【体験記】釣魚で寿司を握ろう!
プロの職人に教わる寿司教室

『釣魚料理』

唐突ですが、この言葉からイメージする料理はどんなものでしょうか。この上ない新鮮さを活かしたプリプリの刺身? 新鮮だからこそむしろ火を入れた塩焼き、煮魚? 「いやいや、どっちにしたって数日熟成させて旨みを増幅させてからだよ」という熟成派の方も多いかもしれないですね。
ところが、魚に詳しくなじみも深い、もちろん釣った魚は自身でさばいて料理もするアングラーでも、「寿司」とくに握り寿司となると、途端にハードルが上がる方も少なくないのでは? 実は私自身もその1人です…。

今回、神奈川県藤沢市に「プロの寿司職人が握り寿司を教えてくれる店がある」と聞いたので、アングラーの友人と喜び勇んで行ってきました。そんな実体験の模様をレポートしましょう。

握り寿司を教えてくれるそのお店は?

01_ 大見出し①

その店は、藤沢駅から小田急江ノ島線でひとつ目、藤沢本町が最寄り駅の「さつまや本店」さん。創業70年近い老舗で、親しみやすい雰囲気とお手頃なお値段が嬉しい当店は、気後れせずに訪れやすい寿司屋さんを目指して営業しているそうです。
教室は、そのさつまやで日々寿司を握る板長が、豊かな経験に基づく豊富な知識と確かな技術を惜しみなく教えてくれるものでした。

※お店、寿司教室の詳細はこちらをご参照ください
旧東海道藤沢宿 すしとかごしまの味処 さつまや本店

さつまや本店

住所:〒251-0052 神奈川県藤沢市藤沢1-3-6
TEL:0466-23-2487
HP:http://www.satsumayahonten.com/

まずは下準備から

02_ イサキ 処理前

教室は魚をおろすところから始まります。この日は下処理済みのイサキを用意してくれていました。
どの工程でも、「これはこうだからこうする」「これがこうなるのはこういう理由」と一つ一つの作業を受講者目線で実にわかりやすく、かつ「まず私がやってみますから、よく見ていてください」実技のお手本を見せてくれるところからスタートしました。

何度もやってきた魚の3枚おろしや皮引きですが、目の前で説明を受けながらプロの理論と技術を学ぶって、そうそうある機会ではありません。質問も随時受けてくれて、この日は「あの魚はあんな風に皮を引きますけど?」「ああ、それはね…」というやり取りから、長年見様見真似の我流でやってきた作業が納得に至るなど、それだけでも有意義な時間だったと思います。

03_ イサキ 3枚おろし①
04_ 3枚おろし 腹骨処理
05_ イサキ 3枚おろし身
腹骨を処理し、3枚おろしにしたイサキの身

この工程で難しかったのは「切りつけ」。軍艦巻きと握り用に身を切りつけたのですが、当然魚の身は一定の大きさ、太さ、長さではないので、まず握り用に長さ、大きさをきちんとそろえることがなかなかできません。出来上がりがイメージできなくて、作業途中で板長から「これくらいの角度で刃をあてて」「身の置き方はこれくらいの角度で」とアドバイスをもらうような始末でした。
こういうことは、教わったことをしっかりと何回も復習して身につけるしかないですね。

06_ イサキ切りつけ
07_ イサキ 切りつけ後身
長さ、大きさを握り用にそろえた(切りつけ)た、イサキの身

いよいよ寿司を握る!

