スローピッチジャークの基本
正しい姿勢とロッド操作で疲れ知らず!

ジギングというとひと昔前は体力を消耗するスポーツフィッシングという印象でしたが、「スローピッチジャーク」の普及で、ジギングは誰もがかんたんに楽に魚を釣ることのできるプレジャーフィッシングになりつつあります。しかしそんなスローピッチジャークも、基本的なロッド操作を正しく実践できるかどうかが釣果の差につながります。
今回はスローピッチジャークの基本的なロッド操作を解説。楽に魚を釣る方法をマスターしてみましょう。

スローピッチジャークとは何なのか

01_ タックル
スローピッチジャークで使用するタックルはベイトタックルが基本です。リールの巻き上げパワーの強さ、リール、ロッドがコンパクトにまとまってタックルバランスがよいのも理由の1つです

スローピッチジャークが普及する以前は、ジギングといえば、(棒のような!?)硬いロッドを素早く動かすハイスピードなジギングが一般的でした。体力を浪費する釣りの代名詞でしたが、次第にタックルの開発が進みスローピッチジャークを駆使した「スロージギング」が生まれました。

スローピッチジャークのスローとは「動きが遅い」という意味ではなく、ロッド操作の「テンポが遅い」という意味です。ハイスピードジギングの対義語としてスローテンポのジギングという意味合いだと思われます。
スローピッチジャークの基本はアングラーの腕の力を最小限の使用にとどめて、ジグのウェイトやロッドの反発を効率的に使い、楽に釣りをすることです。そのためにはちょっとしたコツやポイントがあります。正しく理解して実践することで、非力な方でも最大限に釣りを楽しむことが可能になるのがスローピッチジャークなのです。

ロッドの持ち方と構え方

02_ ベイトリール
小型でコンパクトなベイトリールにGOMEXUS社のカスタムハンドルLC90を装着。リールのキックを多用するならロングハンドルが使いやすい

まずは基本の「ロッドの持ち方」からです。写真のようにリールを手の中に包み込むようにロッドを持ちます。リールとロッドを一緒に握り込むイメージです。

05_ 持ち方3

こうしてロッドを持つことで、リールを巻く際にグラグラして不安定になることもありません。写真ではリールが左ハンドル(リールを真上から見て左側にハンドルが付いている)なので、右手でロッドを握っています。リールが右ハンドルなら左手でロッドを同じように握ってください。リールを巻きやすい方の手と反対の手でロッドを持つといいでしょう。

ロッドを握ったら、少し身体の内側にリールを傾けて構えます。右手でロッドを握るときは身体の左側に、左手でロッドを持つときは右側に少し傾けると自然な形でロッドを振ることができます。

ロッドのグリップ部分の下側(ロッドエンドといいます)を肘の下側に軽く添わせるようにロッドを構えます。
ロッド操作に慣れないうちは、ロッドエンドを脇の下に挟み込むスタイルでも問題ありません。ただし、ロッドを操作しやすく自由度があるのは、やはり肘持ちスタイル。楽に釣りができると思いますよ。上体はやや前傾姿勢に構えます。

08_ 姿勢

足の位置は身体と並行ではなく、ロッドを持つ手と反対側の足がやや前にくる位置がいいでしょう。船ベリに対して身体が斜めになる格好で構えます。

09_ 足の位置

ロッドの持ち方・構え方はロッドを正確にコントロールするのにとても大切な要素です。最小の力で最大の効果を生むためにはロッドの角度や振るタイミングが重要なのですが、それらをうまくコントロールするためにも、これら基本となる持ち方や構え方(姿勢)を正しくマスターしておきましょう。

スローピッチジャークの基本動作

10_ 釣果
水深700mでのスローピッチジャークの釣果。水深が深くてもスローピッチジャークの基本動作は変わりありません。リールから放出しているラインが長くなるのでロッドの反発力は弱くなりますが、きちんとティップがまっすぐにならないようではロッドパワーに問題ありです

スローピッチジャークはジグの重さロッドの反発力を主体にジャークを繰り出す釣りです。これにより、アングラーは体力を温存しながら楽に釣りができるわけです。アングラーがロッドを上手くコントロールするだけで、その結果のロッドの動きにより、(適切な)ジャークアクションが自動的に生み出されるイメージです。

