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以前から当シリーズでお伝えしている通り、「船釣りビギナーにおススメの釣りものは?」と聞かれれば、第1にライトタックアジ、その次にひとつテンヤマダイと答える。もちろん時期的要因もあるが、仮に「夏にチャレンジするのであれば」という枕詞が付くならば、間違いなくシロギスだろう。
“パールピンクの女王”なんて神々しい異名を持つシロギスは、手軽さゆえの奥深さがあり、人より数を釣るためには繊細かつテクニカルな一面もある。今回は、私自身も大好きなシロギスにフォーカスを当ててみたい。
仕掛は1本バリで手返しよく&トラブルレス!
市販の船シロギスの仕掛は2本バリが主流だが、個人的にビギナーの方には1本バリを推奨したい。2本バリだとエサを2つ付けなければならないし、とくに船下ねらいで潮が流れていないときやアカクラゲが多いときには、仕掛が絡まってタイムロスにも繋がるからだ。さらに、手元に注視して、絡んだ仕掛をほどく沈黙の数分間が「船酔い」を誘発する。
また、意図的にねらえば別だが、2本バリに一荷(いっか:複数のハリに2尾以上の魚が連なって釣れること)で釣れてくることは、1日の中でそう何回もない。そう考えれば1本バリで手返しよく、トラブルレスでチャレンジした方が、ビギナーの方々へのストレスも少ないだろう。
エサ持ち重視なら青イソメは頭付き!
食い渋ければ頭カット!
シロギス釣りでは、付けエサに青イソメ(エリアによってはジャリメも)を用いる。ビギナー入門に最適! と言っておきながら、虫エサのハードルは少し? かなり? 高いかもしれない。ただ、私の経験上、最初は「え、絶対ムリ!触れない!」と言っているビギナーも、1時間後には自分でエサ付けしている場面をよく目にする。ただ、なかには本当に生理的に無理な人もいるため、そのときは同行者にエサ付けをお願いしよう。
青イソメは、口からハリを入れてチョン掛けで装餌する。長さ4~5cmにカットし、ハリの軸に対して真っすぐ付けることが大事。頭を残すことでエサ持ちがよくなり、同じエサで何尾も釣ることができる。一方で食いが渋かったり、アタリはあるが掛からない状況下では、頭をカットして使用する。この辺は臨機応変に対応したい。
シロギスはエサを噛んで食べる魚ではなく、吸い込んで食べる魚。そう考えれば、真っすぐになっていた方が口に入りやすい。そして、口に入りやすければハリにも掛かりやすいという算段だ。
エサ交換のタイミングだが、仮に釣る度に青イソメが短くなっていっても、結果的に3cm程度の長さがあれば交換しなくてOK。新しいエサの方が鮮度がよく、エキスが出て釣れるように思えるが、シロギス釣りでのキモは「吸い込みやすさ」なのだ。
頭を付けた装餌であれば、よいときは同じエサで5尾以上釣れることもある。そして数を釣れば釣るほど、エサはフニャフニャ、テロンテロンになっていく。これが吸い込みやすさに繋がるのだ。私の経験上では、むしろエサを付け替えた直後はハリ掛かりしないことが多い印象も受ける。もしかしたら青イソメの身の張りが、吸い込みにくさに繋がっているのかもしれない。いずれにせよ、常にエサが真っすぐな状態に整えることは忘れずに。テロンテロンで真っすぐなエサは宝物(笑)!
シロギスの“乗り”でアタリが取れると快感&数も伸びる!
船下編
基本的な釣り方として、ビギナーの方は船下ねらいでOK。誘い方を音で表すならば「トントントントントン、スーッ」である。海底でオモリをソフトに5回ほど小突いた後、竿を少し持ち上げて聞き上げてみる。
底でオモリを小突く理由として、まずひとつはエサをユラユラさせて誘う。もうひとつオモリで海底を小突くということは、エサが常に海底ギリギリにあるということを意味する。シロギスは底上30cm以内を泳いでいるため、エサが海底から離れ過ぎるとアタリが出ない。
そして、小突きとセットで必ず覚えておきたいのが「聞き上げ」だ。必ず5回ほど小突いたら竿を聞き上げてみることが超重要だ。
余談だが、竿先に出る「プルルッ!」という小気味よいアタリは、エサを吐き出そうとしたときに出るシグナル。ビギナーの方は、このプルルッ! というアタリを取ればよいが、数釣りたい人は「竿を聞き上げた際の乗り」を取れると数も伸びやすくなるし、なにより快感!
