ハヤブサ的 鈎の夏期講習 前編

鈎イメージ

鈎は釣り人と魚を繋ぐ上で一番最初に魚に触れる部分であり、非常に大切なもの。いくら良い道具を使っていても、鈎が鈍っていては魚は釣れないのである。普段何気なく、鈎先の心配ぐらいはしていても、その形や種類にまで気を止めなていなかった「鈎」を、鈎の夏期講習と題してフォーカスしてみたいと思う。

一概に「釣り鈎」といっても、これだけたくさんの魚を様々な釣り方で狙うのだから、その種類も膨大である。サビキに適した鈎や、活き餌に適したもの、鈎と言えばワームフックを想像する人も多いかもしれない。
きっとある魚を釣りに出掛けようと考えた時、その魚の名前の付いた鈎や、専用の仕掛を探すと思うのだが、その鈎の形を見てみるとそれぞれに特長がある。落ち着いて考えれてみれば当たり前なのだが、それぞれの鈎に、その形や大きさに理由があるのだ。

今回はHayabusaの開発担当である市橋さんに、一般的に多く出回っていたり、広く製品に使われている鈎をいくつかピックアップしてもらい、それぞれの鈎について聞いてみた。意外と知らなかった、もしくはわざわざ質問をする機会に恵まれなかった、なるほど!という話がたくさん出てきて非常に興味深い内容となった。

市橋さん(以下市橋):やはり皆様が多く見かける鈎と言えば、セイゴ鈎やチヌ鈎だと思います。そこに伊勢尼鈎やアジ鈎などが、多く使われているという面が挙げられますね。例えばサビキの様にひとつの仕掛に(同種で)複数の鈎を使うこともありますので。

HEAT:なるほど。例えばどうしてこの鈎はこの部分が丸みを帯びていたり、全体的に細身の形をしていたりと、何か理由があると思うのですが、それは単純に狙う魚種が違うだけでしょうか?

市橋:いろいろ理由はあると思うのですが、先ずは使う餌によって選ぶという選択基準があると思います。その鈎の餌に対しての付け易さだったり、または馴染みの良さだったり、単純に魚種というよりはその釣り方によって、長い時間をかけて出来上がっていったと思います。

基本形

●セイゴ鈎

セイゴ鈎

市橋:セイゴ鈎はもともと、その名の通りスズキなどを釣るために作られた鈎で、特長としてはバレにくさや、活き餌などに鈎の馴染みが良く、餌が取れにくい形をしています。しかし今ではその使用用途は様々で、必ずしもスズキの仲間を釣るためだけとは限りません。その他にも根魚だったり、餌の小魚を泳がせて狙う釣り、虫餌を使って狙う仕掛などにも数多く使われています。ある意味ひとつのスタンダードと呼んでもよいかもしれません。入門者向けの仕掛など、幅広く使われています。口の奥で掛からずに、唇部分に掛けやすい形をしています。

●チヌ鈎

チヌ鈎

市橋:こちらも文字通り、チヌ(クロダイ)を釣るために、それに合う餌や釣り方に合わせて作られた鈎です。オキアミなどのエビ類などの餌に非常に適した形と言われていますが、チヌ鈎は非常に汎用性の高い鈎で、近年人気の高まっている真鯛を狙ったタイラバや、トラウト類を狙うスプーン用のちらし鈎など、餌釣り以外の釣りでも多く使われています。飲み込んで吐き出す時に掛かりやすい形ですね。

遊動式鯛ラバ FREESLIDE

ひねりとは?

HEAT:そういえば仕掛の種類によっては、鈎をよく見てみると、鈎の軸がねじれているものもありますよね?まだ釣りを始めたばかりの頃、間違えて曲げてしまったと思ったこともあったぐらいですが、やはりそこにも理由があるんでしょうか?

ひねり鈎

市橋:そうですね。そのようにねじれた鈎のことを「ひねり鈎」と呼んだりしますが、文字通り鈎が一定の方向に捻ってあります。そうすることで、魚が餌や疑似餌に食いついた時に、思い切りアワセなくても魚の口に鈎が掛かりやすくなっているんです。
鈎に力が加わった時に、鈎がまっすぐ魚の口からすっぽ抜けるのではなく、口の中を滑ってうまく鈎先が魚の顎回りに掛かり、刺さる力が鈎に伝わりやすいというイメージです。アワセた時にも鈎が多少回転する様な動きをするため、鈎先が何処かしら刺さりやすい場所に引っ掛かかるというメリットもありますが、餌を付けた鈎が回転しやすいというデメリットもあります。そこは好みであったり、現場での使い分けになってきますね。

●伊勢尼鈎

伊勢尼鈎

市橋:昔からある万能鈎で、グレ鈎をはじめ、海で使われている様々な鈎の原型とも言われています。チヌ鈎などに比べてより角ばっていて、懐が広く掛かりやすい形です。軸が太いため頑丈で、磯釣りなどで多く使われています。その反面、活き餌などに刺すとその太さ故に弱りやすいといったデメリットもあるため、オキアミなどの餌が使われることが多いです。
向こうアワセではなく、こちらからしっかりとアワセ、掛けていく釣りに向いていると言えるでしょう。どこの釣具屋さんでも必ず置いてある鈎のひとつですね。

グレ鈎

後編へ続く