基本動作のステップ解説

では、実際の動作をステップごとに見ていきましょう。

11_ スローピッチジャーク1
①.スローピッチジャークの基本動作はロッドが水平の位置からスタートします
12_ スローピッチジャーク2
②.ロッドを下に下げながらリールも巻きだしますが、巻くスピードはゆっくりで余分なラインのたるみを巻き取る程度です
13_ スローピッチジャーク3
③.さらにロッドを下げ、リールも巻いています
14_ スローピッチジャーク4
④.余分なラインのたるみを取りロッドを下げたら、ここからは上昇に転じます。リールの巻くスピードを速く、一気にスパッと巻きます
15_ スローピッチジャーク5
⑤.リールを巻きながらロッドも上昇していきます
16_ スローピッチジャーク6
⑥.さらにリールを巻きロッドも上昇。この位置が最もロッドに負荷がかかっている場面です
17_ スローピッチジャーク7
⑦.ジャークのワンサイクルが終わったところです。この段階でロッドを止めてロッドティップがまっすぐになるまで一時停止します。以降はこの繰り返しとなります

ロッドを下げてから上昇する過程でリールを1回転しています。リールのハンドルはロッドの下げから上昇に転じるパートに一気に巻くことで、ラインが強く巻き込まれてさらにロッドが曲がります。これによりロッドにパワーを入力することができます(=よりロッドを曲げることができる)。
(このようにリールを巻くことでロッドを効率的に曲げることを「キック」や「キックを使う」といいます)

また場合によっては、ロッドの下げから上昇の動作に対してリールの巻き取り量を1/2回転、1/4回転といったように、細かく刻むことも可能です。「魚の活性が低い」「水温が低い」など、状況がよくない場面では効果があります。リールの回転数に応じてロッドを動かす範囲も変化しますので、まずは基本の動作(ロッドの下げ上げに対してリールを1回転)をマスターしてから、1/2回転、1/3回転…と練習して身に付けるようにするといいでしょう。

ロッドのパワーをジグに伝えてアクション

さて、ジャークの際のロッドの角度に注意してみてください。この角度が一番ロッドを下げた位置です。

18_ ジャークの角度1

こちらの角度がジャーク終わりの一番ロッドが上がった位置です。大きくロッドが曲がっています。
しかし、見比べるとロッド自体は大きく動いていないのが分かると思います。これはリールの巻く力を最大限に利用してロッドを曲げているからです。

19_ ジャークの角度2

そしてジャークの終盤、ためにより曲げられたロッドがまっすぐに復元、ロッドティップが跳ね上がることでパワーがラインを通してジグに伝わり、ジグにアクションさせることになるのです。

20_ ジャークの角度3

この曲がったロッドがまっすぐに戻るときの感覚を身体で覚えることで、海の中の状況を推測できるようにもなります。
たとえば、ロッドティップが戻るときにもたついたり、逆にスカっと抵抗感が希薄だったりといった変化は、魚のバイトや魚がジグにまとわりついているサイン。もしくは潮流の変化によるものと考えられます。これらの違和感を捉えれば、次の一手を考える目安となるのです。

スローピッチジャークの基本動作は以上です。
全体の動作は綺麗につながっており、滑らかな動きでなければなりません。揺れる船上で規則正しいスローピッチジャークを続けるには、上手く身体を使ってタイミングやロッドの角度を作る必要があります。不安定な船上でもミスなくジャークできるようになれば完璧です。何事も慣れは必要ですので、スローピッチジャークの上手なアングラーの動作を観察してイメージを頭のなかに作り、理想的なジャークを目指してください。

21_ メタルジグ
スローピッチジャークが生まれた背景にはタックルの進化が大きく貢献しています。伸びないPEライン、軽い力でよく動くジグなど今では一般的になりました

スロージギングはジギングのなかでも入門しやすいジャンルの釣りです。純粋に釣りを楽しむだけのビギナーから、スローピッチジャークの奥深さに魅せられて大いにハマるアングラーもたくさんいます。スローピッチジャークの基本を理解し身に付けることで、さらに釣りに対する好奇心が刺激を受けるはずです。


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レポーターREPORTER

堀籠 賢志
プロフィール:堀籠 賢志
フライフィッシング、バス、シーバス、ロックフィッシュ、フラットフィッシュ、エギング、鮎釣りまで、さまざまなジャンルを釣りこなすマルチアングラー。現在はスーパーライトからヘビークラスまでジギング全般と、メタルスッテを中心としたイカ釣りに取り組む。
東北エリアの面白い釣りを発信することで、震災復興に繋げていきたいという熱い想いのもと活動中。
GOMEXUS社フィールドテスター /tamaTV社フィールドモニター /キーストン社フィールドサポーター などを務める。
ブログ:Anglershighごめのブログ