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常々釣り用語は難しい…と感じる私スタッフD。釣りという専門性が高い趣味のため、道具の名称や専門用語が多く、また、欧米のスポーツフィッシングの流れから、ルアーフィッシングでは英語または和製英語も多い。私もかつてはそうであったが、釣りを始めたころは、雑誌やネットの「釣り用語辞典」を熟読し、なんとか趣味の幅を広げようと勤しんだものだ。
つい最近のできごとだが、若手社員に「釣りでわからないことや疑問に感じることある?」と聞いてみたところ、「いまいち“シャクル”って何なのかわかりづらいんですよね~」「どのくらい、どう動かしたらいいのか…」というモヤっとした返答。確かに……。
というわけで、普段頻繁に使用している「シャクル」とはなんだろう…と、改めて調べてみた。
まずは言葉の意味から動きを推測
いつもながら、言葉の意味を辞書で引いてみたところ、以下のような内容であった。
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しゃくる【決る・刳る】(サク(決)ルの転)
① 中がくぼむように刳(く)る。
② すくうように引き上げる。すくうように動かす。
③ そそのかす。おだてる。さくる【決る・刳る】
① 溝状に掘る。ほりうがつ。
② すくうようにして上げる。しゃくる。出典:新村出編(2018)『広辞苑』第7版 岩波書店.
”
ということは、スコップ(シャベル)で溝を掘るような動作。すなわち、すくい上げるような動作のことを言い、掘った土や砂利を「よいしょっ!」と大きく持ち上げる姿と、両手で竿を大きく持ち上げる姿が重なってくる。
ひょっとして「さびく」と同じ意味?
以前、「目指せ!擬似餌マスター 第1回」で、サビキのルーツを記事にしていただいたことがあるが、そのなかで「しゃびき」「さびき」という言葉が出てきた。
「さびく」という言葉が江戸時代にはすでに存在し、「さびき」の動詞ではないか? という説をあつかったのだが、この「さびく」という言葉、辞書にはなかなか出てこない…。
一般的には、仕掛をゆっくりと引っ張る(動かす)動作。仕掛を少しずつ手前に寄せたり、フワッと持ち上げたりと、自然な感じで魚を誘う行為だ。
どちらかというと、投げ釣りの誘いに見られるような、ややスローな動作をさすようだが、仕掛を引っ張る。竿をある程度大きく動かすことにはかわりがない。
英語では「Jerk(ジャーク)」
スポーツフィッシング、ルアーフィッシングでは、「Jerk(ジャーク)」という言葉が使われる。ジャークを辞書で引いてみると…、
”
Jerk(名詞)
引き, (ぎゅっとひねった)ひとひねり, (ぎくんと動いた)激動, 突然の動揺, 急停止.
Jerk(他動詞)
① 突然ぐいと引く, ぐんと動かす, ぎゅっとひねる, 急に投げる.
② がたんごとんと動く, ぐいと動く, (陸に上がった魚のように)ぴんぴんはねる.出典:河村重治郎編(1983)『新クラウン英和辞典』第4版 三省堂.
”
とある。
動作の大小は分からないが、言葉の意味からは比較的「力強く」「クイックリー」な動きが想像できる。ルアーフィッシングにおいて、特にエギングやジギングのように動作が激しく、キビキビとルアーを動かす必要がある釣りには、ジャークという言葉がうってつけのようだ。
ちなみに、「twitch(トゥイッチ)」という言葉もよく使われるが、こちらは、
”
① 急に引く, ぐいと引く.
② ぴくぴくさせる(する).出典:河村重治郎編(1983)『新クラウン英和辞典』第4版 三省堂.
”
とあり、ジャーク同様にクイックリーでありながら、動きとしては、やや小さいことが想像できる。
ということは、必然的にジャークは、ロッドを上下に大きく、また力強くあおって、ルアーを動かすことを言い、トゥイッチはロッドティップ(=竿先)を小さく動かし、小刻みに行うことだと言える。動かし方のリズムと程度によって、ジャークとトゥイッチは使い分けられているからだ。
結局のところ「シャクル」って?
ここまで見てきたことをかんたんに整理してみると、
「ジャーク」 大きく・力強く・クイックリー
「さびく」 スロー・引っ張る
といった具合(トゥイッチは割愛)で、「シャクル」と「ジャーク」はほぼ同義で使われていると推測できる。実際にエギングでは、両方の言葉が混在して使われている場面をよく見かけ、「どっちだ?」と困惑したこともあった。
というわけで、結局「シャクル」とは、『竿を上下に大きく力強く、そして素早く動かす動作』といったところだろうか。一方、「さびく」は『スローに引っ張る』ということで、シャクルやジャークとはやや異なる動作だといえそうだ。
ただ、あくまで個人的な見解であることをご了承いただけるとすれば、竿を上下に動かし、仕掛やルアーの動きで魚を誘うという意味では、どれもあまり大差がないように感じる…。ものの大小や速い遅いというスピード感も、主観での相対的なもの。当然、人によりその程度は異なるだろう。
実際、「シャクル」「ジャーク」「さびく」といった動詞は形容されて使用されることが多いようで、「大きくシャクル」「小刻みにシャクル」「スロージャーク」「ショートピッチジャーク」「ゆっくりさびく」「人が歩く程度の速さでさびく」など、さまざま。どれも主観に変わりはないが、要はその時々、シーンやシチュエーション、はたまた相手の釣りレベルや理解度に合わせて、その誘い方のキモ(=動作)が伝わりやすければ良いということだろうか。
今回、気になる釣り用語「シャクル」を少し調べてみたのだが、改めて厳密なニュアンスの違いを学ぶことができ納得。と同時に、言葉や理屈にこだわるよりも、実際に釣りをしてみた方が、その大小や程度の違いを肌で感じられる気もする。「このくらいの動かし方は○○だ!」と、あまり難しく考え過ぎず、自分のリズム、自分なりのロッドワークで、魚の誘い方を発見してみてはいかがだろうか?
ね、若手社員くん。
※本文は個人の見解によるものです。ご了承下さい。