学校で話したくなるお魚雑学 No.2 似て非なる魚たち
人気ターゲットロックフィッシュを分類してみよう

今回は「根魚」と言われる魚についてのお話です。根魚は読んで字のごとく「根」にいる「魚」。海でいう「根」とは、隠れ家となる岩礁のことです。「シモリ」や「瀬」とも言われますが、一般的には「根」。根掛かりの「根」です。
つまり根魚とは、岩礁に棲む魚です。そしてルアーフィッシングをやる人からは「ロックフィッシュ」とも呼ばれています。「ロック(=ROCK=岩)・フィッシュ(FISH=魚)」というわけです。ルアーで釣る昨今のブームにあやかり、ここでは以降、ロックフィッシュと呼んで進めていきたいと思います。
では、まずはルアーターゲットとして人気のある代表的なロックフィッシュをいくつか紹介していきましょう。

カサゴ

これはカサゴです。関西ではガシラと呼ばれている魚です。

アイナメ

こちらはアイナメ。東北で人気のロックフィッシュ代表種です。

ベッコウゾイ

これはベッコウゾイ。標準和名はタケノコメバル。重量感のあるどっしりとした体形が特徴。

アカハタ

続いてアカハタ。真っ赤な魚体が特徴です。

クロソイ

さらにマゾイ。標準和名はキツネメバル。

キジハタ

キジハタ。アコウとも呼ばれます。

ムラソイ

ムラソイ。

オオモンハタ

オオモンハタ。

メバル

メバル。

以上。人気のロックフィッシュというと、このあたりでしょうか。

ところで、いまは意図的にまぜこぜに魚を並べましたが、大きく分けると次のようになります。

グループA
  • ・メバル
  • ・カサゴ
  • ・ムラソイ
  • ・マゾイ(キツネメバル)
  • ・ベッコウゾイ(タケノコメバル)
  • ・アイナメ
グループB
  • ・アカハタ
  • ・キジハタ
  • ・オオモンハタ

まず、グループBから見てみますと、これらすべて名前に「ハタ」とついています。ハタ科の魚たちなんです。
魚の分類は、大きなグループから順に綱、目、科、属、種となっておりまして、たとえばアカハタならば「条鰭綱スズキ目ハタ科マハタ属アカハタ」となります(以降、条鰭綱は省略)。ちなみに同じスズキ目のスズキはと言いますと、「スズキ目スズキ科スズキ属スズキ」です。グループBの魚たちは、すべてスズキ目ハタ科マハタ属であり、近縁関係にあります。
次にグループAを順に見ていきますと…。

  • ・メバル :カサゴ目フサカサゴ科メバル属メバル
  • ・カサゴ :カサゴ目フサカサゴ科カサゴ属カサゴ
  • ・ムラソイ:カサゴ目フサカサゴ科カサゴ属ムラソイ
  • ・マゾイ(キツネメバル)    :カサゴ目フサカサゴ科メバル属キツネメバル
  • ・ベッコウゾイ(タケノコメバル):カサゴ目フサカサゴ科カサゴ属メバル科タケノコメバル
  • ・アイナメ:カサゴ目アイナメ科アイナメ属アイナメ

これらすべては2003年に発行された山渓カラー名鑑『日本の海水魚』(3刷版)を参照にしています。
つまり、グループAは、カサゴ目の魚たち、というわけです。
面白いのは、分類学上は、同じスズキ目のスズキとアカハタのほうが、アカハタとベッコウゾイよりも近い関係であるということ。一方、カサゴ目にはマゴチやホウボウなども含まれているので、ベッコウゾイは、アカハタよりもマゴチやホウボウに近い関係を持っているということになります。

スズキ
スズキ
アカハタ
アカハタ
ベッコウゾイ
ベッコウゾイ
マゴチ
マゴチ
ホウボウ
ホウボウ

一見、「この中で仲間同士の魚はどれとどれでしょう?」と問われたら、アカハタとベッコウゾイをあげてしまいそうですが、それは間違いということに……。

でも、このように違うグループの動物が似ていることは、自然界ではさほど珍しくはありません。もっと極端な例でいえばこのふたつ。

サメ

サメと……

イルカ

イルカ。

これだって似ているといえば似てますが、サメは魚類でイルカは哺乳類。鳥とコウモリ、モグラとオケラなど、まったく異なるグループに属する動物が似た形状に進化するケースは多々ありまして。「より速く泳ぐため」だったり、「空を飛ぶため」だったり、「土を掘り進むため」だったり……。そんな同じ目的のために似たような形状に進化することは、収斂(しゅうれん)進化と呼ばれています。
となるとアカハタとベッコウゾイは、同じロックフィッシュとして、「根で生活するために」収斂進化を果たした魚同士と言えそうです。

ところが話はこれで終わりません。

「Demise of the Scorpaeniformes : An Alternative Phylogenetic Hypothesis」という論文が2002年に発表されました。和訳すると「カサゴ目の崩壊:その系統に関する一仮説」……。
細かい理由は割愛しますが、この論文のことをもう少しわかりやすく解説した『魚の形を考える(東海大学出版会)』第5章「形から考えるカサゴ目の単系統性」によると、カサゴやムラソイ、メバルやベッコウゾイなど従来のカサゴ目の一部はスズキ目の中に、カサゴ亜目として組み込まれ(亜目は、目と科の中間的カテゴリー)、さらに位置づけとしてはカサゴ亜目の中のカサゴ上科(上科は、いくつかの科をまとめるが、亜目よりは下位のカテゴリー)とされたのです。そしてさらには、上に挙げたグループBの、ハタ科の魚たちですが、これらはハタ上科として、カサゴ上科と並び、スズキ目カサゴ亜目に組み込まれることに。

分類学は、とても難しく、素人にはとてもややこしいですね。そして研究者の間でも、いろいろと意見が分かれていていることが多々あるのです。

いずれにせよ、この新たな考えに基づくと、上に挙げたAグループとBグループの「ロックフィッシュ」たちは、結局、似た者同士がいい感じにまとめられた……というわけですね。

レポーターREPORTOR

若林 輝
プロフィール:若林 輝
海川湖問わずあらゆる釣りを楽しむ、釣り雑誌記者&編集者。編集プロダクション「リバーウォーク(http://river-walk.co.jp)」代表。