「釣れないとき」こそ成長のチャンス!
春の実釣で見えた思考のアップデート

暖かな日差しが心地よい季節になると、釣り人のソワソワ感はピークに達する。スマホを開けば、YouTubeやInstagramには「春爆!」「爆釣!」なんて景気のいい文字と、丸々と太った魚たちの勇姿が次々と流れてくる。

そんな投稿を見せられた日には、もう仕事など手につかない。「よし、そろそろオレ様の季節が来たな。例の場所で、例の爆釣ルアーを投げれば…今年の春も大漁だぜ!!」と息巻いてはみたのだが……この時点では、気付いていなかったのだ。「過去の実績」にとらわれ過ぎていたことに。

過去の実績を信じて挑むも…反応なきフィールドの違和感

今回の舞台は、数年前によい思いをした「実績ポイント」だ。 当時は満潮のタイミングにさえ行けばアタリがあり、小1時間キャストすれば最低でも1尾は釣れる、私にとってはまさに「楽園」のような場所である。

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今回のフィールドで、過去に釣れたことがある写真があったので、実績として載せておく。その後クランクベイトをいろいろチューニングするなかで、あとに紹介するブレードチューニングまで辿り着く
(過去の釣果写真が出てくるってことは…ハイ、そういうことです…)

「……あれ? 静かすぎないか?」

潮は計算通り満潮のタイミングなので、魚たちも入ってきているハズ…と水面を覗き込んでみるが、肝心のエサとなるベイトフィッシュの気配がない。当然フィッシュイーターの気配もないし、ボイルの「ボ」の字もないのだ。

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岸沿いには熱帯魚らしき小魚はウロチョロしているが、ジモティーアングラーに聞いたところ「この子らはエサとして認識されていないようです。やっぱりボラとかミジュン(沖縄に分布するニシン科の魚)の群れが入ってこないと、食いが悪いですね」とのことだ

「いや…時合の問題でしょ。しばらく投げ続ければ状況は変わるでしょ!」と自分に言い聞かせ、ルアーをセットする。選んだのは、この場所で実績のあるチューンドクランクベイトだ。

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【今回のタックルデータ】
●ロッド:TRGR C666M改(トラギア) ●リール:’17アルテグラC3000(シマノ) ●ライン:PE2号 ●リーダー:ナイロン20lb

虚しく過ぎる時間…2時間の沈黙…

流れに対してアップキャストでアプローチし、最初はシャローモデルで表層をアップテンポで探る。そして次に、ディープモデルでボトムをナメるようにゆっくりと巻いてくる…。そのように周囲の状況を観察しながら、キャストを繰り返した。しかし、フィールドからの返事は一貫して「無」であった。

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写真の左奥が上流側で、右側に向かってゆっくりと流れている。すでに満潮を30分ほど過ぎていたのだが、下りの潮の流れもそれほど速くない…というか、ほぼ止まっているように見えた

30分が経過し、1時間が過ぎる…。そして気付けば2時間が経過。心はポッキリと折れかけていた。
(というか、1時間過ぎた時点で完全に折れていた…あとは惰性)

SNSであんなに釣れていた魚たちは、一体どこへ行ってしまったのか。 画面の中のキラキラした世界と、目の前の静まり返った現実のギャップに、目まいどころか吐き気を催しそうなるほど、ツライ…。

釣れない理由は明確だった?
ジモティーアングラーの見解

ふと横を見ると、少し離れたところで1人のアングラーが黙々とキャストを繰り返していた。ワラにもすがる思いで、声を掛けてみた。

「こんにちは。調子はどうですか? 釣れましたか?」

その方は苦笑いしながらも丁寧に応えてくれる。「いやぁ、全然ダメですね。アタリひとつありません。ベイトフィッシュが全く入ってきてないから、魚もヤル気がないんじゃないでしょうか(笑)」

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お話を聞いたジモティーアングラー。何でも、釣りに来ていることが奥様にバレるとマズイらしく、後ろ姿でもバレそうとのことだったので、モザイク処理をさせていただいた。世の旦那様方も、いろいろ大変のようで…

やはりそうか。自分だけが釣れていないわけではないことに少し安堵しつつも(ほとばしる小者感…!)、引き続き思い切って聞いてみた。

「YouTubeやインスタを見ると、みんなバンバン釣ってるじゃないですか。どうやったら、あんな風に釣れるようになるんですかね…?

