INDEX
「船で一番好きな釣りは何?」と聞かれれば、私は「ひとつテンヤマダイ!」と即答するだろう。きっと、質問を聞き終わる前に食い気味で答えてしまうはず! とにかくこの釣りが大好きなのだ。そして、今までたくさんの船釣り初挑戦者をエスコートしてきたが、いつもそのデビュー戦として選ぶ釣りものが「ライトタックルアジ」か「ひとつテンヤマダイ」である。
この釣りの面白いところは、初挑戦者が一番大きなマダイを釣り上げたり、マダイの匹数で竿頭なんてシーンも珍しくないこと。
では、どのようなポイントが初挑戦者におススメなのか? ひとつテンヤマダイの魅力を少しだけ紐解いていきたい。
道具が軽い!アタリが明確!引きが強い!魚種が多彩!
かれこれ10年以上前の話だが、「ひとつテンヤマダイ」は千葉・大原港で産声を上げた。その人気に火が付くとともに勢力を拡大し、船釣り業界に一大旋風を巻き起こしたのだ。その当時、私は船釣り専門誌の編集記者をしていたが、そのブームに乗じて別冊を発行したほどである。
そして、私が初めてひとつテンヤを体験したときの感想は「コレはマジで面白ぇぇぇぇぇ!」だった。私がハマった理由こそが、この釣りを初挑戦者におススメしたい理由でもあるのだ。
【魅力①】ライトタックルで楽しめる!
今では各メーカーから専用竿が多種発売されているが、この釣りが確立される前にはシロギス竿やシーバス竿で代用されていたとか。つまり、小物を釣るような細くて軽い竿でマダイが釣れてしまうのだ。初挑戦者ほど、その使用タックルを見ると「え!? こんな細い竿で!?」と目を丸くする。道具立てがシンプルなことも、初挑戦者の入門の間口を広げる重要な要素となっている。
【魅力②】アタリが分かりやすい!
前述の通り、ひとつテンヤの竿は細くて軽いため、竿先に明確にアタリが出やすい。上級者になるとラインの微妙な動きでアタリを取る人もいるが、ここでは割愛。ひとつテンヤにおいて、とにかく竿先に出るアタリに積極的にアワセを入れていくことが重要となる。
アタリの出方は「ツンッ」と竿先が振れたり、急に竿先を「グーンッ」と持っていかれるものまでさまざま。アタリに対して竿を瞬時に「バシッ」と立ててアワセて “攻めの釣り”を展開したい。
ただし、アワセに対してすべて魚が掛かるわけではなく、仮に掛からなくてもエサが残っていれば再び食ってくるため、すぐに竿先を元の位置まで下げて再アタリに備えたい。アタリがなくなったらエサが完全に取られた可能性が高いため、回収してエサを付け替えよう。
【魅力③】体感の引きは200%増し!?
バシッとアワセを入れて魚が掛かると、一気に重みが乗って竿が弧を描く。
本命マダイであれば、巻き上げ途中に縦にゴンゴンゴン! と竿を叩くような「三段引き」が堪能できる。このスリリングな引きの強さの虜(とりこ)になる人が多い。また、この釣りに慣れるまでは、感じる引きが強いため掛かる魚すべてが良型に感じられるのも特徴である。
私も最初のころは魚のサイズ感が分からず、「良型かも!」とテンション高く巻き上げたら“手の平サイズ”のマダイで顔から火を吹いたことがある。それほど体感の引きは相当なもので、魚の実寸の2倍以上に感じられるかもしれない。
【魅力④】超多彩なゲストラインナップ!
エサは冷凍エビが主流で、1尾をテンヤに装餌する。写真のように親バリの軸に対してエビがまっすぐなるように付けることが大事で、エビの体が曲がると海中でクルクルと回転してしまって食いが悪くなる。
余談だが、「海老で鯛を釣る」ということわざがある。その意味を調べてみると「小さな労力(元出)で大きな利益を得る」とある。まさにひとつテンヤのことである。エビはさまざまな魚が好むエサだけに、本命マダイのほかに多彩な魚種が交じるのも特徴だ。裏を返せば、仮に本命が釣れなくても何かしらのお土産を確保できる可能性が高い釣りでもあるのだ。
ちなみに実際に私が釣ったことがあるゲストは、ハナダイ、メバル、カサゴ、アイナメ、ソイ、ホウボウ、マハタ、マトウダイ、マダコ、イナダ、ワラサ、カンパチ、ヒラマサ、ウマヅラハギ、カワハギ、ショウサイフグなどなど。マダイを含めて五目釣り達成! なんてことも決して珍しくないのだ。
なお、船宿によっては乗船料の中に冷凍エビ1パック分が含まれており、追加1パックごとに別途料金が発生したり、乗船料でエビ使い放題の船宿もあるので事前に確認しておくと安心だ。