「釣り餌レストラン」第13回のメニューは、防波堤のチヌ落とし込み釣りで使用する変わったエサ。フジツボ、パイプ虫、ヘラヘラだ。フジツボは何となくイメージできる人も多いと思うけどパイプ虫? ヘラヘラ? いったい何もの? というワケで、エサ店ではまず購入できない変わり種3種を紹介。悪食で有名なおチヌ様ならではの珍品メニュー。
フジツボ
イガイが落ちた秋から春先まで
まるで富士山のような石灰質の殻をもつフジツボ類はエビやカニなどと同じ甲殻類に分類される固着動物だ。変わり種とはいっても防波堤や磯場、ゴロタ浜の潮間帯に棲息しているので、ご存じの方も多いだろう。チヌ釣りのエサとして特に大阪湾などで採取できるのは殻の大きさが1.5cm程度までのサンカクフジツボ、アミメフジツボなどだと思われる。
チヌ釣りで使用するのは防波堤際にびっしり付着していたイガイが落ちた秋以降から春先まで。ハリへのセット方法はいろいろあるようで、写真のように殻の開口部から開口部へハリを通したり、上部(富士山の山頂)周囲の殻をカットし内部の身を露出させハリを直接チョン掛けしたり、キリやニードルで殻に穴を開けて刺す方法などが一般的なようだ。小さいフジツボの場合は2個掛けしてもよい。
外洋に面した波が荒い磯場に棲息する大型のフジツボ類(イワフジツボ、クロフジツボなど)はイシダイやイシガキダイ釣りのエサになる。大きめのものを数個、殻を割ってハリに数珠掛けする。持参したウニやサザエを使い切ってしまったときなど、採取できれば使ってみるとよいだろう。
パイプ虫
ニオイ強烈!低水温期の特効エサ
釣り人がパイプもしくはパイプ虫と呼んでいるのは多毛綱カンザシゴカイ科の環形動物の総称で、落とし込み釣りが盛んな大阪湾で見られるのはナデシコカンザシゴカイもしくはカサネカンザシゴカイだと思われる。ナデシコカンザシゴカイは北米大西洋側が原産の外来種で外国船の船体に付着して大阪湾に持ち込まれたもの。最初に落とし込みのエサとしての使用が広まったのは神戸港第7防波堤といわれ、冬場から春先の特効エサとして一般的になった。2000年ごろは防波堤際にびっしり付いていたが近年は減少傾向にあるという。
カンザシゴカイ類は石灰質を分泌して管を作り、そのなかで終生生活するのが特徴で、白い管の中にオレンジ色をしたゴカイのような虫がいることがパイプ虫と呼ばれる所以。またニオイがひじょうに強烈で使用をためらう人もいるだろう。
ハリのセット方法はパイプを適当な大きさに分割、ニードルで殻に穴を開けハリを通したら抜け落ちないようにハリ先にゴムの切れ端を刺しておく。パイプ内部の虫がチヌの目に付くようにしておくのがコツだ。
ヘラヘラ
伊勢湾奧では古くから定番の変なヤツ!
これぞ珍品! いったい何者? 釣り人が薄く平べったい見た目からヘラヘラと呼んでいる奇妙な生物が 扁形動物門渦虫綱ヒラムシ目ヤワラヒラムシ科に属するウスヒラムシだ。低潮線近くの石の下や防波堤際に付着したイガイの塊のなかにいる。イガイを採取したときに目を凝らして探してみよう。
伊勢湾奧の名古屋港を中心とした中京方面では古くからチヌ釣りのエサとして使われており、落とし込みだけでなくフカセ釣りにも使用するのだとか。大きいもので体長3cmほどで身は軟らかくハリには縫い刺しにするのが一般的。イガイなど硬いエサで食いが渋い場合に有効のようだ。いったいどんな味がするのだろう? 食欲減退気味の熱い夏、「ところてん」みたいな感覚で「ツルッと爽やかな喉ごしが最高!」と、おチヌ様? きっと美味いんだろうなあ?