From HEAT the WEB DIRECTOR 船酔いは恥ずかしくない!
釣り人の船酔い事情と対策例 【前編】

船酔い対策_text-photo岳原雅浩

ラリーカー

私の話で大変恐縮だが、若い頃はモータースポーツに必死になっていた時期があった。幼少期から「World Rally Championship(ワールドラリーチャンピオンシップ)」略して「WRC」と呼ばれる、世界の荒地や公道を凄まじい速さで駆け抜けて行く、いわゆる“ラリー”というモータースポーツに憧れ、大人になったらラリーカーを駆ってみたいという思いがあった。
免許を取った後、すぐさまその手の車を中古車で購入。さっそく大学の自動車部に入部・・・しようとしたが、たまたまタイミングが悪く入部できなかった。そこで、仕方なく地元のモータースポーツクラブに入門したところから、私の熱は上がっていった。
「いつかはラリー!」と思いながらも、急に素人が競技で走れるわけもないため、まずは練習を兼ねて「ダートトライアル(略して“ダートラ”)」と呼ばれる、ラフのクローズドコースをタイムアタックする競技にのめり込んだ。普段走る舗装された公道と違い、荒れたラフ路面は上下左右に激しく揺れ、運転も必死そのもの。揺れる運転席でステアリングにしがみつくようにして、車体を操るのだ。ドライビングテクニック向上のために始めたダートラであったのだが、これがなかなか面白く、お陰でラリーに参戦する機会を失ってしまった・・・。

ラリーカー

その代わりに、同じモータースポーツ仲間からの誘いで、ドライバーとしてではなく、ナビゲーター(「コ・ドライバー」ともいう)としてラリー車の助手席に乗らせていただいたことがある。ダートラ同様に競技中は激しく揺れる車内で、「コマ図」と呼ばれる地図でドライバーをゴールまで誘導し、電卓を叩いて距離や時間を計算する。面白い役どころではあったが、なかなかに難しかった。

(少々前置きが長くなってしまったが・・・)一時の趣味であったモータースポーツで気がついたことがある。それは、「私の運転はたいして上手くないこと(凡人レベル)・・・」と「乗りもの酔いに強いこと」である。
運転が上手くないことはさておき(笑)、乗りもの酔いに関しては、子供のころ自家用車に給油するガソリンの匂いでやられた程度で、あまり乗りもの酔いを経験したことがない。モータースポーツの最中も酔わなかったほどなので、よほど強いのだろうと気がついたのだった。

船釣りシーン

さてそれから10数年。釣りをしていると、同船者が「船酔い」の洗礼を受けているシーンに時折出くわす。乗りもの酔いに強い私は、正直「なんでそんなに酔うんだろう・・・?」と思っていたくらいで、所詮人ごとと気にも留めていなかった。しかし、以前にもコラムで書かせていただいたのだが、年齢を重ねる毎に少々船に弱くなってきている自分がいる。最近ではもっぱら、前日の食事と睡眠に気をつけるようになってきた次第だ。

そこで今回、「なぜ船酔いになるのか?」という医学的、科学的根拠とその解説以前に、いまさらではあるが「船酔いの実態」を知るべく、社内の釣り猛者たちにアンケートを取ってみることにした。当社は当然ながら一般的な会社ではない。少々世間とは異なった結果になるかもしれないが、それはご了承いただくとして、アンケートの結果を追ってみたい。釣り人の船酔い事情に、みなさん興味はありませんか・・・?

Q1.過去に「乗りもの酔い」したことがありますか?

遊具(メリーゴーランド)

まずは過去の経験を聞いてみたいと思い、こちらの質問をしてみた。船だけに限定しなければ、「何かしらで酔った経験の一つや二つあるのではないか?(お酒はのぞきます)」と思う反面、「釣り猛者たちは酔わない人が多いかも?」とも思う・・・。結果を見るまでは正直分からなかった。
回答の結果が下の表1である。普段から釣りを楽しむ猛者たちでも、約89%の人が過去に乗りもの酔いしたことがあるという事実。逆に約11%の人たちが一度も酔ったことがないという。その日の体調や乗りものの揺れの程度にもよるだろうが、大半の人は過去に酔ったことがあるようで、決して乗りもの酔いに強い人たちが集まっているというわけではないということが分かった。
またその内訳はというと、乗りもの酔いの1番は「船(44.4%)」。2番は「車(31.5%)」、3番は「遊具・アトラクション(11.1%)」と続く。やはり「船」の揺れはキツイのだろう。これはあくまで推測だが、車や電車で感じる「横揺れ」よりも、船特有の「縦揺れ」が影響しているのではないだろうか・・・?

Q2.過去に釣り船に乗って、「船酔い」したことがありますか?

船釣りシーン

次に、普段お世話になる「釣り船に乗った際」の状況を聞いてみた。Q1で過去に一度も酔ったことがない人(約11%)をのぞく内訳だ。
回答の結果が下の表2である。酔う人のなかで、波が高いときなど「時々酔う」が40.6%、基本的に酔わないが「過去に1~2度酔ったことがある」が50.0%、そして、残念ながら「毎回酔う」という可愛そうな人が9.4%という結果だ。この「時々酔う」「過去に1~2度酔ったことがある」を合計すると90.6%と、かなりの率になる。このことから、毎回酔うわけではないが、ある条件や何かしら突発的な状況の場合に船酔いが発生すると想像できる。当然、天候が悪く波が高いときの方が、凪(なぎ)のときよりも悪条件で酔いやすいわけだが、波が高くても酔うときと酔わないときがあり、個人差もあるから不思議だ。(そのあたりの条件やメカニズムについてはまたの機会に) また、毎回酔うという気の毒な人は1割に満たないが、酔わない屈強なタイプと率の上では同等のレベルととらえることもできる。性質は間逆ではあるものの、ある特殊な人たちなのかもしれない。

グラフ

と、ここまで乗りもの酔いの経験と船酔いの状況を見てみたのみだが、いかがだろうか? ひょっとすると公共機関での正式な調査(あるかどうか不明だが…)とは大きくずれた数値かもしれないが、ほとんどの人が船酔いするのだなぁ…という印象。釣り猛者たちであってもだ。ということは、船酔いは決して恥ずかしいことではなく、「ごく普通の症状」「生理現象と同等」なのだと思ってしまおう。たまたま運悪く船酔いしてしまっても、迷惑だなんて思わずに、素直に周囲に助けを求めるなり、無理せずリラックスした方が気も楽だ。

今回は現状が分かっただけで、何も解決になっていないが、文字数の具合もあるのでご勘弁を。後編では、釣り人たちの「船酔い対策」へのアンケート結果をご紹介。ぜひご覧ください。

船釣りシーン