その問いに、彼は一旦キャストを止め、穏やかな口調で答えてくれた。

「爆釣動画」の裏側にある現実
積み重ねた「釣れない時間」の価値

「あの人たちは…『釣行回数』が根本的に違うんだと思います。ほぼ毎日、仕事のようにフィールドに通っている人もいるかもしれません。そのなかで、たまたまハマった最高の瞬間を切り取って動画にしているんでしょうね」

なるほど、確かにそうだ。私は彼らの「結果」だけを見て、その裏にある膨大な「釣れない時間」を見落としていた。

「彼らはほぼ毎日通うことで『この風が吹いたらあっちから潮が流れる』とか、『この水温ならベイトはこの辺りに溜まる』といった、魚が食いやすい条件を肌感覚で理解しているんじゃないでしょうか。可能な限りフィールドに立つ機会を増やして、その日の正解を探し出す。その積み重ねが、あの爆釣動画になっているんだと思いますよ」

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ジモティーアングラー曰く「今日はだいぶ濁っている」とのこと。澄んでいるときは沖縄の海らしくもっと透明度があって、ベイトフィッシュが泳いでいるのもよく見えるという。ただ、ここ最近はそのベイトフィッシュをあまり見かけないそうだ

一般的な社会人にとって、毎日釣り場に通うのは至難の業だ。だが、彼が言いたいのは「毎日行け」ということではなく「現場の今の状況を、どれだけ観察できているか」ということなんだろう。

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足場は大きめの石が敷き詰められている状態で、潮が満ちてくると隙間にも魚が入り込んでくる。30cmオーバーのミーバイ(ハタ類)もいたりするらしく、場合によってはこういう場所も“穴場”となる

陥りがちな「過去の実績」という罠

さらに、彼は私のロッドに着いているルアーを見て、核心を突くアドバイスをくれた。

「それと、僕もそうだったんですが…『過去の実績ルアー』には、ちょっと注意が必要かもしれません」

え? 「実績ルアー=よく釣れるルアー」ではないのだろうか?

「魚はもちろん、フィールドは“生き物”です。水中の地形も変われば、四季の移り変わりも昔とは全然違うし、ベイトフィッシュの種類も前とは違う感じがします。魚がルアーにスレてきているというのもあるでしょう」

彼は自分のタックルボックスを見せてくれた。実績ルアーはもちろんあったが、その大半は最新のルアーばかりで占められていた。

「もちろん実績ルアーは釣れるから“実績”なんですが、あくまでも“過去の実績”です。ルアーメーカーは日々、今の厳しい状況でも魚に口を使わせるために研究を重ねて、新しいルアーを発売してくれます。
なので、今の季節の動きや、今の魚の好みに合わせた『最新の武器』を取り入れる柔軟さは、疑いつつも必要だとは思います。ただ、そのおかげで金銭的にはキビシイですけどね(笑)」

いや…実にもっともらしいというか、適格なアドバイスをくれるこのお方、一体何者!? もしかして爆釣動画をアップしている張本人!? 私も、曲がりなりにも釣り業界に関わってそれなりの年数になるが…ここまで理路整然と話をできるアングラー、絶対アマチュアではないと思うのだが…。

「今日はもう、潮時ですね。次はお互い釣れるといいですね。では~」

と、爽やかに笑いながら手を振ってフィールドをあとにした。いやいや…ヤバい、惚れそうだ。奥様にバレないことを祈る…。

釣れない時間が導く次の一手

SNSの釣果投稿に焦りを感じたり、昔の得意ルアーで結果が出ずに悩んだりすることはないだろうか(焦るというか…悩むというか…、正直、釣りの才能がなくて止めようと思ったこともある私…)?
もし“負のスパイラル”にハマりそうになったら、一度フィールドをじっくり眺めて、よく観察してみてほしい。そして、殻を破って「今までの自分」とは違う選択肢にトライしてみてほしい……というのが、今回の核心。

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今回は(今回“も”じゃないのか!?)釣れなかったが、物知りのジモティーアングラーから役立つ情報を得ることができたので、ヨシとする。アングラー同士での会話が改めて大事だと分かった釣行であった

ちなみに、かくいう私は彼との会話のあと、釣具店へと直行。最新ルアーの売り場で次の釣行で使えそうなモデルをチェックしてみた。…が、私の今月の財務状況では、最新ルアーの導入は厳しそうだ(汗)。
まだしばらくは、実績ルアーを投げる日々が続くのだろうか…(過去の実績にしがみつく、進歩のない私)。


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くどぅちゃん
プロフィール:くどぅちゃん
バイク雑誌→釣り雑誌の編集者を経て、現在はフリーランスのライター&編集者に。個人的な趣味としてもバイク&釣りを楽しんでいるが、完全にヘタの横好きで費用対効果がひじょうに悪いのが悩みドコロ…。