From HEAT the WEB DIRECTOR 釣りのために知っておいて得する!!
お天気のメカニズムと読み方【前編】

お天気のメカニズム_text-photo岳原雅浩

逆光太陽・釣りシーン

行楽の季節。釣りだけでなく週末はさまざまなアクティビティにいそしむみなさんにとって、お天気は何かと気になるもの。世間では天気と魚の活性、釣果に何かしらの因果関係はあるものの、かなり複雑で複合的な条件により結果が異り、正直「これが正解!」というセオリーを見出すのは難しいようだ。
また、前回のアンケートを元にした記事(晴れの日は釣れない?雨の日は釣れる? 釣り人の好きなお天気を聞いてみた)では、おおよそ釣り人の好みや傾向は分かったものの、あくまで人間側の話。「どの天気が釣りに良いのか?」という問いは、釣り人にとって未来永劫に続く究極の課題のよう・・・。いくらネットで調べても、書籍を読み漁っても、解決せずに悶々とするだけではないだろうか。釣果は一夜漬けにて成らず・・・。

ならばせめて、その時々に状況を判断するうえで、天気図くらいは読めるようになろう! との思いで、今回は、知っておいて得する「お天気のメカニズムと読み方」について書き進めてみたい。

釣りと天気のよく聞く話

メバル凪
満月(大潮)

釣りをしていると、(噂話も含めて)天気や波、潮まわりについての話を、みなさんもよく耳にするのではないだろうか。
例えば、メバルは「メバル凪」と呼ばれるような、“風もなく水面が鏡のように穏やかな日によく釣れる”だとか、“釣りは大潮の日が良い”、“潮の動き出し前後が釣れる”、“曇りや雨の日の方が魚の警戒心が薄れて釣れる”、“雨の日は、低気圧の影響で魚のうきぶくろが膨らみ、いつもの層(水深)よりも上で釣れる”などなど、釣れる好条件の話もあれば、“雨の後の白濁りは釣れない”といった悪条件の話までさまざまだ。

こういった格言ともいえるような釣りの定石は、釣りの長い歴史において、多くの釣り人や漁師さんの釣行回数に比例した経験値の積み重ねである。その意味で、ある程度信頼度の高い情報ではあるものの、一概に全ての条件において当てはまるかと言えばそうでもない。実際に釣りのプロや船長さんとの現場での会話において、メバルでも良型・大型になると、“潮の流れがある方が釣れる”だとか、ある季節のある魚は“大潮は釣れない”、“雨の後の白濁りは釣果に関係ない”といった、逆のお話も耳にすることがある。

タックルを扱っている(戦略)

結局のところ、釣れる釣れないの話は「ある条件において・・・」という付属情報があってこそ成り立つわけで、複合的なものなのだろう。先人の教えや経験は、頭の片隅において参考にしつつ、自身の釣りにおいて自分なりのお天気対策を講じ、その日の戦略を組み立てることでしか、釣果には結びつかないようだ。

天気のメカニズム

水蒸気のイメージ

さて、天気を味方につけようとすれば、そもそも天気のメカニズムを知らないことには始まらない。なんとなく小中学校の理科の授業で習った気がするものの、大人になってからはすっかりと記憶が抜け落ちてしまっている(私がだが・・・)。改めて「高気圧・低気圧って何?」というところから学びなおしていこう。

(1)気圧の高い低いって?

日々、テレビやネットで見聞きする高気圧と低気圧。気圧の高い低いということは分かるのだが、それがどのように天気に関係があるのだろう? 調べてみると「高気圧」は、「空気がたくさん集まって周囲に比べて気圧が高いところ。上空から地上へ下降気流が発生するとともに、地上付近では中心から外側に空気が流れていく」とある。一方「低気圧」は、「空気が少なく周囲に比べて気圧が低いところ。地上付近で外側から中心に空気が集まり、地上から上空へ上昇気流が発生する」そうだ。

「高気圧は下降気流、低気圧は上昇気流ね、フムフム・・・。」 しかし、それがどう晴れや雨といった天気に影響があるのか? そもそもなぜ気圧の高低差が生まれるのか? という素朴な疑問は解消しない・・・。

さらに調べるとこういうことだ。空気は熱せられると体積が膨張する。膨張した、すなわち比重が小さくなった空気は周りの冷えた空気より軽くなり上昇する。これが低気圧である。逆に、上空で空気が冷やされると体積が収縮、すなわち比重が大きくなって地表に下降する。これが高気圧だそうだ。

地上付近の陸地や海洋で温められた空気が上昇したり、上空で冷やされて下降したりという上下移動が、気圧の高低差を生み出しているのだ。しかも、空気が膨張するにはエネルギーが必要で、膨張を続けるにはエネルギーをたくさん消費する。エネルギーとはイコール温度であるため、空気が膨張すれば温度が下がり、収縮すれば温度は上がる。温度の上下により同体積の空気中に含まれる最大の水蒸気量(=飽和水蒸気量)も変化し、雲が生まれたり消えたりするというわけだ。

高気圧・低気圧(縦)

(2)雲ができるしくみって? 露点と飽和水蒸気量

地上付近には水蒸気(=湿気)を含んだ空気が存在している。この空気が温められると、膨張し上へ上へと上昇していく。上昇すると同時に温度も低下していくのだが、ある(温度の)ポイントに達すると、空気中に含まれていた水蒸気が漏れだすかたちで水の粒が発生する。上昇を続けることでさらに温度は低下し水の粒は発生し続け、しかも冷やされて氷の粒となる。これらの集りが雲だ。

雨降り

空気中(1立方メートル)に含むことのできる最大の水蒸気量は、空気の温度によって変るそうで、温度が高くなればなるほど含むことができる最大の水蒸気量は大きくなり、温度が下がれば小さくなる。これを「飽和水蒸気量」という。すなわち、温度が高い地上付近の空気は、上昇し冷やされる間に飽和水蒸気量が小さくなり、これまで目に見えない形で存在していた水蒸気を、もはや含むことができなくなる。そうして漏れだしてしまうのだ。この転換ポイントを「露点」という。

露点に達して、水や氷の粒が次々と生まれ雲となる。さらに、氷の粒は大きくなるにつれ重くなり、今度は重みで落下していく。途中、氷の粒に水の粒がくっついて雪の結晶となるが、地表付近の方が気温が高いため解けて雨粒となる。(冬になると解けずに雪として降ってくる)

他にも(日本付近の)天気のメカニズムとしては、北半球ゆえの自転の影響や偏西風の影響。高気圧と高気圧の間に発生する「気圧の谷」の存在、それらが影響して発生する「前線」など、さまざまな事象が関わりあっている。少々難しくなってしまうので、今回は勝手ながら割愛させていただくが、なんとなく雨が降る仕組みは分かっていただけただろうか。

 

次回後編は、実際に天気図に描かれている記号の意味や、釣り人にとって身近な波について解説していこう!