あの釣りこの釣り古今東西 No.2 ショアから青物“東高西低”
「サーフトローリング」という釣り

周囲を海に囲まれた我が国ニッポンは紛れもなく海釣り天国、多種多様な魚がねらえるが、同じ魚種をねらうにしても、さらに同じ釣りジャンルといえど、地方によって独特のカラーがあるのが、何より古くからニッポン人が釣りに親しんできた証拠。
「あの釣りこの釣り古今東西」の第2回は、砂浜などショアから擬似餌で青物をねらう釣りとして有名な「サーフトローリング」についてお届けしよう。

100年近く前の相模湾が発祥とされる釣り

関西の釣り人にはあまりなじみがない「サーフトローリング」と呼ばれる釣りは、相模湾に面し広大なサーフが続く神奈川県の西湘や湘南で100年近く前から伝わる「大縄釣り」という仕掛の先端に、牛や山羊の角を削って作られた「弓ヅノ」と呼ばれる擬似餌でワカシイナダ、ソウダガツオなど青物に加えスズキ、ヒラメを釣り始めたのが起源とされる。

その釣りが相模湾と同様に、広大なサーフが続く静岡県の駿河湾や遠州灘など東海地方にまで伝わるのに、それほど時間がかからなかったことは容易に想像できる。

近畿圏での先駆けは
熊野灘に面した七里御浜

大阪市に拠点を置く釣り雑誌社の編集部に勤めていた私が、この名を唯一耳にしたのが、三重県南部の七里御浜だった。熊野灘に面した広大な七里御浜で、この釣りが盛んになった時期は不明だが、約40年前には釣り情報として、このエリアの秋の釣りの定番だったと記憶してる。

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熊野灘に面した広大な七里御浜でサーフトローリングが近畿圏ではいち早く定着した(写真提供:土口泰明さん)

その七里御浜にサーフトローリング伝わり定着したのは、地理的にも東海地方に近く釣り人の交流があったのと、相模湾、駿河湾、遠州灘と同じく広大なサーフを擁していたからだろう。

投げ竿にジェット天秤
それが七里御浜でも

起源とされる「大縄釣り」のスタイルを私はまったく知らないが、100年近く前ということで投げ釣りが竿もリールも用いず、浜から手投げしていたことを考えれば、やはり「手で縄を引く」釣りだったのではないだろうか。

それが釣具の開発、進歩とともに投げ竿、投げ釣り用スピニングリールが用いられるようになり、その後、カゴ釣り用の磯竿などの使用を経て、現在では高性能のカーボン製のルアーロッドを使うことが多くなったようだ。

私が知る限り七里御浜の「サーフトローリング」は地元で「ソシ釣り」と呼ばれ、4mクラスの投げ竿、投げ釣り用大型スピニングリールナイロンの道糸(号数は記憶になく、おそらく2号程度のものの先に力糸、いまでいうリーダーを継ぎ足していたのではないかと思われる)を巻き、そこに投げ釣り用のジェット天秤(これも号数は記憶にないが15号ぐらいだろうか?)をセット。

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軽い弓ヅノを遠投するために利用されたのが投げ釣り用のジェット天秤。ちなみに、右の「ライトショットシンカー 立つ天秤 スマッシュ(ハヤブサ)」も弓ヅノを引くのに便利

その先のハリス(1ヒロほど?)に弓ヅノを結ぶ。この仕掛を浜から遠投して表層を引いてくるだけの釣りだ。このスタイルこそが、そのまま当時の相模湾のスタイルだったのかもしれない。

いまのトレンドは
マウスと呼ばれるフロート使用

近年(とはいっても、かなり以前からかもしれないが)、サーフトローリングの本場である相模湾エリアではジェット天秤の代わりにマウスと呼ばれる重く遠投が利き、海面でスプラッシュし魚にアピールできるフロートを使うことも多くなったようで、弓ヅノの代わりにワーム(ジグヘッド)という組み合わせも見られる。

そんなサーフトローリングを兵庫県は淡路島の洲本で取材したことがあった。12年ほど前の話だが、9月に入ったばかりのまだ残暑厳しい時期、早朝のいっときだけ地元の釣具店スタッフと、場所は海水浴場として有名な大浜海岸

タックルは5mクラスの遠投用磯ザオにPEライン1.2号、ナイロンリーダー5号1ヒロに遠投用マウス(フローティング)、フロロハリス5号1ヒロ弓ヅノといった組み合わせ。

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マウスと弓ヅノ。これがサーフトローリング現在の定番
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大浜海岸で使用したのは遠投用の磯竿。長いので弾力を利用すればマウスを遠投しやすい

この仕掛を遠投し着水したらすぐにリーリング開始。竿先と道糸が一直線にならないよう角度を付け(この角度がないとアタリがあったときに竿の弾力が生かせず食い込みが悪くフッキングしにくい)てタダ巻き。速度は海面でマウスが跳ねない程度だ。ルアーのポッパーのイメージだろうか?

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海面でスプラッシュするマウスに青物が引きつけられる
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リーリング速度は海面でマウスが跳ねない程度を意識しよう

アタリはダイレクトに手元に伝わることが多く即アワセ。ときにマウス後方で青物がバイトする瞬間に水しぶきが上がるのを確認できることもあり、なかなかエキサイティングな釣りだ。

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淡路島の大浜海岸でのサーフトローリングでツバスがヒットした!

ということでまだまだ“東高西低”の「サーフトローリング」ではあるが、近年はルアーファンの間で小さく軽い擬似餌を遠投できるということで全国的な広がりを見せつつある……ということを付け加えておこう。