ハリとイトがなければ始まらない!
「仕掛(け)」とは、辞書によると…。
2.目的のために巧みに工夫されたもの。
3.装置。からくり。
4.策略。たくらみ。
5.魚釣りで、ねらう魚に応じて、糸、ハリ、オモリ、ウキなどを仕組んだもの。
となっている。要は魚を釣り上げるために巧みに工夫された装置なのである。あらゆる魚釣りには仕掛が必要なのだ。 サオやリールだけあっても釣りはできない。仕掛があってこそ釣りは成立するのである。ルアーだって広い意味での仕掛だし、ジグヘッドリグとかフロートリグなどを訳せば「ジグヘッドを使った仕掛」「ウキ仕掛」なのだ。
仕掛に欠かせないものはハリとイトである。宮城県松島の伝統漁法である「数珠子(じゅずこ)釣り」のようにハリを使わずゴカイの塊を作ってハゼを食いつかせて釣り上げる方法もあるが、これは非常に希なパターンだ。やはり一般的にはハリとイトがなければ始まらない。ルアーだって本体にハリが付いているしイトを結ばなければ動かせないのだ。
そもそも、もっとも原始的な仕掛はハリとイトだけだったはずである。 釣りの起源は少なくとも約4万年前、旧石器時代で日本でも遺跡から骨角器の釣りバリが見つかっているのだ。ひょっとしたらイトもない時代は、たとえば細い竹の先にハリを直接取り付けただけの仕掛だったかもしれないが、ハリとイトという組み合わせが、もっともシンプルなものに違いない。
その後、人間の知恵でハリとイトだけでは不安定なため、石などで重量を加えることでオモリの概念が芽生え、さらに仕掛を浮かせて釣るためにウキが発明され、さらにはハリ数を増やしたりと、さまざまな工夫が生まれて現在のように多種多様なバリエーションになったのだ。
無数に近い仕掛の進化過程を体系的に説明するのは難しいが、ポピュラーな仕掛の基本的な特長や利点を解説したい。まずは超シンプルなものから。
実は近代的な釣りにもハリとイトだけの仕掛が使われているのだ。いわゆる「完全フカセ仕掛」と呼ばれているものがそう。たとえばイカダやカセからチヌをねらう「かかり釣り」では常套手段だし、磯でグレやチヌをねらう場合もウキやオモリを外してハリとイトだけで釣ることがある。また船からマダイをねらう釣りでもハリだけ付いた仕掛を潮に流し込んでいく方法がある。これら「完全フカセ仕掛」の最大の利点はハリに付いたエサを、もっとも自然な状態にできることである。
魚たちは自然界で水中を漂うエサを食っているが、仕掛に付けられたエサは魚たちにとっては不自然な動きをするものと感じられるのだ。かといって仕掛がなければ釣りは成立しないので、必要最低限のハリとイトだけというワケなのだ。釣れないときに「細いイトに小さいハリ」にすると効果的といわれるのも、よりエサが自然に流れるからだと考えられる。
オモリの登場が仕掛をパワーアップ
ただ自然界には水の流れがあり、風も吹く。ハリとイトだけでは、どうしてもエサを魚がいる場所まで届けることが難しいことが多いのだ。そこで登場するのがオモリである。
仕掛に重量を増すことで、速い流れの中で仕掛を安定させ、強い風が吹いても仕掛が吹き上げられないようにできる。また底にいる魚を釣るために仕掛を沈めたり、自分から遠い場所にいる魚を釣るために仕掛を投げたり。というようにオモリの役目は非常に幅広いのだ。
オモリの素材は鉛を中心に鉄、タングステンなどがあるが、仕掛に取り付ける方法では大きく3つに分けることができる。
まずはイトなどを挟んで取り付けるタイプ。カミツブシ、割シズ、ガン玉などと呼ばれているものがそうだ。続いてオモリに穴が開けてあり、その穴に仕掛イトなどを通して取り付けるタイプ。いわゆる中通しオモリと呼ばれているもので、ルアーフィッシングで使われるバレットシンカーもこのタイプ。
もうひとつがオモリにイトを結ぶための環(カン=輪・穴)が付いたもの。六角オモリなど上部に環がひとつだけ付いたもの(サビキで使うカゴオモリもこのタイプ)や、オモリの両側にサルカンが付いた環付きオモリと呼ばれているものがそうだ。
これら以外にもワーム内部に埋め込むタイプのネイルシンカー、ハリや餌木、イトに巻き付けて使用するイトオモリ、板オモリなど特殊なオモリがある。
これらオモリの中で釣り入門者にもっとも身近なのが環が付いたオモリで、このオモリを利用した仕掛でもっともポピュラーなのが胴突仕掛、ドウツキ仕掛と呼ばれているもの。
オモリが仕掛の最下部にあり、オモリが結ばれたイトの途中から何本かのハリを枝状に取り付けたものだ。
小アジやイワシを釣るサビキ仕掛から船釣りの仕掛まで幅広い。最大の利点はオモリが最下部にあることで仕掛全体がピンと張り、魚が食いついたアタリが分かりやすいこと。またハリ数が多い場合も同様の理由で、ハリ同士が水中で絡むのを防いでくれるのだ。
一方、オモリを仕掛の上部や途中に取り付ける場合もある。船釣りで胴突仕掛と並んでポピュラーなテンビン仕掛や投げ釣りのテンビン仕掛、ハリスの途中にガン玉を打つフカセ釣りの仕掛などもそうだ。利点はオモリから先の仕掛、ハリの部分までを長くすることで海中や海底でハリに刺したエサが自然な状態に近くなり、魚に違和感を与えにくく食いつきがよくなることだ。
オモリを仕掛に使用するうえでのキモは、釣り手の仕掛操作や感度を優先するか、魚の食いつきのよさを優先するかに尽きるのだ。オモリを重くすれば操作性、感度は向上するが魚の食いつきはわるくなるし、オモリを軽くすれば魚の食いはよくなるが仕掛の操作が難しくアタリも分かりにくい。初心者には難しい話かもしれないが、オモリ使いは仕掛を使ううえで非常に重要なのである。