この日用意されていた寿司ダネは、前述のイサキ以外にきゅうり、玉子焼き、イクラ、赤エビ、ホタテ、マグロのすき身。寿司飯はお店で使用しているものをあらかじめ用意してくれていました。
きゅうりと玉子焼きは巻物。海苔、寿司飯、寿司ダネをどこにどう置いたら作業がしやすく出来上がりがきれいになるか。イクラとマグロのすき身、イサキでつくった軍艦巻きでは寿司飯の握り方、海苔の巻き方、タネをどう盛れば美味しそうに見えるか。握りではタネをのせた寿司飯をどうやって握るのか、握ったときの出来上がりからなぜ身の切りつけをそうしたのか。さまざまなことを、解説と実技の双方を交えながら、順を追って講義が進んでいきました。

08_ 海苔巻き
09_ 海苔巻き 切りつけ
10_ 海苔巻き 切りつけ②
12_ 軍艦巻き 海苔巻き方②
13_ 軍艦巻き 海苔巻き方③
11_ 軍艦巻き 海苔巻き方

 

なんとか一通り終えると、そこまででなんと1時間半が経過。お手本の次にド素人の私たちが作業するので、それだけでも通常の2倍以上の時間が掛かるとはいえ、そんなに時間が掛かっていたとは…。集中していたせいでかなり疲れていることにも気づきます。
寿司は切った魚をご飯にのせただけではなく、本当に繊細な作業、手間暇のかかる料理であることをまさに身をもって知りました。

意外に難しかった「盛り込み」
いかに美味しそうにきれいに見せるか

14_ 皿盛り込み完成(板長)

最後に「盛り込み(盛り付け)ですが、これがまた難しい…。配置、彩り、何をメインに見せるか、寿司をすべて盛り込んだあとの形です。お手本として友人の握った寿司を盛り込んだ板長の皿は、思わず「きれい」「おいしそう」という言葉がでました。
私は「自分でやってみる」とチャレンジしましたが、まず絵が浮かびません。「う~ん…」と唸りつつも、「お、なんとかできそうか…?」というところまできたら、なんと寿司が皿にのり切らず最初からやり直し…。板長は「おかしいねえ? 私は全部のせられましたよ~?」と嬉しそう(笑)。ここで躓く(つまづく)受講者が多いのでしょうか(汗)。
再度「う~ん…」と唸りながら、なんとか盛り込みを終え教室を終了しました。

15_ 盛り込み
16_ 盛り込み (2)
板長はいともカンタンに手早く盛り込んでいきました

自分で握った寿司はどんなものだろうと、その場で食べたくなりましたが、以前は行っていた店内での試食は現在中止しているとのこと。パックに詰めなおして持ち帰り、家で3回目の盛り込みをし(さすがにすんなりできた気がします)、一味も二味も違う晩酌のつまみを楽しみました。

17_ 盛り込み(山田帰宅後)
私が帰宅後に改めて盛り込んだお皿。どうですか?

 

子どものころから大好きだった「寿司」。でも握り寿司は家庭料理じゃないし一般的には高価な外食、ましてそれを家族でそろってとなると、年に数回あればいい方というイベントでした。そんな寿司を「おお、自分にも寿司が握れた…」というのがなんだか不思議で、何にせよ「世界が広がるというのはやはりいいことだなあ」と、少し感動したのでした。

18_ タイトルカバー候補

教室には「近隣の主婦の方々」「魚をおろしたことはないけど寿司は好き」「料理が大好き」「ご家族が魚嫌いだけど自分は魚が大好き」「子どももそろってご家族みんなで」などなど、さまざまなプロフィールの方が気軽に参加しているそうです。寿司を握れるようなると、釣行時はいつも渋い表情のご家族が「お寿司が食べたい、次はいつ釣りに行くの?」なんて、「しめしめ…」な状況も期待できるかもしれませんね(笑)。

 

レポーターREPORTER

山田 一司
プロフィール:山田 一司
神奈川県茅ヶ崎市在住
相模湾をホームに、ショア、オフショアのルアー、エサ、小物から大物までの釣りを年中楽しみながら、未知の世界にも挑戦中。釣った魚でおいしく飲むお酒が大好き。音楽、写真も大好きでアウトドア、インドアともにアクティブに楽しむサラリーマンアングラー。