バス釣りがさらに上手くなる!
立ち木だらけのポイントで役立つ「ピッチング」

ルアーを頭上から振り抜きポイントに投げ込む「オーバーヘッドキャスト」はダイナミックで、バス釣りを始めた人ならまず、「これがスタンダードなキャスティング」と思い描く姿ではないでしょうか。しかし、たとえば野池でオカッパリからバスをねらうケースでは、キャスティングにさまざまな制約を感じた方も少なくないと思います。
野池の周囲には立ち木などの障害物が多く、オーバーヘッドキャストが難しい場面も少なくありません。またオーバーヘッドキャストは遠くをねらうには適していますが、ハリの穴を通すような正確なポイントをねらうには少々不向きです。狭い野池であれば、距離を犠牲にしても正確なポイントをねらいたいと思うケースもあるでしょう。そんな場合に適したキャスティングが、「ピッチング」と呼ばれるキャスティング方法です。

今回はこのテクニックの習得方法を考えてみましょう。

立ち木だらけのポイントでも有効なキャスティング
「ピッチング」とは?

「ピッチング」はオーバーヘッドキャストとは異なり、ロッドの下からルアーを投げ込み、ルアーの自重を利用してポイントにキャストする方法です。
手順としては、まずロッドを寝かせて持ち、ルアーがリールのハンドルの位置にくるくらいのラインを出して、空いている手にルアーを持ちます。

01_写真(2) ピッチングにおける最初の構え
ちょうど腰のあたりくらいでロッドは水平に構え、同じくらいの高さでルアーを持ち、構えます

次にリールをフリーにし(ベイトリールのクラッチを切った状態、もしくは、スピニングリールのスプールを起こした状態)ラインを指で押さえたままルアーをリリースし、そのタイミングに合わせてロッドを立てます。すると、ルアーは振り子の原理で前に押し出され、ロッドの動きによってさらに前に進んでいきます。

02_写真(3) ピッチングのキャスト動作
ルアーを手から離し、自重で前に落とします。ルアーが真下に落ちないようにロッドを立て、ルアーの軌道をコントロールします

このタイミングでルアーの軌道が上方に向かないよう、最下点あたりでラインを抑えた指を外し、ラインを送り出しつつ、ルアーをねらったポイントに落とします。このキャスト方法であれば、周囲の障害物をあまり気にすることなく、自身のちょうど前方に難なくキャストを行うことができるわけです。
またルアーの軌道をコントロールしやすいため、オーバーヘッドキャストに比べより精度の高いポイントにキャストすることができます。

03_写真(4) ロッドの構え方 ロッドの先を下に向ける場合
グリップエンドを外側に向け、手首を中心にロッドコントロールするように構えます

この最初の構えで、よくバスプロの方などがロッドを下に向けたところで構えているのを動画サイトなどで見かけることがあります。こうするとロッドからルアーにかかる力が強くなり、ルアーを遠くに飛ばすことができます。
ただし、ロッドを下に向けるとルアーは最初から低い軌道を描いて飛んでいくため、足元に雑草などが多く茂っているとキャストすることができません。

ロッドを下に向けた姿勢、地面と平行に構えた姿勢の、どちらの構えからでもキャストができるのが理想ですが、まずはルアーが振り子の原理で飛んでいく感覚を習得する意味で「ロッドを地面と平行にして構える」方法からトライすることをおススメします。

使用するタックルについてですが、ロッドはあましなりが出ない硬めのものが行いやすいでしょう。また最初は、スピニングリールを使ってトライするのがおススメです。

ピッチング習得の第一歩
「まずは正面に構え、ロッドを立てるタイミングを計る!」

まずはキャスティングを感覚的に覚えましょう。あまり遠くをねらわず、3~4m先のターゲットをねらう練習をし、徐々に距離を伸ばしていきます。

一番のポイントとしてルアーの軌道が自分のまっすぐ前に向かうことを意識してください。構えるロッドの角度が少々傾くのは構いませんが、ロッドの先と片手に持ったルアーを結ぶ直線が、自分のまっすぐ前(=自分の身体の前・ねらいたい方向)を向いていることを意識します。
慣れてくれば違う方向に投げることもできますが、まずはまっすぐに前をねらえるようになりましょう。

04_写真(5) ピッチングの構え
ラインはちょうどルアーがリールのハンドルの位置にくるあたりの長さまで伸ばしておきます。ロッドの頂点とラインを結ぶ線が、ちょうど自分の真正面にまっすぐ伸びていることを意識しましょう

次にルアーをリリースするタイミング、およびロッドを立てるタイミングですが、ルアーがちょうど最下点を通過する寸前くらいを意識します。タイミングがうまく合うと、イイ感じでねらったポイントにルアーが飛んでいきます。ロッドを立てるのが速すぎるとルアーは上方を向いてしまい、あらぬ方向へ飛んでいってしまいます。逆に遅すぎると、ルアーにロッドの力が伝わらず、ねらったポイントよりもずっと手前の足下に近いところにポロっと落ちてしまいます。
ルアーが上向きに飛んでしまう現象は私も時々やらかしてしまうのですが、とくに軽めのワームを使った際に、ロッドを振るスピードと力加減が合わず発生してしまいがち…。これが意外にも上の方によく飛びます。そして立ち木に巻き付いたルアーは根掛かりよりも回収率が低く、ひじょうにいたたまれない気分になりますのでご注意を…(涙)。

