うっかり間違いやすい魚たち 釣魚豆知識 古今東西の人気者!
メバル赤白黒3タイプ+α

「釣魚豆知識」は2月号からリニューアル。これまでは魚類学の「科」というカテゴリーごとに魚たちの見分け方を紹介してきたが、今号からは季節や釣り種、生息場所などによるグループ分けで、より実際の釣り、釣り場で役立つ方向にシフト。現場で「うっかり間違い」しないアングラーになるための注目ポイントをズバリ!各魚種の地方名も従来通り収録。

生きたエビを撒いてメバルを浮かせてウキ釣りでねらう「エビ撒き釣り」に、虫エサを使った「電気ウキ釣り」に「探り釣り」、船釣りでは「サビキ釣り」や生きたイワシをエサにして釣る「イワシメバル」と呼ばれる釣り方、近年ではワームを中心としてルアーでねらう「メバリング」など、全国的に釣りが盛んなメバルは、間違いなく日本を代表する人気魚種のひとつだ。

ご存じの方も多いと思うが、従来同種とされていたメバルが核DNA解析の結果を踏まえ3種に分けられ、2008年に発表された論文によりシロメバル、アカメバル、クロメバルという和名および学名が確定した。
聞けば研究者の間では100年以上もメバルという種内に潜む多型に関して議論が続いていたのだとか。

我々釣り人も以前からメバルには茶色いのや赤いのや金色のや黒いのがいるなあ……と、何となくタイプがあることを感じてはいたのだが、研究者によってそれらがようやく整理され3タイプの別種として決着したのが2008年というわけなのである。
ここでは従来メバルとひとくくりにされていた3種に加え、形態的によく似たウスメバル、トゴットメバルも含め、各種の見分け方を紹介しよう。ただ、見分けのポイントは胸鰭軟条数の違いにあるのだが、実は変異も多く見分けが困難な場合があることを付け加えておく。これら5種がすべてフサカサゴ科のメバル属に分類されるのは最低限の知識として覚えておいてほしい。

シロメバル

3種のなかでは、もっとも大きくなり30cm以上になるのが本種とされており岩手・秋田~九州の浅い岩礁域に住む。通常、茶色もしくは白っぽい体色で、体高が高く頭部も大きい。内海に多く、もっともポピュラーなタイプなのだが、一見アカメバルとよく似ており、釣り人には混同されている場合が多い。きっちり見分けるには胸鰭の軟条数を数えるしかない(先端部は分岐するので根元の部分を数えること)。シロメバルには17本のものが多い。というのも種内で軟条数に変異があるからだ。釣れるタナ、レンジは低層から表層まで幅広いという。

明石海峡シロメバル

明石海峡の大阪湾側、垂水一文字で釣れた30cm近い良型。
全体に茶色で体高が高く頭も大きいというシロメバルの特徴に合致する。
胸鰭軟条数も写真を拡大して数えると17本あるように見える

南紀シロメバル

南紀の浦神湾内で釣れた20数cmの個体。
胸鰭軟条数がはっきり17本。体色からしてもシロメバルのようだ。

アカメバル

体高は低くスマートで頭部も小さい。体色は通常、赤っぽい茶色。北海道南部~九州の浅い岩礁域に分布しシロメバル同様、内海に多い。胸鰭の軟条数は15本のものが多い。3種のなかでは一番の小型種とされるのだが、南紀で釣れる30cmオーバーをアカメバルとみるアングラーも多く、実際に串本周辺で釣れた大型種の写真で胸鰭軟条数を数えると15本に見えるものが多いが、16本という個体もけっこう多いらしい。釣れるタナ、レンジは表層が多いとされる。

アカメバル

南紀は古座川河口すぐ東の浅い地磯で釣れた30cm近い良型。
太平洋岸ではあるが地形的には串本の湾内とみれないこともないから
アカメバルの生息域である内海に多いという特徴には一応当てはまる。
釣り上げたご本人の見解もアカメバル。胸鰭軟条数は15本のようだ。

クロメバル

釣り人がブルーバックと呼んでいる外海性、回遊性が強いメバルがこれ。体色は黒っぽく背中の上部が青み、緑みがかっている。岩手・石川~九州に分布し内湾に入るほど少なくなる。例えば関西では紀伊半島に多く、大阪湾・瀬戸内海の明石海峡周辺などにも時折回遊してくる。全長30cmになりシロメバルに次ぐ大型種。頭部は小さくボディーはずんぐりしている。胸鰭の軟条数は16本のものが多い。釣れるタナ、レンジはボトム付近であることが多いそうだ。

クロメバル

瀬戸内中西部とびしま海道、岡村島の速い潮流のなかでヒットした良型。
ボディーカラー、背中の色からブルーバック!クロメバルだろう。
胸鰭軟条数も16本を数えることができる。

シロメバル
アカメバル
クロメバル
シロメバル・アカメバル・クロメバルの地方名
3種がかつて同じメバルという認識であったこともあり全国的にメバルで通じる。
釣り人の間ではシロメバルが黒メバル、アカメバルが赤メバル、金メバル、クロメバルが青メバルなど

シロメバル、アカメバル、クロメバルが沿岸部の浅い海域に多いのに対し、沖合性が強いのがウスメバルとトゴットメバルだ。そのため釣り人の間では船釣りの対象魚としての「沖メバル」という名前で両種が混同されている。ともに岸釣りで見かけることは滅多にないように思う。

ウスメバル

北海道南部~東京・対馬に分布し水深100mもある岩礁域に棲息。太平洋岸では駿河湾あたりまで、日本海側では朝鮮半島あたりにまでの冷たい海を好む。体色は赤みが強い。混同されやすいトゴットメバルと見分けるポイントは背中の暗色斑。ウスメバルはこの暗色斑の輪郭が角張っているのが特徴。全長30cm以上になる。

トゴットメバル

同じく沖合性が強いトゴットメバルは、ウスメバル同様赤っぽい体色をしているが、やや黄色みが強い。岩手・新潟以南に分布しウスメバルより暖水性のため南寄りに多い。見分けるポイントは同じく背中の暗色斑だが、こちらは輪郭が丸い。ウスメバルよりは小型で全長30cmぐらいまでの個体が多い。

ウスメバル
トゴットメバル
ウスメバルの地方名 トゴットメバルの地方名
メバル(東北)、テンコ・アカテンコ(山形)、セイカイ(新潟)、チャバチメ(氷見)、アオヤギ・ヤナギ(富山)など。釣り人の間では沖メバルという名前でトゴットメバルと混同 アカハチメ、アカメバル、タケノコ、タケノコメバル、チュウチンメバル、ヤナギハチメなど。釣り人の間では沖メバルという名前でウスメバルと混同