先日、某船釣り取材の折、同僚のSくんが船に酔いつぶれ、出船から帰港まで終始、畳半畳ほどのスペースから一歩も動くことなく1日を過ごすという気の毒な姿を目にした…。当日は確かに波が高く、上下左右に揺られていたため、釣りもなかなか困難な日ではあった。私も体勢を整えるのにかなり苦労し、実際胃腸の具合も悪かったほどだ。帰るに帰れないこの状況。当人は私が思っている以上に辛かったのだと思われるが、「君は何も悪くない」「悪いのは波と穏やかな海に出れなかった我々の運のなさ」なのだからと、うつむく背中に無言でエールを送った…。
さて、引き続き「船酔いの実態」社内アンケートについて、後編では釣り人たちの「船酔い対策」について回答を見ていきたい。相変わらず、医学的・科学的根拠はないが、釣り人たちの経験に基づいた回答の数々は、きっと役に立つはずだ。
Q3.「船酔い」を避けるために、事前に何かしていますか?
対象者の約9割が何らかの形で船酔いを経験するなか、ただ身を任せるままに船酔いとお付き合いしているとは考えにくい。事前に何かしらの対策をしているはずだということで、このような質問をしてみた。その結果、全体の77.8%が事前に何かしらの対策をしているとのこと。
その内訳の1番はやはり、「酔い止め薬(46.8%)」の飲用。そして2番が「十分な睡眠(29.8%)」、3番が「食事に気を遣う(19.1%)」といった順。想像に難くないごくごく一般的な回答ではあるが、全体を「酔う人(=毎回酔う・時々酔う)」と「酔わない人(=過去1~2度酔った・酔ったことがない)」に分けた場合でも、「酔い止め薬」の引用はダントツのトップ。また各項目の順位も変わらずで、酔う人も酔わない人も対策内容に大差はない。また、各種事前の対策を併用している人が多いといった具合だ。
酔い止め薬の飲み方は個人個人さまざまで、「乗船前(30分~1時間前)に飲む」「前日の寝る前に飲む」「寝る前と乗船前に飲む」などバラつきがある。しかし、薬はあくまで薬であるため、乱用は禁物。薬の注意事項をよく確認し、自分に合った正しい用法で飲用いただきたい。
また、食事については「油っこいもの・油ものを食べない」「腹八分」「空腹を避ける」など、胃に負担を掛けない回答が多かったが、なかには「朝食をしっかり取る」「胃の中に残らないようにする(=空腹?)」という回答もあり、どの程度の腹具合が良いのかは個人差がみられた。
食事の対策例: | |
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● 油っこいもの・油ものを食べない ● 腹八分 ● 空腹を避ける |
● 朝食をしっかり取る ● 胃の中に残らないようにする |
※あなたに合う方法をお試し下さい。
Q4. 船に乗った後、「船酔い」を避けるために何か心がけていますか?
次にこちらの質問。船の上での工夫や心がけなど、船酔いの現場対策についてだ。前の質問で、事前に対策を行う人が77.8%であったのに対し、船に乗ってから念には念を入れる人は59.5%に減る。とはいえ、約60%の人が対策を行っているとは驚きだ。
乗船後の対策1番は「遠くを見る(48.3%)」。2番は比率が大きく離れ「食事の工夫(17.8%)」、そして3番は「(船酔いとは)別のことを考える(10.3%)」といった順だ。3番については「病は気から」といった少々精神論的な話かもしれない…。後の質問でも出てくるが、当日の釣りを続けられるかどうかといったモチベーションを左右するお話のようだ。対して、1番の「遠くを見る」すなわち「近くを見ない」については、約半数の人が心がけている対策で、実際に私も自然に行っている手法だ。これまた根拠はないのだが、近くや手元を船の上で見た際、視界に動いていないモノ(例えば手元)と動いているモノ(例えば船の外の海面)が同時に見えると、「クラクラ」っとくることがある。平衡感覚がズレたような感触だ。そのため、出来るだけ動きのない水平線のかなたを見ていた方が、同じ身体が揺れている状態でも平衡感覚を保ちやすい気がする。
2番の「食事の工夫」については、釣り人の経験上からの話であるため、参考にいくつかご紹介したい。事前の対策同様、船に乗ってからも「油ものの食事をしない」という人は多い。また、「柑橘系(みかん・レモン)の飲食をしない」という話もよく聞く。その他としては、酔わないために「飴を舐める」「梅干しを食べる」などがあったのでよければ試してはいかがだろうか? 食事の工夫以外では、排気ガスの匂いを嗅ぐと酔いやすいため「釣り座や風向きを考える」や、「ポイントにつくまで横になる」、なかには「素足(裸足)になる」とか「背中に水をかけると酔いにくい」など・・・、どこまで科学的根拠があるかは定かではないが回答が得られた。ご参考までに。
食事の工夫例: | その他の例: |
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● 油っこいもの・油ものを食べない ● 柑橘系(みかん・レモン)の飲食をしない ● 飴を舐める ● 梅干しを食べる |
● 釣り座や風向きを考える(排気ガスに注意) ● ポイントにつくまで横になる ● 素足(裸足)になる ● 背中に水をかけると酔いにくい(?) |
※あなたに合う方法をお試し下さい。
Q5.「船酔い」しても、当日釣りを続けることができますか?
