From HEAT the WEB DIRECTOR 世間とのギャップ

冬の寒さもものともせず、開場と共に猛烈な勢いで走りこんでくる人々… 「今年もいよいよ始まったな~」と、身体の緊張とは裏腹に、妙に他人事のような思考で、あふれかえる人々の波を眺めてしまっている自分が居る。そう、毎年恒例のフィッシングショー会場での朝のひとコマである。

目当てのブースに逸早く辿り着き、新製品をこの目で確かめようとする釣り人のエネルギーは凄まじい。当然当社にもその様なありがたいお客様が大勢訪れ、今年の新製品を隅々までご覧頂いている。本当にありがとうございます!!
連日のブース設営の疲れと忙しさから、まだ身体と思考の不一致が起こってしまっている中、とあるお客様が当社ブースに訪れた。「スミマセ~ン。写真撮ってもらって良いですか?」人ごみの中で向かいの釣りビジョンさんのブースを背に、私に声を掛けられた穏やかな中年のご夫婦。私は「良いですよ」と、恐らくまだ朝のぎこちない笑顔のまま、旦那様が持っているカメラを受け取ろうとした。ところがである、奥様の方が私の横に来て、「TVに出てましたよね。一緒に撮って下さい!」と・・・思わず「えっ!?私ですか???」と、間違いなく私の目がリアルにテンになった瞬間だった。
頭が整理できない内に、流されるまま奥様と写真を撮らせて頂いたのだが、お話しを伺うと、「釣りビジョンのエギング番組を良く見ている」との事で、チラッと映る私のことを覚えて下さっていたそうだ。「そんな黒子のような私を覚えて下さってるなんて!」と恥ずかしいやら嬉しいやらであったが、丁寧にご挨拶をしてお別れした。

実は以前にも、取材の途中、深夜のコンビニに立ち寄っているところを、釣り好きのお客様から発見され、「この前、○○のコンビニにいらっしゃいましたよね?」と聞かれた経験もあったのであるが、企業のいちサラリーマンをよく覚えていらっしゃるとビックリしたものである。

釣りは、強烈に人を惹きつける魅力がある

私のようなごくごく一般的なサラリーマンを見つけてしまう、その記憶力と集中力にも脱帽である。と同時に、日頃サラリーマンとして、忠実に働いているつもりの、我々の感覚は、ひょっとするとズレているのかも知れない。

普段我々は、皆さんと同じように職場で働いている。朝は取引先様からのメールをチェックしたり、パソコンに向かって売上実績の資料を作成したり、企画書を作成したり、電話でお客様や取引先様とお話ししたり、出荷作業を黙々とこなしたり、お客様のところに朝から晩まで営業で回ったり・・・etc。恐らく多少の違いはあれ、「お仕事」としてお給料を頂くにふさわしい活動を続けている。しかしっ!根本的に違うことが一つ。それは、「釣り具メーカーの社員である」ということではないだろうか。

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「そんなの当たり前」、と言われればそうなのであるが、実は社内で働いていると、しばしばそれを忘れてしまっている気がする。と言うのは、日頃「お仕事」として釣り業界や、釣り道具に接していると、当然、釣りの専門用語や道具のスペックについて、そして、どこで何が釣れているのかと言う情報など、釣りに関連する言葉や情報が職場を飛び交っている。
「趣味」というものを仕事に選んだおかげで、それが「趣味」という特殊なエンターテイメントであることの認識が薄れ、「お仕事」として真面目に取り組んでいる意識が強まってしまうのである。

超動餌木乱舞

「真剣に釣りに取り組んでいる」訳であるが、仕事として真剣に取り組めば取り組むほど、先述の認識が薄れ、どんどんと深みにはまっていく。あるときは会議で拳を突き上げて、いかに商品が良く釣れ優れているかを熱弁し、魚とエリアのウンチクを後輩に語りまくり、天井の一点を真剣なまなざしで見つめながらロッドティップの調子を伺い続ける。 そう、『真面目な釣りオタク』の出来上がりである。

外から見ると立派に「業界人」な訳で、一般の方からはその様な見られ方をするのは当たり前であるが、実はその認識はほとんど無く、そのために冒頭のような(素敵で嬉しい)ビックリエピソードに出くわしてしまうのである。

釣りは、「趣味であり、遊びであり、エンターテイメント」である。「真剣に釣りに取り組む」事は、我々メーカーの人間にとって、お客様の期待に応えるために大事なことであり、ある意味『オタク化』しなければならない。と同時に、特殊な業界であり、その事を客観的に捉える必要もある。真面目でありながら遊び心(余力としての意味も含め)
を持ち、その両方をバランス良く両立させる器用さが、我々には必要なのかも知れない。

と、今回もカッコいい事を語りながら、夜のネオンが輝く街にお酒を求めて出かけるのであった…(笑)

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