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みなさんも知っている通りイシダイは磯釣りの王様ともいわれていて、本格的にねらおうとすると釣り場も限られ装備やエサもかなりのお金がかかってしまいます。しかしながら道具やエサにお金を費やしていざ沖磯に出向いても3kg、4kgを超えるような大物にはベテラン釣り師といえども毎回巡り合えるものではありません。
そんな石物ですが、最初から高望みしなければ、堤防釣りや小磯からでも比較的手軽な装備でねらうことができますから、これから晩秋にかけてトライしてみる価値が十分にあると考えています。
繰り返しになりますが、ここで前提となるのはいきなり3kg、4kgといった大物をねらうのではなく、目安として500g~1kgのお手頃サイズに絞り込んで、仲間と楽しんでみては? というオススメです。
「石物」と呼ばれる魚?
ところで釣りのターゲットはそのグループによっていろいろな呼び方があります。
たとえば「青物」というとアジやイワシといった小魚からブリやヒラマサといった大型魚までいろいろな魚が含まれます。ほかにもメジナやクロメジナといった磯魚を「上物」、カサゴやアカハタなどが含まれる「根魚」などなどいろいろなグループがあることはみなさんもよくご存じの通りです。そのなかで「石物」というのはイシダイとイシガキダイを指しています。
イシダイは大型になると体重5kg 体長も65cmを超えるサイズになりますが、イシガキダイは大きくなっても30~40cm程度。離島など暖かい地域では、イシガキダイのなかにも体重8kg、体長も80cmを超えるようなサイズも生息しており、クチジロと呼ばれています。
イシダイのシーズンは3月下旬から11月下旬にかけてで、暖かい地域に行くほどねらえるシーズンは長くなります。
一方イシガキダイはイシダイよりもやや高い水温を好んでいます。そのため釣り期は5月上旬から10月下旬がねらい目になります。
本格的にイシダイをねらう釣り師にとってイシガキダイはゲストであり、なかには釣れるとがっかりしてしまう方もいます。また大型のイシダイをねらっているとイシガキダイがエサを横取りしてしまい、釣りバリに刺したエサがすぐに取られてしまうため邪魔者というイメージを抱いているイシダイ釣り師も多く見られます。
数釣りがカンタン!
食味も抜群のイシガキダイ
ところがこのイシガキダイ、抜群の食味を持っています。身質や味はイシダイに近い感じですが、産卵期が秋(イシダイは春)ということもあって晩春になるとイシダイよりも脂が乗っていて、味も濃厚でありながらクセが少ないため、(私は)病みつきになってしまいました。
また、もうひとつ付け加えさせてもらうなら(調査したわけではありませんが)、ここ数年海水温が上昇傾向ということもあってなのか、一昔前よりもイシガキダイの個体数が増えていてかんたんに数釣りができるようになってきたのでは? とも感じます。
暖かい季節にメジナねらいなどでウキ釣りをしようと思っても、エサ取りが多すぎてオキアミを用いた釣りでは話にならないくらいの状況が多々あります。
そんなわけで、今回はイシガキダイと小型のイシダイを極力新たに高価な道具を購入せず手軽にねらうための装備と知識について、(私なりの方法ですが)紹介しようといった具合です。
なお、このジャンルについては以下「ライト石物」と表記させていただきます。
まずは手持ちのタックルでトライしてみよう!
