CLOSE UP "SPECIALIST" 谷 泰介

エギングとの出会い

谷泰介プロフィール

初めてエギングをしたのはもう20年以上前だと思います。祖父が漁師だったこともあり、フカセでチヌを狙ったり、小さい頃からずっと釣りはしていました。
そんなある日、友人と言っても歳の離れた 、釣り仲間の一人が岸釣りでイカが釣れると言ったんですよ。地元では漁り火を焚いてのアカイカ漁が盛んでしたが、岸から、しかも昼間にイカが釣れると彼は言う。エギというものも、アオリイカというイカの事も、この時初めて知りましたね。そして誘われるがままに、半信半疑でエギングに一緒に行ったんです。あれは秋だったと思います。当時はまだエギングの専門タックルもなく、PEラインもなかった。ナイロンラインを使ってエギは直結、ロッドは磯竿じゃ硬過ぎるということでトラウトロッドを代用しました。
そして言われるがままにシャクって、落として、としていると、なんと2、3投目でアオリイカが釣れてしまった!全部で6杯も釣れて、初めて見るアオリイカにも感動しましたよ。
翌日もひとりでエギングに行って、また何杯も釣れた。もうこれですっかりハマりましたね。

デカイカハンターと呼ばれて

谷泰介

地元の漁師の中では、僕のおじいさんは新しいもの好きで、とても先進的な人でした。その影響があってか、今でも何でもやります。
小さな頃も小魚のエサ釣りからアコウ、ヒラメまで何でも釣りましたよ。良く覚えているのは、4.5mはあるグラスロッドの延べ竿に、タイラバの様な仕掛を使ってタイを釣っていたこと。とにかく竿が重い。それで水面下10mぐらいからタイを釣るんです。
基本遊びと言えば釣りでした。そして小さい魚ならいつでも、幾らでも釣れた。すると自然と子供達の中で大物を釣った奴はエライという図式が出来上がる。気付けばいつでもデカイのを狙うという事が体に染み付いていましたね。
あまり淡水の釣りはやらないのですが、例えば鮎釣りなど、数を釣ることがひとつの楽しみという釣りもあると思います。秋のイカを200杯なんていうのも耳にしますね。
しかし自分の中ではどうしても「デカイの」を釣るのがステータスなんですよ。取材やテスター仲間との釣りで色々な所へと行きますが、基本どこでも求めるものは同じ。もちろん釣れない時だってありますけど 、そこで一番大きいイカを釣りたい。 プライドと言ったら大袈裟かもしれませんが、それがポリシーであり心情ですね。

デカイカを獲るためのスタイル

谷泰介

大型のイカを狙うとなれば基本は春の釣りなのですが、大切なのは大型のイカの付き場を良く知り、潮や風向きを考える。僕のスタイルは実績のある場所や、ここぞ!という所で粘ってじっくりと釣ること。10分や15分で移動する様な、いわゆるランガンをするのではなく、じっくりと信念を持って釣る。
やっぱり大型のイカや、たくさんイカが釣れる場所には何かしらの理由があるんです。そしてそこに実績やデータが加わり、思い入れが生まれる。そんな経験から導き出した答えをもとにして、初めて行く場所でもやはり粘って、忍耐の釣りをするのが僕のスタイルですかね。
ここだけの話し、取材ではカメラマンさん泣かせかもしれません(笑)スチール撮影なら最後にどうにかデカイカが釣れればOKですが、動画だと色々と向きを変えたりしても、同じ釣りをじーっとしていることになる。その間カメラマンさんも忍耐の釣りに付き合わせてしまうんです。なので動画はちょっと苦手かな。または、先ずは手堅くそこそこにイカを釣った後で、「狙って良いでしょうか?」と聞いてから、いつものスタイルで大型を狙ったりしています(笑)

ハヤブサとの出会い

谷泰介

かれこれもう10年以上の付き合いですね。開発担当の方からエギの開発を手伝って欲しいと声を掛けてもらったのがきっかけです。
それから2、3年後に、今度はエギングロッドを作りたいと、当時まだ二十代前半の若いスタッフから相談された事もありましたね。そこから徐々に完全移籍という事になりました。僕は昔も今もモノが良ければ、メーカーや枠に捕われずに何でも使う主義。その分品質や作りにはシビアになりますが、ハヤブサの開発者達はいつも一生懸命で、その品質も一流です。
お互いの信頼関係で結ばれ、もう長い付き合いです。今でも開発チームは僕より年下の方が多いですが、良い関係でいられている事はとてもありがたいですね。これからもずっとお世話になりたいなと。

エギングの魅力

僕自身ジギングにメバル釣りに何でもするので、それなりに色々な釣りをやり込んでいるとは思います。しかしイカは魚とは違い引きが独特で、そもそも同じ海にはいますが魚ではない(笑)
しかし魚とは違った、その「ぐーっ」と引っ張る様な引き味や、ゲーム性の高さがエギングの魅力なのかなと。その証拠に各釣りの分野のエキスパート達でもエギングにハマってしまう人がたくさんいます。サイトフィッシングは別として、水中でエギを操るのは完全なイメージの釣り。自分の立てた予想が的中し、組み立てたゲームの上で釣れたイカは、デカイカハンターと呼ばれる今でもサイズに関係なく嬉しいものです。

谷さんにとってエギングとは?

うーん、一言で言うと奥が深い修行の様なものですかね。自然を相手に自分を試されながら、しかも釣り人同士がフェアであると思うんですよ。例えば他のルアー釣りと違って、色々な種類のルアーや釣り方があったり、竿を何本も使う訳ではありません。ビギナーの方も20年来の釣り人も、エギングはその名の通りエギだけを使って釣ります。そういった意味では釣り人同士が、同じ道具を武器に自然に挑む。そして実際にどんなベテランでも釣れない時に、ビギナーズラックなのか素人の方に釣り負けるなんて事もあります。奥が深いな、試されているな、自分ってモッてるな(モッてないな)、といつも考えながら、自然を相手にしたらテクニックなんて二の次なんじゃないかとさえ思うんです。
そんな穏やかでいられるのは歳のせいかもしれませんけどね(笑)