From HEAT the WEB DIRECTOR 釣り話と声の音量の関係

社内での出来事、「昨日メッチャ釣れましたわ~!! 座布団超えのヒラメで、ムチャクチャ引きました~!! でね、その魚が・・・」「メッチャ釣れた! メッチャ釣れた! ダントツ竿頭ですわ~!! やっぱりうちの商品が・・・」、釣り具メーカーですから、この様な話を社内で耳にすることは、普段から大して珍しいことではありません。
釣り人の皆さんなら、よく分かるんじゃないだろうか。予想以上に楽しかった出来事や、ビックリするほどのハプニングが起これば、直ぐにでも誰かに話したくてウズウズし、仕事そっちのけで同僚に聞いてもらいたいもの。普段から釣りに触れ合い、日常茶飯事である我々にとってもそれは同じで、特に休みが明けた月曜日は、大いに盛り上がる。時には、打合せや電話の応対を遮るほど大声で楽しんでおられる。しかし、ふと気がついた。「果たしていつも釣れてるのか・・・?」そして、「なぜそんなに大きな声になってしまうのか・・・?」と。

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まず声の大きさから考えてみよう。
声の大きさと人の心理には、ややステレオタイプではあるが関係があると言われている。一般的に、声の大きい人は「自信があり」「活動的」「外交的」「社交的」「自信過剰」と言われ、上手く人とコミュニケーションを取れるという能力の反面、やや自己主張が強すぎるという側面がある。
また逆に、「自信の無さ」を隠すために声が大きくなる場合もある。しかし、これはごく一般的なステレオタイプであり、一概にその様なことも言えない。中には、声は小さいが自己主張のしっかりした人もいるし、社交的で活発な人も居る。 確かに、大きな魚が釣れたり、たくさん釣れたことを誇示したい「自己顕示欲」というものや、その大きさや数の凄さを認めて欲しいという「承認欲求」というものは誰にでもあるだろう。また、その様なシチュエーションを皆に伝え、同じように楽しい思いをして欲しいというサービス精神もあるかと思われる。はたまた、単に話しに熱中するあまり、声が徐々に大きくなっていくという「熱」のようなものもあるだろう。 果たして真相は?

私なりに周囲を観察して推測するに、釣り人はやはり「自己顕示欲」「承認欲求」が強いのではないかと思われる。日頃から、「○○よりたくさん釣れた」「竿頭になった」「自己記録を更新した」と言った、言わばコンペティションのような環境があり、周囲からその結果を認めてもらうことが一つのステータスとされている。趣味の世界において、せっかくの結果(=釣果)を埋もれさせないために、しっかりと周囲にPRすることが大切なのである。「結果あってこそ、次の目標が生まれる。」この様な環境で自らのポジションを確立するために、心理的に「声が大きくなる」という現象が起こっているのではないだろうか。
(※中には「結果よりも経験が大事」という、自然満喫タイプの釣り人さんもいらっしゃるかと思うので、あくまで偏ったステレオタイプです。あしからず。)

いつも釣れているのか・・・?

次に「いつも釣れているのか・・・?」について。これは、言わずもがな、答えは「NO!」である。私も周囲の社員もそうであるが、必ずしもいつも釣れてはいない。むしろ、釣れていないことの方が多いと思われる。お仕事としての取材としても、まぁ、釣れないことが多い。釣りにもよるが、10~20回中に1回爆釣があれば良い程度。それだけ天候や季節、エリアや釣況と言った自然を相手にする難しさがあるのだ。
ではなぜ「釣れた」話ばかり聞くのか。それは、「釣れた」時だけ、皆に話をしているからである(笑)。たまたま先週末に言った釣行で、良い結果が出た時に、先述の「自己顕示欲」「承認欲求」を満たしたいのと同様、誰かに話したくてしょうがないのである。それが耳に入って来やすいという訳である。逆に釣れなかった時には、語られず闇に葬られる…(笑)。

ここまで書いておきながら、「当たり前過ぎて、何の面白みも無いっ!!」と怒られてしまいそうだが、私が感じることは、実は他にあるのである。それは、「声の大きさ」「イイ話だけ」の心理を知って頂きたいと共に、我々の「品格」という部分についての戒めを感じているということ。
普段我々は、自身の釣りのノウハウや発売する商品の良さを、声を大にして伝え、お客様に自信を持って我が社の商品を販売している訳だが、あまりイイ話ばかりであったり、その話が過剰に伝わってしまったりすると、「良くない結 果」を導くのでは無いかということである。

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一般アングラーにとって、今や情報は様々な媒体から得ることが出来、むしろ情報過多となってしまっている。必要な情報と不必要な情報を整理する「情報処理能力」が求められている。その様な中、あまり良い話ばかりを伝え過ぎるのは、ひょっとすると「価値の押し売り」にもなり兼ねず、ひどい場合には「嘘のツボ」を売りつける感覚に近い状態になってしまうのではないだろうか。
良いモノは「良い」と、しっかり伝えていかねばならないが、それと同時に、過剰なまでの脚色された情報を伝えるのでは無く、「事実」や「デメリット」も正直に伝え、その結果として「商品をご使用頂くことで提案できる体験」を親身に伝えることが、これから求められるサービスだと思うのである。

釣果が良かった時は、楽しさを共有する「サービス精神」として盛り上げる〜 にとどめ、謙虚で品のある姿勢が良いのではないだろうか。そして、本当に大事なことは小声でこっそりと・・・? うーん、悩ましい!

釣りシーン

※本文は都合により脚色を交えております。ご了承下さい。