装備を新たにそろえようとすると予算が嵩みハードルが高くなってしまいますから、まずはお手持ちのタックルでトライしてみましょう。
メジナやクロダイをねらう磯竿があればリールもそのままで結構です。また堤防などからカゴ釣りをされる方は、カゴ釣りタックルそのままがこの釣りには好適。そのほか、海上釣堀用のタックルは大変使いやすくオススメです。
また、投げ釣りのタックル、シーバスのタックルでも可能ですが、足下にテトラポッドや岩などの障害物がある釣り場では短い竿の場合注意が必要です。少なくとも4m以上の長さがあれば、ランディングの際のトラブルは軽減できるでしょう。
個人的な意見なのですが、穂先が折れてしまったような磯竿があれば、その部分を綺麗にカットして適合するトップガイドを装着することで代用が可能です。しかも、竿先が短くなっているので破損の心配が少ないうえ、よりラインの出がスムーズになり大変使いやすいのです。
ライト石物!釣り方の奥義
ポイントの見極め方
小型のイシダイやイシガキダイは渡船を利用して上がる荒磯であれば、ほとんどの釣り座がポイントとなります。しかし堤防や小磯でも、場所を選べば十分にねらうことができます。
その条件となるのが、
- (1)足下からやや水深がある場所で、5~6m以上の水深がある
- (2)釣り場が外洋に面していて、海底が岩やゴロタで起伏があること。テトラポッドなどの際もねらい目
- (3)沖から潮が入ってくる場所で、潮通しがよく透明度が高いこと
といったものです。
エサはお手軽に
石物の釣りで出費が大きいものの筆頭に挙げられるのがエサです。サザエやヤドカリ(鬼ヤドカリ)などは1日分の目安として1万円程度かかることがあります。
ライト石物においてもサザエはとても有効ですが、小型ねらいであるため殻から取り出したサザエは2つに切って使う程度でOK。エサ代も随分節約できます。ただしサザエを持参するとなると直前に入手する必要があり、ハンマーやナイフ、まな板など装備が多くなるためハードルも上がってしまいます…。
そこで、スーパーの鮮魚コーナーで販売されている冷凍のアサリ、イカ、タコの切り身、またカットしてあるワタリガニや赤エビなどを代用すれば、十分にエサとして活用することができます。
魚の活性が高い場合には、これらのエサはすぐにエサ取りに取られてなくなってしまうことも多いのですが、そんなときには粗塩を持参してエサバケットの中でエサに振りかけ、塩締めにすると格段にエサの持ちが向上するのでオススメです。
また、使用するオモリを重くして海底まで早く落とし、素早く糸フケを取るなどの工夫をすれば、仕掛が沈む途中に攻撃してくるフグなどのエサ取りをうまくかわすことができ、同様にエサの持ちがよくなります。
釣り方のコツは足下ねらい?
釣り方のコツとしては「ねらいは足下に集中する」こと。仕掛にエサを装着するとなんとなく遠くに投げることで余計に釣れるような気がしますが、まずは自分が立っている足下に仕掛を下ろしてみましょう。
1mほども段差があって潮がぶつかっているようであれば、効率よく釣ることができます。というのも、投げることにより海底の起伏や根の周辺をねらうことが可能にはなりますが、投げることで仕掛との距離が長くなる分、根掛かりのリスクが高くなるのです。ライトな仕掛であるため潮によって仕掛が流され、海底の障害物に引っ掛かってしまう可能性が高くなります。
足下ねらいの場合、最初からすぐに石物のアタリがくることは稀です。エサ取りのアタリがあればしめたもので、しつこく待たずに新しいエサに付け替えて積極的に手返しを続けます。
エサ取りの摂餌音(せつじおん:エサを食べるときの音)と彼らが食い散らかしたサシエの残骸は時間とともに周囲に拡散し、やがて石物が集まってきます。
石物が食うと竿先を叩く感じの強いアタリがきます。
チョンチョンと叩いているときに早アワセしても、歯がとても硬い石物はハリをはじいてしまうためなかなかフッキングしません。従ってこのチョンチョンのあとに竿にズッシリと重みが乗ったときに竿を立てると、うまくハリ掛かりさせることができます。
いかがでしたでしょうか? 専用の道具で沖の荒磯に上がらずとも手軽にねらえる「ライト石物」釣り。まずは身近な堤防で楽しんでみてはいかがでしょうか?
これからも随時、いろいろな話題をお伝えしたいと思います。
レポーターREPORTER
1960年生まれ、東京都出身
北里大学水産学部(現・海洋生命科学部)を卒業後、大手釣りエサメーカーに入社し研究開発担当として数多くの新製品を手掛けた経歴を持つ。
定年退職後の現在は、「フィッシング彩」代表としてメジナ、クロダイ用の立ちウキ「彩ウキ」を製造・販売するほか、釣り関係の新聞・月刊誌などの執筆、大学や高校での講師としても活躍。代表著書に「釣りエサのひみつ(つり人社)」がある。
趣味はもちろん釣りだが、写真撮影、魚の組織標本作成、釣りに関連したアニメーション作成など多方面にわたる。さまざまな活動を通じて、ハードルの高い釣りのとっつきにくさやその先入観を拭い、できるだけ手軽に楽しんでもらうキッカケづくりができればと考えている。