キャッチ&イート!
いただく命を無駄にしない食べ方

子どもから大人まで楽しめるアクティビティであり、趣味として楽しまれる方も多い釣りは、生き物(魚)の命を対象にしたものであること。このことは、多くの方が理解されていることかと思われます。「釣った魚の命に感謝して、できる限り無駄を出さずに食べきる」よく耳にするこの言葉ですが、私も釣った以上はその命に感謝し、ありがたくいただくように心に留めています。

さて、釣りでは必ずしもねらった魚ばかりが釣れるわけではなく、ときには意図しないサイズやゲストが釣れることもあります。食材として具体的にどのような活かし方、食べ方ができるのか、私なりの釣魚料理からいくつかご紹介します。

美味しい『食べられないところ』

01_ スープ

世間一般に、食べられない部位の代表格といえば。低温でじっくりと揚げた骨せんべいは、この部位の食べ方としてアングラーにはおなじみですね。
揚げても食べられないほど硬い骨は、アラと一緒にスープをとって、潮汁やみそ汁を楽しむ方も多いでしょう。潮汁、みそ汁…。そう、やっぱり和風が多いですよね。でも、もちろん洋でもイケるんです
バターで炒めた野菜やきのこに魚からとったスープを加えて、火が通ったらフードプロセッサーへ。鍋に移したら牛乳や生クリームでのばして味を調えれば、驚くほど本格的なスープのできあがりです。暑い夏は冷製も美味しいですよ。私はじゃがいもとたまねぎ、マッシュルームで作るのが好みです。

骨やアラは、素焼きして下処理を済ませておけば冷凍保存できますし、もちろんスープの冷凍もできるので、この食べ方は本当に重宝しています。

スープをとった出汁ガラもおいしい!

02_ 自家製そぼろふりかけ

出汁ガラも捨てずに活かします。残った身をほぐして、ショウガを効かせた甘辛の味付けで水分がなくなるまで炒りつければ、美味しい自家製そぼろふりかけのできあがりです。写真はアマダイの出汁ガラと切り出しの羅臼昆布で作ったもの。
アマダイと羅臼昆布のふりかけなんて、まさに釣魚ならでは。仮に商品になったものがあったとしたら、価格はいくらになるか(笑)。

皮、捨てないで~!!

03_ 皮の串巻

小さめの魚を刺身にするときにひいた皮は、串に巻いて塩をほんの少量パラリ。直火であぶれば焼き目が香ばしく、皮目の脂が美味しいよくできたお酒のつまみになります。サヨリでおなじみの食べ方ですね。
写真はクラカケトラギス。ほかにシロギスやベラも、美味しくいただくことができました。

ある程度の大きさがある魚の皮は、湯引きで霜降りにして皮目の脂と食感を楽しむ方も多いと思います。私もマダイやハタ、オコゼ類の皮は大好物。なので、ひと手間加えてみました。
アマダイの皮を霜降りにとって、昆布締め。カイワレ、白ゴマと和えてポン酢で食べたら、おしゃれで粋なお酒のつまみになりました。魚の皮って美味しいですよね。

04_ アマダイの皮のポン酢和え

大型魚だけじゃない美味しいカマ

05_ アジのカマの唐揚げ

ブリやマグロ、サケなどの大きな魚では立派な一品になるカマは、小魚ではあまり料理にお目にかかることはありません。でも、工夫すれば小魚のカマでも、あの独特の強い旨みを十分に楽しむことができます。

写真は、アジのカマを唐揚げにしたものです。さあさあ、まずはビールで乾杯! なんてときに用意すると、ひょいひょいと箸が出て、いつも笑ってしまうくらいあっという間になくなります。唐揚げの味付けは、シンプルに塩とコショウだったり、香味野菜やスパイスをしっかり効かせたり、仕上げに柑橘系をしぼったりと、いろいろな変化を楽しめるところもいいですよね。

ゲストだって工夫次第

06_ オキトラギスの手毬寿司

「あ~○○かよ…」本命以外の魚にエサをとられたときによく聞きます。海に戻れるなら丁寧にリリースしますが、ハリを飲んでしまった、深場から上がってきて戻れないなどの、悩ましい状況もありがちです。そんなとき、私は迷わずキープして食べ方の工夫を楽しみます。「あ、これは…」という失敗ももちろんありますが、その過程や結果も楽しいものです。
写真は、皮引きを失敗してちぎれてしまった身で、手毬寿司にしたオキトラギスです。身は淡白だけど、クセがなく甘みのある美味しい魚なので、味の強い酢飯との相性もバッチリ。次からは船中のトラギス、なんなら全部もらう! と言いたくなる美味しさでした。トラギスは天ぷらにしても、甘い身と香りが存分に楽しめて美味しいですよね。

寿司をもう一つ。魚はキダイの酢締め、ガンゾウビラメ、ムシガレイ、ヒメコダイです。ガンゾウビラメとムシガレイを5枚におろしたり(しかもエンガワまでとった)、ほかも小物ばかりなのに、われながらよくやるなあと自ら苦笑いですが、その手間には十分なおいしさで応えてくれました。まあ、寿司にすれば大抵は美味しいですね(笑)。

07_ ゲストの握り

 

「いただきます」に相当する言葉は、英語にはないと聞いたことがあります。
そう聞いて改めて考えると、「いただきます」は食材の命への感謝はもちろん、自分の前に料理となって運ばれるまでに関わったすべてへの感謝を表すとてもいい言葉です。すばらしい日本文化だと感じます。

釣魚はたいていの場合自分の手中で絶命します。これからも「いただきます」の気持ちを忘れずに、食べられる限りはしっかり食べ尽くすことで、精一杯の感謝を表していきたいと思います。

 

レポーターREPORTER

山田 一司
プロフィール:山田 一司
神奈川県茅ヶ崎市在住
相模湾をホームに、ショア、オフショアのルアー、エサ、小物から大物までの釣りを年中楽しみながら、未知の世界にも挑戦中。釣った魚でおいしく飲むお酒が大好き。音楽、写真も大好きでアウトドア、インドアともにアクティブに楽しむサラリーマンアングラー。