対策をいろいろと行っても、時には避けられないこともあるつらい船酔い。今度は船酔い後について聞いてみた。
もし船酔いした場合、それでも釣りを続けることができるかどうかを聞いてみたのだが、「釣りができない(続けられない)」と答えた人が28.1%(約3割)であった。意外にも「続けることができる」と答えた人は40.6%、「○○であれば続けてもよい」と、ある条件であれば続けられると答えた人が31.3%と多かった。せっかく乗った船だから、何とかお土産を釣って帰りたいという釣り人の意気込みが感じられるが、一体どのようにしてつらい状況を克服しているのだろうか?
回答を整理すると、先の質問でも出てきた「気持ち=メンタル面」の話と、「身体=フィジカル面」の話とに大きく分かれる。まずメンタル面から見た場合、「釣りが好きだから」「せっかく乗ったから釣りをしないともったいない」「気力」といった精神論と根性で乗り切る方法と、「時合いがくれば」「魚がよく釣れてくれれば」「同船者と楽しくワイワイできれば」といった具合に、船酔いを忘れることができるシチュエーションであれば釣りを続けられるという人が多かった。ネガティブ思考ではなく、ポジティブ思考に切り替えることができれば、かなり気がまぎれて釣りを続けることができるということだろうか。対してフィジカル面を見てみると、軽症であれば「手元など近いところを見なければ大丈夫」「身体が動いていれば大丈夫」といった話で、程度問題のよう。症状が酷い場合は、「一度吐いてしまえば大丈夫」「少し横になって小一時間寝る」など、一旦身体を回復させてから釣りに臨むことで釣りを続けることができるようだ。
いずれにしても、なってしまったものは仕方がないと諦めて、次の状態回復やポジティブ思考など、状況を受け入れてから次のステップに切り替えるといったことが大切なのかもしれない。
釣りが続けられるのは?: | |
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メンタル面 | フィジカル面 |
● 釣りが好きだから ● せっかく乗ったから釣りをしないともったいない ● 気力 ● 時合いがくれば ● 魚がよく釣れてくれれば ● 同船者と楽しくワイワイできれば |
● 手元など近いところを見なければ大丈夫 ● 身体が動いていれば大丈夫 ● 一度吐いてしまえば大丈夫 ● 少し横になって小一時間寝る |
Q6.「船酔い」しても、また釣り船に乗りたいと思いますか?
最後に、つらい船酔いを経験した後、今後もまた釣り船に乗りたい、乗ってもよいかを訊ねてみた。
アンケート対象が釣り好きの多い当社社員であることもあってか、53.1%が「また乗りたい」、40.6%が「○○であれば乗ってもよい」と、計93.7%が乗船に意欲的である。少々一般的な比率ではないかもしれませんね。ちなみに「○○だったら」の○の中身を見てみると、釣り好きの人は「釣りたい気持ちが勝る!」「魚がよく釣れるなら」「好きな魚が釣れるなら」といったメンタル面で意欲をみせている傾向。他には「波が高くなければ」「釣り場が近ければ」「(酔ったときに利用する)トイレが綺麗なら」「(同船者などに)気を遣わずに酔えるなら」「同行者が釣り準備を手伝ってくれるなら」と、シチュエーションや環境の条件が良ければ乗りたいといった具合だ。全般的に「気を遣わない=リラックスできる環境」かどうかが大きく影響しているといった具合で、また乗ってくれるかどうかは、気合と根性だけでなく、船に弱い方への配慮が必要ということだろう。
今後も釣り船に乗れる条件: | |
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メンタル面 | シチュエーション・環境面 |
● 釣りたい気持ちが勝る! ● 魚がよく釣れるなら ● 好きな魚が釣れるなら |
● 波が高くなければ ● 釣り場が近ければ ● トイレが綺麗なら ● 気を遣わずに酔えるなら ● 同行者が釣り準備を手伝ってくれるなら |
一般的に船酔いは、三半規管への刺激が自律神経や平衡感覚の乱れを引き起こすのだといわれているが、原因はさまざまで実のところよく分かっていないことも多いという。三半規管への影響は、高い波やうねりなどの上下運動が、視線・視野の上下や胃(身体・内臓)の上下を引き起こしていると想像できる。そのため、荒れた天候のときは乗船を避けるのはもちろん、フィジカル面で「事前に酔い止め薬を飲む」「遠くを見る」「胃に負担を掛けない」などよく聞く対策は効果的だろうが、「よく寝る」「(排気ガスなど)匂いの影響を避ける」については、正直分からない・・・。このあたりの「船酔いのメカニズム」については、ぜひ機会があれば追跡調査の上、改めて記事にしたい。
今回のアンケートから分かったことは、船酔いは恥ずかしくないし、誰でも起こるということ。逆に、対策をしていれば多少なりとも防ぐことができるということ。不安がなくなれば(小さければ)、船酔いを気にせず釣りを楽しむことができるので、ぜひ今後のご参考に。
※本文は医学的・科学的根拠に基づいたものではなく、釣り人の経験に基づいた記事です。ご了承下さい。