今から知りたい!エギング STEP UP 【初めの一歩】
エギングっていったいどんな釣り??
その歴史と魅力をおさえよう!

古くから伝わる漁具「餌木(えぎ)」を改良し、ルアーフィッシングとして進化した「エギング」。ご存知の方は既に多いと思いますが、手軽にアオリイカをねらえるとあって、今や多くのアングラーに大人気の釣りです。きっとみなさんの周りにも経験者やエキスパートがいるはずなので、もしエギング未経験であっても教えてもらいやすく、比較的はじめやすい釣りのひとつだといえます。
とはいえ、既に成熟しつつある釣りジャンルでもあるため、タックルやテクニックについて、やや情報過多なのも事実。これから始めたい方にとってはきっと迷うことも多いはず……。

01_ アオリイカ釣果(寄り・人物ボケ)

今回から始まる当連載では、「今あらためて知りたいエギングのこと」について、ステップごとにポイントを整理していきます。楽しく魅力的なエギングをいつ始めても迷わないモノサシとして、はたまた、悩んだときには見返せるバイブルとして、できるだけ丁寧に解説していきますよ!

そんな初回は、まずエギングについての「初歩的な知識とその魅力」からスタートです。

1.エギングの歴史 
エギは漁師さんの漁具からはじまった?

02_ エギ(スクイッドジャンキー)単品

もともとは漁師さんがイカを獲るための道具、すなわち漁具の一種が「餌木」です。
歴史は古く約300年以上前からといわれており、漁火の焼け落ちた松明のかけらが水中に沈んでいくときに、それにイカが抱き着いたことがヒントになったそうです。
エギの発祥は鹿児島県の南西諸島(奄美大島周辺)といわれています。当時は魚型(うおがた)と呼ばれる魚の形をしており、サイズも5~6寸(約15~18cm)とひじょうに大きかったようです。それが、鹿児島本土にわたる際に時代や場所とともに徐々に小さく、そして使いやすい形になったといわれています。これが細魚型(ほそうおがた)です。

03_ 魚型と細魚型のイラスト
漁師さんの漁具からはじまったエギ

現在使われているエギは、大分型(おおいたがた)に代表されるようにスリムな流線形に落ち着いていますが、そこにたどり着くまでのエギの変遷には江戸時代という時代背景があったようです。

04_ 桜島(夕日・シルエット)

奄美から薩摩にエギが伝来してきた際、漁師さんが獲ってくるアオリイカを見た薩摩の武士がその手法に興味を持ち、高貴な遊びとして夜間に船を駆り出してイカ釣りを楽しんだそうです。恥を嫌う武士は遊びとはいえ真剣です。薩摩は奄美に比べてイカが小さかったことや他船には負けてはならないという闘争心に火がつき、競い合いのなかで地域にあった適正な大きさや形にたどり着くといったエギの進化があったよう…。
魚型という大型のエギが薩摩の武士の闘争心に火をつけ、釣果のために切磋琢磨した結果、サイズダウンとスリム化というエギへの工夫が施されます。こうしたイカ釣りへの情熱から薩摩餌木の原型である細魚型が誕生したというわけです。

※「大分型」は鹿児島県や大分県で長年受け継がれ、シャクリ抵抗が少なく、流れが緩やかな場所や浅場で使いやすい沈下速度と沈下姿勢が特徴です。一方、「山川型」といわれる先端がスリムでボディ後方が太く、沈下速度が速いものもあります。シャクった際の跳ね上がりがよく移動距離が少ないため、流れの強い場所やカケアガリなどのイカの回遊ポイントを長時間攻め続けられるのが特徴です。「大分型」も「山川型」も、薩摩餌木の原型である「細魚型」の進化版といえるでしょう

それから明治時代に入り、エギは熱く熱した金属や線香などで焼き模様を入れたものにかわり、大正時代には無垢模様から現代の布巻きに変わっていきます。さらに、プラスチック成型が可能になると品質の安定したエギの量産が可能となって、現在のエギへと進化してきたわけです。

