目指せ!擬似餌マスター 第4回 和製ルアー「餌木」雑感
釣果アップには役立たないかもしれない?エギング未満のころ

磯竿とナイロンの時代

かつて山川で餌木製作の手法を取材した当時、現在のようなエギング専用ロッドなどはなく、陸っぱりで使用するのは3~4.5mの磯竿1.5~2号だった。ラインは当然ナイロンだ。「シーバスロッドがよいのでは?」という意見がちらほら提案されだした程度の時代だった。
ある日、鹿児島県串木野から渡船で甑島の磯に出てグレ釣りの合間に餌木を投げ、人生初“エギング”で300gほどのアオリイカを釣った。案内していただいた鹿児島市在住の師は、それこそ連発入れ乗り! 最大2kg近い大型を釣り上げて、鹿児島の離島パワーを目の当たりにしたのであった。

草垣群島とヒラマサ竿

ところが師匠曰く「草垣群島に行けば、こんなもんじゃない」という。草垣群島とは枕崎市の南西沖約90km、東シナ海に浮かぶ無人島群で、古くから大型の尾長グレが釣れると磯釣りファンの間では有名な釣り場だ。そんな草垣群島で釣れるアオリイカも特大。大きいものは4kgをオーバーするという。タックルもとんでもない。何と磯用ヒラマサ竿を使うというのだ。
当時、ヒラマサ竿といえばイシダイ竿に次ぐ剛竿。そのヒラマサ竿が根元からひん曲がるというから、何と凄まじい餌木釣りがあるものだとビックリしたものだ。いま思えば草垣群島で釣れる大型アオリイカは、いわゆる赤イカ系、レッドモンスターだったに違いない。

沖永良部島の6寸

山川で餌木製作を学んでから数年後、奄美大島よりさらに南の沖永良部島を取材で訪れたとき、ふらりと立ち寄った釣具店に無造作に並んでいた餌木の大きさにビックリした。それまで自作していた餌木は、すべて3.5寸。いまでいう3.5号だったが、そこにあった餌木は5.5~6寸。ボディーが20cm近い大きさだ。布巻きのダブルカンナで漁師さんが船から曳くタイプではないように見える。
現地の人がどういう使い方をするのかは聞きそびれたが、もし陸っぱりで、こんなジャンボ餌木を投げるなら「やはりヒラマサ竿でないと……」と草垣群島の話が脳裏をかすめたのであった。

沖永良部島で購入した6寸の布巻き餌木
上が沖永良部島で購入した6寸の布巻き餌木。背中は鹿児島では定番のグリーン、傘バリは2段になっている。
下は山川型の自作餌木3.5寸。大型の餌木には大型のアオリイカが……

簡単に釣れない時代へ

エギング釣果
かつてのように簡単にアオリイカが釣れなくなった現在。釣果云々よりも、どう釣るかプロセスを大切にするのが、今後エギングを楽しむ上で、いっそう大切になるのかもしれない

山川で学んで自作した餌木を初めて南紀の地磯に持ち込み第一投。そして何と1シャクリ目にドンッとキロクラスのアオリイカが乗ってしまったのには我ながら山川餌木の威力に驚いたし、翌日は中紀・由良でキスをねらう伝馬船を流しながら餌木をしゃくっていると500~600gが2ハイもゲットできてしまった。
それから10年もしないうちにショップにはカラフルかつ、さまざまなタイプの餌木がズラリと並ぶようになり、専用ロッドも登場、PEラインの普及と餌木釣りはエギングへと進化、現在に至る。一方でエギング人口の増加にともないアオリイカが簡単に釣れなくなったといわれて久しい……。よく釣れた時代の思い出話は、何の役にも立たないかもしれないが、エギングを楽しむうえでの何かのヒントになれば幸いだ。