小突いている最中、シロギスは美味しく青イソメを食べていて、このときに竿を聞き上げると「クッ」と竿先を抑え込まれる感触が伝わる。これがシロギスの“乗り”だ。プルッのアタリ、そして乗りのアタリ、いずれもアタリがあったら竿をスーッと2時の方向まで持ち上げてアワセを入れる。このとき、魚が掛かれば竿先がプルプルと断続的に震えるため、それを確認してから一定速度で巻き上げてくる。
アワセを入れた後、竿先が震えなければハリ掛かりしていないため、そのまますぐに竿を下げて仕掛を下ろし再び小突く。エサが残っていれば再びアタックしてくる可能性が高く、しばらくアタリがなければ回収してエサのチェックをしよう。
キャスト編
どうしても船下でアタリが遠いとき、キャストして広範囲を探ると吉と出ることが多々ある。キャストには若干のコツが必要なため、ビギナーの方は何回か練習してからがいいだろう。なお、誘い方は船下ねらい同様、「小突き+聞き上げ」で手前手前に探ってくる。
仕掛をアンダーキャストし、着底後、素早く糸フケを取ったら竿をスーッと持ち上げる。着底直後に食っていることも多いからだ。続いて、竿の角度を海面と水平状態まで下げてから小突きを開始。キャストの誘いを音で表すならば「トン、トン、トン、スーッ」である。
竿が海面と水平状態から25度、25度、25度の3回に分けてオモリでソフトに海底を小突いた後、90度まで竿を聞き上げる。このときに出る「クッ」という“乗り”でアタリを取る。聞き上げてアタリがなければ、リールを巻きながら竿を水平状態まで下げていき、再び3回に分けて、小突いてから聞き上げを繰り返す。
飲み込まれてなんぼ!マッハでハリを外して次投へ!
魚が掛かったら早めのリーリングでOK。オモリが海面に出たら巻くのをストップし、竿を立てるとちょうど手元にオモリがくる。オモリをつかんだら、自分の横の船ベリに竿を立て掛けて置き、続いてオモリを船ベリの下に置く。魚を外すのはここからだ。
シロギスはハリを飲まれてなんぼの魚。ハリを飲み込まれたときは魚をひっくり返し、頭の裏側の両エラブタに親指と人差し指を突っ込み、グッとつかんで固定する。利き手でハリスをつまんでクルクルしたり、キュッキュしながら強めに引っ張ると、スポッとハリが外れる。時に内臓ごと抜けてくることもあるがその辺はご愛嬌。とにかく素早くハリを外して次投のタイムロスを軽減し、手返しよく数を伸ばすことが大事だ。
テクニカルなのがまた楽しい!
当日の釣況やいかに?
今回の記事は、第4回のマダコ記事同様、埼玉・鹿浜橋の松陽丸さんでの模様だ。6月20日の実釣時には、まだシロギスの釣況が本調子ではなかった。
私は前述のキャストからの小突き&聞き上げで攻めたが反応はすこぶる鈍い。また、テンポよく誘うとアタリは出るが、ハリ掛かりしない状況が続いた。そして、結果として見出したヒットパターンは、3回小突いた後5秒ほどゼロテンションで待ち、その後に聞き上げると「クッ」とアタリが出るというもの。このパターンで連釣できた。
私はシロギス15尾を釣り上げ竿頭となったが、この日はかなりテクニカルなシロギス釣りであった気がする。15尾のうちハリを飲み込んでいた魚は2尾のみ。13尾が口にハリ掛かりしていた点からも、魚の活性が高くないことが見て取れた。しかし、この一筋縄ではいかないテクニカルな感じがめちゃくちゃ楽しかったのは言うまでもない!
その後、松陽丸では好調継続のマダコに引っ張られる形で、徐々にシロギスの釣況も上向いている。日によってはリレー船で、シロギストップ40尾~50尾の日も! マダコと合わせれば、お土産十分、いや十二分だろう。
夏に盛況を迎える東京湾のシロギス。暑さと熱中症対策を万全に旬のターゲットを満喫しよう。私も近々、シロギスリベンジを果たしたい! たくさん釣って、シロギスのしゃぶしゃぶ食べるんだもんね!
レポーターREPORTER
東京都出身
父親の影響で3歳から陸っぱり釣りを始め、小学4年生のときに船釣りに初挑戦。その日はハゼ釣り大会だったが、ひどい船酔いで釣りにならず。ただ、最初の一投で釣れた奇跡の1匹で「ブービー賞」に輝く。幼心に“もう一生船釣りはしない“と心に決めたが、それから10数年の時を経て、運命のイタズラか「船釣り専門誌」の編集者になる。それを機に船釣りの魅力にどっぷりハマる。現在は船釣りメディアから離れ、おでかけメディアの営業マンとして従事。仕事の合間を縫って月に1~2度は船に乗り、周りの”船釣り初挑戦者“を巻き込みながら、船釣りの魅力を1人でも多くの人に知ってもらうために奮闘中。
YouTube:ジローちゃんねる