05_ エギ・オンパレ

2.お手軽かつゲーム性が高い釣り! 
病みつきになること間違いなし

06_ シャクリシーン

そんな歴史ある道具「エギ」を使用して行うルアー釣りが“エギング”で、メインターゲットはアオリイカです。その釣り方は独特で、ロッドを上にシャクり上げることでエギにアクション(動き)を付け、フォール(沈める)させることでエギにイカを抱かせます。
極めていけばテクニカルな釣りではありますが始めるにはとてもお手軽。ロッド・リール・エギさえあれば、比較的身近な場所ですぐにでも楽しめます。また春ごろは大型ねらいで強い引きをあじわえ、秋ごろには小型メインの数釣りが可能です。シーズンによる習性の違い、漁港や磯といった釣り場による違いなどでねらい方が変わるゲーム性の高さも面白さのひとつ。そして何より、魚とは異なるイカ独特の引き応えがエギングの魅力ではないでしょうか。

ちょっとした堤防や漁港など、足場のよい場所で楽しめるエギング。釣りはしたことあるけどエギングは未経験…などといった方や、これから釣りを始めようという方にはおススメのルアーフィッシングです。

07_ エギングタックル

3.魅力は釣りだけじゃない!
食べて美味しいアオリイカ

08_ アオリイカ
釣り人の特権! 新鮮なアオリイカは料理しなければもったいない

アオリイカは「イカの大様」といわれるほど味も値段も一級品です。歯応えがよく甘みの強い身が特徴で、大きくなるにつれて身が硬くなる傾向があるため(大型もモチロン美味しいですが)300~800g程のサイズがとくに美味しいとされています。
新鮮なアオリイカは体色が変化し、鮮度が落ちると全体的に白っぽく透明感がなくなるため、体色が変化しているのかどうかで鮮度を確認することができます。

おススメの食べ方は定番の「アオリイカのお造り」です。特徴的な甘みと食感を一番楽しめると思います。釣った日の鮮度が高いものは食感がよく歯ごたえ抜群で、釣リ上げた翌日は少し身が柔らかくなり甘みが増します。食べ比べで自分の好みを探してみてもいいかもしれません。また、お刺身はアレンジもかんたんなので、お造りにレモンのスライスをのせて塩でさっぱりと食べたり、イカそうめんにして卵黄とからし明太子とあえる、なんて食べ方もアリです。そして、シンプルに焼いて食べてもモチロン美味しいので、照り焼きやバター焼きにしてもよいと思います。火を通すことで食感も変わりますし、いろいろな調理ができるので試してみてはいかがでしょうか?

このように、エギングはアオリイカを釣るだけでなく、釣ったあとの調理がカンタンで食べて美味しいことも魅力のひとつですね。

09_1 アオリイカのお造り
09_2 アオリイカの天ぷら
お造り(左)や天ぷら(右)など、いろんな調理で楽しめるアオリイカ

今回のエギングワンポイント

  • ●エギ(餌木)は負けず嫌いの武士たちの創意工夫により進化していった!
  • ●エギングの基本は「シャクってフォール」するだけ!
    アオリイカ独特の引き応えがたまらない
  • ●食べて美味しいアオリイカ。料理のレパートリーも豊富!

 

10_ アオリイカ釣果(顔入り)

連載初回の今回は、ザックリと「エギングとは?」というお話でした。
魚をねらうのとは少し違った釣りですが、なぜだかハマってしまう魅力があるエギング。釣った誰もが「楽しい!」「美味しい!」とその面白さに魅了されます。

さて次回はいよいよエギングのスターティングガイド、「タックルやギア」について解説していきます。ぜひ引き続き、「今から知りたい!エギング STEP UP」にお付き合いくださいね!

 

出典:
富所潤著 (2017) 『イカ先生のアオリイカ学 これで釣りが100倍楽しくなる!』 成山堂書店.

 

レポーターREPORTER

清水 雅史
プロフィール:清水 雅史
小学生のころ父親に連れて行かれた海上釣堀がきっかけとなり、釣り熱が加速。中学生になると、時間さえあれば近所の野池でバスフィッシングを楽しんでいた根っからの釣り好き。現在は釣具メーカー・ハヤブサにて開発課メンバーとして勤務し、ソルトルアー(エギ・オフショアジグなど)を中心に日々開発を行っている。
プライベートでさまざまな釣りを楽しむなか、とくにエギングとライトゲームを好み、近場だけでなく四国や九州にまで足を運ぶ熱血ぶり。