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イシダイを始めコブダイにアオブダイ、スズメダイにフエフキダイ……。これらの魚がタイ科はなく、マダイやクロダイなどと同じ正真正銘のタイではない「あやかりダイ」であることはご存じのとおり。しかし、お魚に関して誤解されていることが、けっこう巷にあふれているのだ。そこで今回は少しでもお魚の誤解を解くべく、おせっかいな小ネタ集!
チヌを漢字表記すると「茅渟」ですが……
まずは釣りの代表的な魚であるクロダイ。関西ではチヌと呼ばれるが、よく耳にするのが「大阪湾はチヌがたくさんいるから、かつてチヌの海と呼ばれた」という間違い。チヌの海は「茅渟の海」と書いて、実は「茅渟の海に多い魚だからチヌ」というのが正解なのだ。「茅渟」という言葉の語源には諸説あり、そのひとつが神武天皇の皇兄「彦五(ひこいつ)瀬(せの)命(みこと)」が戦傷を受け、その血がこの海に流れた「血(ち)沼(ぬ)」に由来するというものだ。その後「茅渟の海」は和泉・淡路の両国の間の海(現在の大阪湾)の古名となったという。
ワカサギは氷の下にしかいない?
冬になると「どこそこの湖が氷結しワカサギ釣りが活況」というニュースが巷に流れる。釣りをしない人はワカサギというと氷結した湖での穴釣りというイメージしかないものだから、初秋になってワカサギ釣りに行くというと怪訝な顔をするのだ。「えっ? いまごろワカサギ?」って。釣りファンの皆さんならご存じのとおり。ワカサギは釣ろうと思えば年中釣れる魚なのだ。ただし湖を管理する漁業組合などによって、それぞれで釣りができる時期が決められている。そのだいたいが秋から翌年の春先であることが多く冬場がメインになっているだけなのだ。したがって湖面に氷が張っていなくても桟橋やボートから、あるいは岸からでもワカサギ釣りができるのである。
魚のエラってどこ?
お魚の頭のすぐ後ろ。パクパクッと閉じたり開いたりする部分。ここをエラ(鰓)だと思っている人、いませんか? 実はこれ「エラブタ(鰓蓋)」であってエラではない。エラはエラブタの内側、真っ赤な色をし多くのヒダヒダがある部分だ。そう魚など水中で生活する生物が水中の酸素を取り込んで呼吸するガス交換の器官なのである。
冬になるとメッキは死んでしまう?
ギンガメアジ、カスミアジ、ロウニンアジなどの南方系の体高があるアジ科の幼魚を釣り人はメッキと呼ぶ。いずれも黒潮に乗って南の海から本州の太平洋岸にやって来るわけだが「日本近海の冬の低水温には適合せず、その多くは死んでしまう死滅回遊魚である」というのは、大いなる誤解だ。本来「死滅回遊魚」というのは冬になると死んで海岸に大量に打ち上げられるハリセンボンの幼魚など、遊泳力に乏しい魚に対してでありメッキたちが冬に打ち上げられたという話はまず聞いたことがなく、遊泳力があるメッキは南北回遊をしている可能性もあるという。メッキ=死滅回遊というのは釣り人の勝手な思いこみなのだ。
カジキのようなマグロ?
マグロのようなカジキ?
「トローリングで巨大なカジキマグロが!」というのもテレビ番組などでよく耳にする。何が間違っているのか? カジキマグロなどという魚はいないのだ。マグロはサバ科の魚。マカジキ、バショウカジキ、メカジキなどはカジキ亜目のマカジキ科、メカジキ科に属する魚たちである。カジキもマグロも、ともに外洋を回遊する大型魚で釣りではトローリング、漁では延縄(はえなわ)で漁獲されることが多く、刺身や寿司ネタに向くため、料理屋さんなどが便宜上、分かりやすくカジキマグロと呼ぶようになった……ということなのだ。
いかにも笛を吹くような顔をした魚たち
最後はちょっとマニアックに。関西でタマミ、四国でタマメ、沖縄でタマンと呼ばれ、釣り人がフエフキダイだと思って狙っている魚、実は標準和名でハマフエフキという魚なのだ。フエフキダイという魚は別に存在し、ハマフエフキも同じフエフキダイ科の魚ではあるが、まったく別種なのである。同様に笛を吹くような感じで吻が突き出し、よく似たものにフエダイ科の魚たちがいる。釣り人としてなじみがあるのは鹿児島などでシブダイと呼ばれる標準和名フエダイだろう。いずれも顔付きや体型が似ているが、ひっくるめて「フエフキダイが釣れた!」などと決して言わないように!