フィールドで練習するのもいいですが、キャスティングが練習できる4~5m程度の広場やスペースがあれば、ルアーのかわりにシンカーのみで練習も可能です。フィールドに出掛ける前に、余裕を持ってキャスティング練習を行なってみるのもよいでしょう。

着水音を抑えるコツは、
「ルアーの軌道+余計な力を入れない!」

05_写真(6)

ルアーの軌道が少し上を向いただけで、着水音は大きくなります。わりに軽めのワームでもタイミングを誤れば結構大きめの音が出てしまい、結果的にバスを散らしてしまう確率も高くなります。
ベストなタイミングに合わせるのは難しいので、最初はねらうポイントから少し遠くに飛ばすことを意識しましょう。ポイントの少し先に着水させワームを引いて手前に入れれば、バスにプレッシャーを与えずにねらうポイントへ正確にルアーを持っていくことができます。
ただし極力着水音を抑えるキャスティングができれば、それだけいい釣果につながることは間違いありません。

一方で、ロングキャストで着水音を抑えるのはまず不可能ですが、自身のすぐ近くをねらうようなキャスティングであれば、テクニック次第で着水音を極力抑えてキャストすることができます。
ポイントはルアーが飛んでいく際に、いかにラインのリリースをうまくコントロールし、水面に波紋を出さずにルアーを落とすことができるか、ということです。低い軌道でルアーを飛ばすことができれば、ルアーは水面に「ボチャン!」と音を立てて落ちていくのを防ぐことができます。

また低い軌道を意識するのと同時に、あまり遠くに飛ばそうとせず自重でルアーが飛んでいくことを強く意識することも効果的です。遠くに飛ばそうとするとロッドを立てる時点でルアーに余計な力がかかりますが、変に遠くに飛ばそうとせず極力ルアーにかかる力を抑えれば、着水をコントロールしやすくなります。

06_写真(7) 着水音を抑える秘訣:ルアーではなくリード部を持つ
ルアーの持ち方としては「手のひらの上に載せる」「リーダー(ルアーに近いライン箇所)部分を持つ」という2種類があり、自分のやりやすい方法で行えば問題ありません。ただし着水音を抑えるには後者がおススメです。リーダーを持った状態から始めると、ロッドからルアーに余計な力が入れにくいので、着水をコントロールしやすくなります

着水音を抑えるテクニックは難しく、実は私もそれほど完璧に成功したことはありません(笑)。しかしうまくキャスティングできたときには、着水してすぐにパクっ! とバスが食いついてきたり…それはもう快感すら覚えるものがあります。
ある程度飛距離はあきらめなければなりませんが、初めてでもポイントまで3~4mくらいの距離は可能ですので、練習して徐々にテクニックと飛距離を上げていくようにしましょう。

足場の高さにも気を付けよう!

着水音のコントロールにおいては、キャストを行う場所にも注意しましょう。写真のように水面と自分が立っている地面に高低差がある場合は、平地と同じようにキャストを行うと、いくらうまくコントロールしても着水する際に音が出てしまいます。

07_ 写真(8) 足場の高さに注意
この足場は水面から1m程度の高さ。ちょうど足場の際に葦も生えて絶好のポイントなので、できるだけ着水音を出したくないところ。ちょっと前かがみの姿勢になってキャストをおこなうのも1つのコツです

原因は、自分の立っている位置が水面より1m以上も高い位置にあること。この位置でルアーが最下点を通過するときには水面から1m程度の差があることになりますので、そのギャップ分に対してのコントロールはできず、ルアーが落ちた際に着水音を出してしまうことになります。この場合は、最初のロッドコントロールを高低差に合わせる必要があります。

具体的には最初にロッドを水面に向けた下向きの構えを取り、ロッドを立てる際に地面と平行になる位置くらいまでとするような感じです。もちろん水面と地面の高低差によりロッドの傾きはそれぞれ変える必要がありますが、高低差があり過ぎるとそもそも着水音を抑えること自体がかなり難しくなるでしょう。

08_ 写真(9)

タイミングの取り方など高い精度が要求されるだけに、最初は習得が難しく見える「ピッチング」テクニックですが、できるようになるとバス釣り攻略のバリエーションは広がり、魚をねらえるポイントも増えるのは確実です。まずは「まっすぐ前に投げられること」「ルアーが上向きに飛ばないこと」に慣れ、それからできることを徐々に習得していくといいでしょう。
また、ピッチングに「これ」といったやり方は存在せず、人によってさまざまなテクニックが開発されています。なかには手首の使い方で「えっ、ピッチングでこれだけ飛距離を稼げるの?」などといった驚くようなテクニックを駆使されている方もいるようです。 基本的なテクニックを押さえたら、自分が「こうしたい」というポイントを整理し研究していくことで、よりバス釣り上達の楽しさを味わえると思いますよ。


釣り・アウトドア好きな一般ライターさんを強力募集中!!
詳しくはコチラ!


レポーターREPORTER

黒野 でみを
プロフィール:黒野 でみを
40歳で会社員からライターに転身、50歳で東京より実家の広島に戻ってきた、マルチジャンルに挑戦し続ける「戦う」執筆家。
広島、とくに実家の東広島はブラックバス釣りでは「野池天国」と呼ばれる場所。マナーを守って楽しめる釣りを、HEATの執筆を通して追究していきたいと考えている。