CLOSE UP "SPECIALIST" 川村 光大郎

発想の転換から生まれた理念

川村光大郎プロフィール

トーナメントフィッシングとしてもその存在を知らしめているバスフィッシング。
しかし日本で、趣味としてバスフィッシングを楽しむアングラーの多くは、オカッパリと呼ばれる岸釣りがメインではないだろうか。そしてオカッパリは日本で独自の進化を遂げ、日本のバス釣り文化と言っても過言ではない。
今回は独自の理念と、柔軟な発想やアイデア、そして1匹のバスに対する情熱を持つオカッパリのスペシャリストである川村光大郎プロをクローズアップしたいと思う。

川村光大郎

アングラーの多い週末のプレッシャーをもろともせず、メジャーフィールドと呼ばれる場所でも安定した釣果をキープし続けていますね。陸釣のスペシャリストである川村プロですが、常に心がけていることなどはあるのでしょうか?

ブラックバスを釣るうえでは、オカッパリだからとか、ボートだから、と大きく意識の差はないと考えています。ただ人よりも多く釣りたいと思った時、人と同じことをやっていては難しいと思うんですね。人よりも多く釣りたければ、人とは違うことをしなくてはいけない。心がけている部分と言えばそういった部分だと思います。

開発にかける並々ならぬ情熱とこだわり

なるほど。その発想がHayabusaでの製品開発でも存分に生かされていると思います。中でも非常に根強い人気を誇るN・S・Sフックを開発した時のことを伺っても良いでしょうか。

このフックを開発する経緯も、やはり人とは違ったことをしたい!というのが根底にありました。
ネコリグというリグがあり、端的に言うとよく釣れる、多くのアングラーが多用するリグです。その反面、弱点としては引っかかりやすいなどの問題がありました。それを防止するためにガード付きの鈎などがあり、鈎先とガードの距離、固さなど、様々なフックが創意工夫を凝らし開発されていました。しかし険しいカバーの中に入れてしまうとやはり引っ掛かってしまうんです。その引っかかりを気にせずに釣りをする事が出来ずにいました。

川村光大郎

しかし逆に言えば、そこさえクリアして、これまでネコリグでは攻めることが難しいと言われてきたカバーの中を釣ることが出来れば、テキサスリグやラバージグでは喰わせられなかったバスを釣ることが出来ると考えました。
そこで思いついたのが、鈎先をワームの中に隠してしまおう!という発想だったんです。いろいろ試した結果、やはりそれが一番効果がありました。

なるほど。そこも川村プロらしい発想の転換だった訳ですね。

しかしその様なネコリグで鈎先を隠すセッティング自体なかったので、もちろんそれに合うフックというものがありませんでした。そこでフックを自作するしかないと。
しかしいきなり自分で1から鈎を作るということは出来ないので、エサ釣りに使用される様々な鈎や、海外で使われる鈎を取り寄せるなどして、イメージに近い鈎を探しましたね。

どんなイメージを持って鈎を探されたんですか?

カバーの中に入れるということで、そこから魚を引っ張り出す所謂バスファイトをしても簡単に折れない強度。それとネコリグ用の小さい鈎であっても深く掛かることを重視しました。掛かりやすいからといって、薄く掛かってしまうと強引なファイトをすると身切れしてしまったりという心配がありました。チヌ鈎から鯉鈎までいろいろな鈎を試しましたね。そしてようやく見つけた鈎に、ワームのストッパーを自作して使い始めました。

なるほど、それが開発にたどり着くまでの経緯だったんですね。そして実際にそのフックを作ってみようとなった。

そうですね。その鈎の効果は目覚しかったですね!ボコボコに釣れました。これだけ釣れる以上、商品化の価値は十分にあると思いました。多くの人にとってもメリットがあると。
そこでHayabusaさんに相談して、すぐに開発担当者と一緒に釣りに行きました(笑)そうでないと実際に僕がどれだけ厳しいカバーにネコリグを突っ込んでいるのかわかってもらえませんし、担当者もバス釣り大好きな人なので、どれだけ凄いか一撃で分かってもらえました。

川村光大郎がアングラーに強く支持される理由とは

川村光大郎

まさに川村プロらしい発想から始まった開発だったんですね。担当者を引っ張って釣りに行って理解させたというところにも、並々ならぬ情熱を感じます。
ちなみに、普段は取材などを含めてそれぐらい釣りに行かれるんですか?バス釣り以外もするのでしょうか?

基本的にはバスオンリーですね。自分も平日に取材などが入らない限りは、平日は仕事をして週末に釣りをするという感じなので、一般のアングラーの方と大差はないかもしれません。ですので、行けばボコボコに釣れる様な場所で釣りをするようなことは本当に無くて。

なるほど。本当に一般のアングラーと同じ条件で釣りをしている。自然とそれが同じ目線からの開発に繋がっていく訳ですね。

そうですかね。いつもいつも釣りに行ける訳ではないですし、限られた時間や条件で工夫をして釣るというのが基本なんですよね。普通に釣りをするだけではダメなんだという意識を持って釣りをするのが、開発の発想に繋がるというのは確かにあるかもしれません。

今開発中のアイテムなどはあるんでしょうか?

はい。つい先日N・S・SフックPerfectionが発売になったので、また新しく開発をし始めたモノがあります。ただあれもこれも同時にというよりは、ひとつひとつ大事にやっています。
ひとつのアイテムが発売に漕ぎ着いて、またそこからという感じですね。

良いものが出来るわけですね。では最後に、初めて釣ったバスは覚えていらっしゃいますか?釣った時のルアーや、始めたきっかけなど。

従兄弟がやってまして、小学校2年の時に始めました。もう30年ぐらいやってますね。
初めてのバスはDAIWAのシースネークというミノーで釣りました。それからずーっと釣りをしていることになりますね(笑)

納得したモノしか世に出さないという川村プロの拘りを垣間見ることの出来るインタビューであった。
彼がどうしてオカッパリのスペシャリストとして支持されているのか。それは昔から変わらず、もっと釣りたい!という探究心と、趣味で釣りを楽しむアングラーのことを誰よりも理解しているからではないだろうか。