣りたい」という目標を持って、今日まで続けてこれたのだとも思います。まぁ、結果論ですが(笑)。
源流で「忍びの釣り」スタイルを取り戻す
その後も年に数回通ってはいましたが、その川に入れなくなってしまったこともあり、いわゆる「泣き尺」といわれるサイズばかり(これももちろん喜ぶべき釣果ではありますが)。なかなか『フライで尺イワナを釣る』という目標は、あと一歩のところで達成できずにいました。
そして今シーズン。(コロナの影響で)いつもより出だしは遅くなってしまいましたが、また夏のチャンスが巡ってきました。
4日間、いろんな川の様子を見に行って数年ぶりに入ってみた小さな谷。川幅こそ違いますが、大きな岩をよじ登って越えてみたり、岩陰に隠れてピンポイントのキャスティングを決めなければいけない感じは、あのころ通っていた川と同じ。なんとなく「得意のパターンかも」っていつになく自信が湧いてきました。
その予感が的中したのか、入渓後すぐのポイントでいきなり魚の反応があり、アワセきれませんでしたが感覚は掴めました。
どうやら釣り人がねらいやすい明るく開けたポイントにいる魚は、かなり警戒心が強く食いが浅い模様。でも大きめのフライに反応があるということはエサには飢えているのかも…。なんて想像しながら、大きな淵はもちろん、釣り人が見逃がしそうな小さい溜まりやちょっとした流れのある繊細なポイントも、身をかがめながら、まるで忍者のようにねらっていきます。するとこれが面白いくらいに釣れるのです!
魚が人間に気付いて逃げるか、魚に気付かれないよう近づいて本物の虫だと騙して食わせるか。ひとつひとつのポイントがゲームのようで、かなりエキサイティング! 魚が出ても合わない場面もあるので、そこは魚側の勝利ということで深追いせず、次のポイントに切り替えます。姉妹で交代しながら2時間程の釣行で23cmを頭に10尾以上のイワナやヤマメを釣ることができました。
ついに尺イワナ現る…!?
日中の源流釣行では、ねらったポイントにキャスティングが決まる確率も高く、サイズこそ出なかったものの数釣りを楽しめました。今思えばなんとなく「波に乗ってる感」がありました。
そんななか訪れた最終日の夕まずめ、ラストチャンス。普段は釣り人が多く、なかなか入ることができなかった川へタイミングよく入ることができたので、妹と別れて対岸をねらうことに。合流地点は次の大きな堰堤です。川の形状こそ違いますが、堰堤の下には少し流れのある深みがあり、テトラポットが半分沈んだその環境は、まさに魚が溜まりやすいポイント。いつかの光景を思い出しました。
釣り人が入りやすいオープンな川だけあって、開始直後はやはり魚の反応は渋め。流したフライに食いついても、食いが浅いのかかなり反応が速く、なかなかアワセが決まりません。結局1尾の魚もキャッチできないまま、合流地点の堰堤に辿り着いてしまいました。
日没の時間が迫るなか、「最後の最後でボウズかも…」と焦る気持ちを押さえつつ、今回大活躍のフライ、エルクヘア・カディス(=トビケラを模した毛バリ)をしっかりと乾かし、フロータント(=フライを浮かす薬剤)を付けます。魚に気付かれないよう一定の距離を取り、ひとまず岩陰に身を潜める。釣り場を荒らしてしまっては元も子もないので、一呼吸おいてラインのチェックをし、静かにライズの瞬間を待ちました。
まもなくライズが始まり、あとからやってきた妹(後から知るのですが、このとき既に2尾のイワナをキャッチしていた模様)とアイコンタクトをしてキャスティング開始。すると1投目、私の流したフライのわずかに隣でライズ。トラウトは捕食が下手と聞きますが、本当に食いそこないが多いのです。気を取り直して2投目。バシャッ! と勢いよく出たものの、一瞬乗って惜しくもフックアウト。バーブレスフックの宿命でしょうか…。
「これはやってしまったか…?」と思いながらもキャスティングを繰り返していると妹にヒット。先に釣られてしまった悔しさとさらなる焦りで余計にプレッシャーが。でも、魚が掛かったということは、そこに『食い気のある魚はいる』ということ。冷静に捉えてトライアゲイン。すると、ほぼダブルヒットの形で私にもヒットが。掛けた瞬間にグググッ! と重みが乗り、「おっ! これはいいサイズなんじゃ!?」と認識したとたんに緊張が走ります。バラさないよう慎重に慎重にランディングをして、無事にネットイン。思わず、妹に向かって震える手でネットを持ち上げガッツポーズをしてしまいました(笑)。
その後、まだ続くかもしれない貴重なライズタイムを止めないよう声は出さず、静かに再開しましたが、そうカンタンに後は続かず…。日没を迎え納竿となったのでした。
川を離れ、明るい場所で恐る恐る計測してみると、30.5cm。余裕で…、というわけにはいきませんでしたが、しっかり育った尺オーバーのイワナを再びキャッチすることができ感無量!! ここまでくるのに十数年と時間を費やしてしまったものの、あの日と同じようなシチュエーションで釣り上げたことに、嬉しさと感謝の気持ちで胸がいっぱいになりました。
BBQに花火!キャンプも楽しまなくっちゃ!
まだまだ残暑厳しいお盆休みの釣行ではありましたが、4日間みっちりと釣りを楽しみ、数もサイズも満足のいく最高の釣果で締めくくることができました。
そんな5泊6日の夏キャンプ、釣りを優先すると他のアクティビティを楽しむ時間がどうしても足りないんですよね(泣)。ですが今回は、釣り以外のこともしっかり楽しもうということで、BBQをしたり、星を観察したり、花火をしたりと夏の定番を満喫。総体的によい思い出となりました。
私にとってフライフィッシングは、いわゆる「どっぷりハマってしまった」というものではなく『昔から傍にあったもの』という感覚。情熱はメラメラとではなく、小さく燃え続ける焚火のような…といった感じでしょうか。
今回の内容は尺イワナにこだわっているように感じられるかもしれませんが、それはあくまでもきっかけと目標に過ぎず、釣れた魚のサイズだけが全てではありません。例えば自分が巻いたフライで釣れた1尾や新しい川に挑戦して釣れた1尾は、サイズなんて関係なく価値があることに間違いありません。そういったひとつひとつの出会いを大切にしながら、これからも趣味のひとつとしてフライフィッシングは私の傍にあり続けるのだと思います。
今回は週末釣行のススメ的な内容ではなく、個人的な夏の備忘録になってしまいましたが、このコラムをきっかけに、「フライフィッシングって面白そう」とか「渓流釣りやってみたいな」なんて、もしも思っていただけるならこの上なく嬉しいです。
レポーターREPORTER
京都府京都市在住
不動産会社に勤務する傍らハヤブサフィールドスタッフとしても活動中の週末アングラー。渓流でのフライフィッシングが一番の癒し。釣りだけでなく、キャンプやスノーボード、お笑い観賞にカラオケまで(笑)
とにかく楽しいことが大好きなアウトドアガール。
インスタグラム:
@fishingram_connie (URL: https://www.instagram.com/fishingram_connie/)